Egg 〜留学を終えて〜

私は環境が変わる直前になるとご飯が食べられなくなるらしい。
カナダに行く前も一瞬ご飯が食べられなくなったが、帰る直前もなるとは笑
(そこまで重度じゃないです。ご心配なさらず。というか今はモリモリ食べてる笑)

食欲が減ったのは最後の学期の期末期間。勉強に勤しんでいた分、体を動かさないために食べれないだけだと思っていたがどうやら違ったようだ。

この8ヶ月の留学で自分は変われたのだろうか。
そう自問自答した時、強く頷くことのできない自分がいたから。
食欲が減った原因はこれに尽きる。

無事、期末を終え、そこそこの成績をおさめ、お世話になった友達に別れを告げたあとは、アメリカにいる父親のところに遊びに行った。

部屋が広い!
シャワー室に小蝿もいない!
キッチンは綺麗!
物が盗まれる危険性なし!
限界寮生活とは比べ物にはならないくらい心地のいい家だった。
そして何よりご飯がとてもおいしい。

父と久しぶりに夕飯を食べた時、食卓にはポテトサラダが。
一人暮らしの自炊でサラダを作ることなんて滅多にない。
ポテトサラダなんて手間がかかるものNo.1だ。

レタス、トマト、ポテト。

そこまでは順調に美味しく食べることができた。
しかし卵を口に運んだ瞬間に吐き気がした。体が受け付けなかった。

ああ、またか。

そう思って私は箸を静かにおいた。
そんな私を見て父は
食欲がないのか、と私に聞いた。

うん、よくわかんないけどね。残りあげるわ。
そう言って皿を父親の方に寄せると、

そうか。まあ、自分のペースでいいぞ。じゃあ、これもらっちゃうな。

と言って、父は私の胃に収まらなかった卵を自分の皿にヒョイ、と移した。父親の皿の上に佇む卵をじっと見つめながら、私はおもむろに口を開いた。


留学で成長できたか分からなくて。
私って変わったと思う?

すると少々の沈黙の後に父は大笑いし始めた。


お前、そんなことを気にしているのか。
なるほど、それで食欲がなくなるわけだ。
はっはっはっは。


。。。
なるほど、相変わらず人を煽る天才ってわけだ。

でも私の父はほーーんのときたま良いことを言う。
それも予兆なく。


この経験が何年も後になって吉と出るかもしれないし、凶と出るかもしれない。どの経験がどう自分の成長に繋がったのかなんて30年単位でしかわからないものなんだよ。だから好きにやればいいんだ。お前は好きにやっただろう。それでいい。


そう言って父は大きな口を開け、私の卵をパクリと食べた。
今まで思い悩んできたことが卵と一緒にあっけなく消えていった気がした。





そういや、あのかの有名な「ビリギャル」にも卵が出てきた。
模試の結果が悪くて落ち込むビリギャルさやかちゃんに坪田先生はコロンブスの卵の話をする。

卵を立たせることは可能だと思うかい?

そう問う坪田先生に卵なんて立つわけがないと主張するさやかちゃん。

坪田先生は塩を少しまいてその上に卵を立たせてみせた。

そして最後にこう言うのだ。
立つということを知っているのと知らないとでは大違いだろう?




日本に帰国してから1ヶ月間、私はずっと父親と坪田先生の言葉を反芻していた。




世界の中心と辺縁。
カナダと日本。
現実と理想。
結果と過程。





いろんな狭間で揺れ動き、何が正解か分からなくなる時。
自分がどうあるべきか悩む時。

揺れまくる卵。

もう一生立たないんじゃないか。
1mmも成長できてないんじゃないか。

そう思えてくる。

でもそんなもんだ。
人はそう簡単に変わらない。
変わったかなんて自分で分かるはずがないし、成長できたかなんてどうでもいい。

重要なのは卵は立つのだと知ることができたという事実だ。

色々な景色を見ると自分のいる環境が全てではないと思える。
新しい環境でもこれだけ自分は頑張れるのだという自信が湧いてくる。

一瞬一瞬たいせつに生きていればどんな状況下でも揺るがない自分を得られること、たとえ進んでいないように見えても少しずつ前進していること、必ずそれが成長につながっていること。

それを知っているのと知らないとでは大違いなのである。

私がこの留学で得たものは、劇的な変化でも成長でもない。卵は立つと知れたことによって、不安に負けずに地に足をつけて一歩一歩進む覚悟ができたことだ。

父親の言うように、30年後にあの留学の経験が今の自分を作っている、と思えることができるように、これからも私は揺れ続けながらも奮闘する卵でありたいと思う今日この頃なのでした。








卵に関する変な話を締めにするのは気がひけるが、これにて私の留学日記ブログは終了する!



私の想像以上の人が読んでくれて、何十件もありがたいメッセージをもらいました。
留学に行けた人も行けなかった人も、日本の友達も、勇気づけられた、共感したとコメントをしてくれて嬉しかったです。
留学先の友達までgoogle translateにかけて読んでくれて長文のメッセージをくれました。

言葉の力を思い知ると同時に、自分はこんなにもあたたかい人に囲まれているのだと身にしみて感じています。

本当に皆さん、今まで読んでくれてありがとうございました!!




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