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【家族愛とは】 劇団☆新感線 「天號星」 2回目

偽物だろうと義理だろうと、娘は娘だ!

お人好しで優しいけれども気が弱い、ど中年の元大工の半兵衛と、人を殺すことだけが生き甲斐の若造銀次。

真逆な設定の2人が入れ替わる物語は、それなりにある。

でも今回のお話が他とやや違うのは、2人とも理由は違えど、入れ替わった中身と外身がだんだん馴染んでいくことだ。

中身は高校生の「私」が、ある日突然、中年の「私」の体になってしまう、という北村薫の小説「スキップ」で、「私」はやむを得ず、ゆっくりと中身と外身を馴染ませていた。

今作は、それとも違うのだ。

人殺しの中に入ってしまった気弱な半兵衛は、大切な人を守るために、人殺しとしての技を習得し、その過程で精神的にも強くなっていく。

お人好しの半兵衛の中に入ってしまった銀次は、自分でも気づかぬうちに、家族に対する思いが芽生えていたのではなかろうか。そんなことは一切語られないのだけれど、銀次の「永遠のライバル」である朝吉が、「お前、変わったな」とふと呟いたときに、そう感じた。

半兵衛の身体が記憶している、家族への思いが少しずつ、本人も気づかぬうちに銀次の魂にも浸透した結果、最後、半兵衛の身体の銀次の太刀筋は、僅かに鈍ったのではなかろうか。だから、倒されてしまったのではなかろうか。

更に、入れ替わったままでどちらかが殺される顛末も珍しい。入れ替わりが解けてから悪者が倒されるのが王道パターンなのに、今回、入れ替わりは解けないまま、悪者の心が入っていた方が倒された。「身体」という容れ物に、善悪はない。「悪」とは「心」にしか存在しないのだ。

ラストで、銀次の身体の半兵衛が、娘2人の頭をポンポンと叩きながら、達者で暮らせと別れの言葉を残す。見かけは早乙女太一なのに、古田新太にきっちり見えた。活字で書くと凄く変に見える(読める)けれど、実際にそうだった。

そこ以外でも、銀次(太一くん)に半兵衛さん(古田新太さん)が入った時の、太一くんの歩き方が、まんま古田新太さんだった。1回目の観劇では「寄せてるなー」程度だったのが、今回はまんま古田さん!に見えた。

だからこそ、銀次半兵衛(太一くん)と半兵衛銀次(古田さん)が、舞台の両袖から同時に入ってきた時、「ふわ!半兵衛二人おる!」となった。時空が歪んだ。

お伊勢さんもとても良かった。「顔がイカついから」という理由で半兵衛さんを再婚相手に選んだと宣っていたが、彼の優しさに実際は惚れていたのだろう。その半兵衛さんが(銀次が入ったことで)ちょっと強くなった時、乙女の顔で惚れなおしていたのが可愛かった。それがあったからこそ、どうにか一矢報いようとして死んでいった姿に涙。

さらに彼女の骸に祈りを捧げる銀次半兵衛の切なさが増した。

みさきちゃん(久保史緒里さん)とお母ちゃん(高田聖子さん)、みさきちゃんとお父ちゃんの関係性も、今回凄く伝わった。

みさきちゃん、お父ちゃんに凄く愛されて、長屋で育ったのだろう。その後半兵衛さんの婿入りに伴いお寺に預けられはしたけれど、それまでどれだけ彼から愛されたかが、とても伝わる。だからこそ、ずっとこんなにいい人を騙しているという罪悪感もあっただろう。

1回目の観劇後の感想は、「最高峰のチャンバラ劇を見た」だったのだけれど、2回目の感想は、「最高峰の殺陣が入り乱れる、家族の物語」になった。それくらい、ドラマが濃ゆくなっていた。

最後に、MILANO-座について。

1回目は一階から、2回目は3階席ほぼどセンターからだった。結論:

2回目、引き絵で見られて本当に良かった…!

帝劇の2階センターブロック前方の席と比べて、舞台との距離が半分なイメージ。3階からでも舞台が近い。いわんや2階もや。

音(歌詞含めて)も、センターブロックの方が聞きやすいので、1階の端の方よりも2階のセンターブロックの方が見やすそう。

それにしても… 舞台が小さい!!!上から見て改めて思った。ギリッギリまで舞台面使おうとすると、大道具の出し入れがミリで計算されねばならない。テクリハ時間かかりそう…

時差ぼけで寝るんじゃないかといく前は思っていたが、杞憂に終わった。また見られて良かった…

1回目はこちら。

明日も良い日に。

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