見出し画像

発語が遅くて苦労した幼少期の話

発語が遅かったんです。

幼稚園に入る前、母から何度も言わされた、先生の名前。


「あたらし るりこせんせい」


「あああい ういおえんえー」

母、焦って
「違う!あたらし るりこせんせい」

私、焦って
「あああい ういおえんえー」

母、必死の形相で
「あたらし!」

私、声小さく
「あああい…」


母、深刻な表情で溜息をつく。
私、母を悲しませたとわかって落ち込む。

でも・・・


言ってる!心の中で言ってる!


滑舌悪くても、声は小さくても。
ちゃんとした言葉に出来ないだけ。
辛かった。

そういえば幼稚園の面接の時も…

先生、優しく
「里衣ちゃんは、お家で何してる時が好きですか?」

私、恥ずかしくて
「・・・・・」

先生、? で
「何してるの好き?」

私、変と思われるのが嫌で
「・・・・・」



先生、困った様に苦笑いしながら母の顔を見る。

母、恥ずかしそうに下を向く。



先生、気を取り直し
「好きなものは何ですか?」


しつこいなぁ〜と子供心に思った私は、


「そんなん、おかーさんに聞いたらわかる!」


と言った。ちゃんと言えた。正直な心の声。
先生と母、唖然として私を見てた。


だから私、入園してからも、園のお友達とあまり話さなかった。 
そんな私に、前の席に座ってた男の子がくるりと振り向き、

「あ、て言うてみて い、て言うてみて」

と先生ぶって言ってくるのが嫌だった。
話さないから勝手にアホの子と思われる。
コイツなら何やってもいいんだとイジメられる。


心の中で叫んでた。

「アホにすんな!!」

幼稚園に行きたくなかった。
面白いことなんか一つもない。
バスが迎えに来るまでいつもお腹が痛かった。
「ぽんぽんイタイ」と言っても行かされた。
いつか本当を言うのを諦めるようになった。

給食の時間、メチャおいしかった炊き込みご飯。

まだ食べたかった。 
おかわりしたかった。
普通におかわりしている子が羨ましかった。

食べたい!どうしても食べたい、炊き込みご飯。
意を決して私は立ち上がった。
食器を持って、勇気を出して先生の所に行った。




「おかわりください」



・・・言えた! 当たり前が凄く嬉しかった😂


先生、驚いて目をまん丸くした後、
ゴクンとご飯を飲み込んだ。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?