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ソフトバンクG 2020年3月期決算

ソフトバンクGが5/20に3月期決算を発表しました。内容としては、特に目新しいことはなかったですが、孫氏の言葉で、現状の把握と、将来の予測が語られたことは、大いに参考になることが多いです。全体としては、コロナウイルスの影響で、事業には大きく逆風が吹いているものの、現状はそこまでリスクは高くない状態、ただこの先の影響は読めないため、4兆5千億円の資産売却を進め、守りの姿勢に徹するというメッセージでした。


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すでに報告されているように、営業利益は1兆3646億円の赤字、純利益は9616億円の赤字になっています。

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売上はほとんどが国内通信のソフトバンクからのものであることが分かります。

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Weworkの評価減やOnewebの破綻によりSVF事業は大きく赤字になっています。

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現在のSVFの投資先一覧です。

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SVFは累計では、評価増が1.4兆円(そのうち実現益は0.5兆円)、評価減が1.5兆円で、差し引き1000億円の赤字です。

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累計投資は8.8兆円なので、損失額は僅かといえば僅かです。

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SVFは優先出資4.4兆円分は7%定率分配する必要があります。もともと総額10.7兆円で、8.8兆円で投資をもう終えているので、10.7-8.8=1.9兆円分が、この定率分配に当てられます。そのため定率分配ができなくなるということはないとのことです。

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上場した投資先は、医療系が多いです(Guardant Health, Vir Biotechnology, 10X Genomics, PingAn Good Doctor)。2020年代はいよいよ医療系テクノロジーが花開くと考えられます。投資額としては、Uberは76億6600万ドルと圧倒的に多いですね。物流・交通系は、額としては最大です。

 

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アリババは順調です。ただ、中国企業の米市場への上場を禁止することにつながりうる法案が5/20米上院を通過しましたので、今後に関してはリスクがあると思います。全体としては、アジアのEコマース需要の増大や、アリババクラウドの好調もあり、影響力拡大は続くと考えられます。ただし、米中対立リスクは常に考えておくべきです。

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国内通信ソフトバンクは順調ですね。楽天も現時点では、大きな脅威ではなく、通信はコロナ危機にも強いです。

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Tモバイルとスプリントは4/1に合併が完了し、ソフトバンクGの持分は24%です。ただ早速、ソフトバンクGは、この株式のうち、200億ドルほどの売却をドイツテレコムと交渉しているようです。あまり米通信業界の成長性に魅力を感じていないのと、それほどキャッシュが必要なのでしょう。

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armも順調です。armは半導体の設計という、米中対立を含めた、今後の覇権分野にもろに関係する分野です。

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AWSの処理速度65%アップ、40%コスト削減とは、すごいですね。

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そして注目の株主価値は23兆円→21.6兆円に減少しています。

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4.5兆円資金調達の一環で行なっているAlibaba株売却で、すでに1.25兆円を調達しています。さらには5/21、国内通信ソフトバンクの株一部売却で、3300億円調達しています。ただ、この売却のため、ほぼ唯一の売上を上げている国内通信ソフトバンクの配当収入が今後減少してしまいます。

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LTVはこのコロナウイルス危機の中、14%と安定的な数字です。

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SVF投資先88社のうち、コロナの谷に落ちる(破綻する)企業が15社、コロナの谷を飛び越えていく企業が15社くらいではないかと述べられていました。CoupangやByte Danceなどは飛び越えられそうですが、OYOやWeworkがどうなるか注目すべきところと思います。

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今回のコロナウイルス危機で新たなパラダイムシフトが起こるであろうことは間違い無いので、SVF出資先がそれを成し遂げられると、孫正義氏は自信を持って語っていました。

今後の注意点

またジャック・マーの社外取締役退任と、新たな社外取締役2名の候補が発表されました。最近、ソフトバンクGのラジーブ・ミスラ氏とマルセロ・クラウレ氏の権力争いが報じられるなど、ゴシップのようなネタが出てきていること自体、あまり健全な状態とは言えません。いずれにしろ投資の神様ウォーレン・バフェットや孫正義氏までもがキャッシュを溜め込もうとしている現状、この先さらに大きな危機が待ち受けている可能性を常に考えておく必要がありそうです。そして、ソフトバンクの投資先は、米中対立のまさに狭間を行くようなところばかりで、おそらく今後多くの火の粉が降りかかってくると予想されます米国はソフトバンクも出資したロボット・人工知能のクラウドマインズなどをエンティティーリストに指定しました。このように政治的な理由で成長が鈍化する可能性は大いに高まると考えられ、注意が必要です。



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