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不毛な調停

かくして、調停が始まった。
調停は、1週間前までに裁判所に提出された双方の答弁書を元に話し合いが進められる。

調停の流れ

てっきり、1つの部屋に調停員と裁判官、夫と夫の弁護士、私と私の弁護士が顔を突き合わせて行われるものと思っていた。

実際には、1つの部屋(調停室)に調停員2名が着座しており、まずは夫と夫の弁護士が調停員と話し、その間、私と私の弁護士は「相手方控室」に待機。
夫側が話し終えると、夫と夫の弁護士は「申立人控室」に下がって待機。
調停員が「相手方控室」に私と私の弁護士を呼びに来て、調停室で話を聞かれる。

……というのを繰り返し、1時間〜1時間半ほどで1回分の調停が終了。次の調停は1ヶ月〜1ヶ月半後という流れで進んでいく。

調停を有利に進めるポイント

調停が始まる前、弁護士に「戦う相手はダンナさんではなく、調停員だ」と耳にタコができるほど聞かされた。調停員を味方につけないと、こちらに良い流れを引っ張ってくることができないという。

調停員は一般人で、必ずしも法律に明るい人という訳ではない。法律に則ってバサバサ切り捨ててくるというよりは、ジャッジはせず、双方の話を聞いて落とし所を提案してくる人である。

調停室には裁判官はいないが、司法判断が必要になった場合は、調停員が意見を取りまとめ、案件ごとにオブサーバーとして置かれている裁判官に意見を聞きにいく。

調停の結果に法的拘束力はないが、調停から裁判に移行した際、調停の結果を踏まえた判決が出やすい傾向にあるという。

つまり、調停員ときちんと意思疎通することが今後の流れをつかむために絶対不可欠であると言える。

“法的弱者”という壁

調停で話し合われる議題は2点。離婚問題と婚姻費用である。

弁護士は、妻側の主張として“離婚する意思がない”ので離婚しない。失踪前夜には夫が夕食を作ってくれて普通の会話をしながら食事しており「会話がない」「夫婦関係が破綻している」とは言い難い。むしろ、急に夫がいなくなって心配し、困っているのは妻の方である。婚姻関係が破綻したというのであれば、夫が同居義務違反をしたからに他ならない、と調停員に話をした。

他にも、夫の主張がいかに出鱈目で事実無根かということも話し……ている最中に、調停員に話を遮られた。

「離婚問題に対する答弁は書面でもいただいていますし、十分です。それよりも、婚姻費用なんですけどね、奥さんの方が収入が多いにも関わらず、支払いたくないというのはなぜなのでしょうか」

有責配偶者の話をしてもスルー。夫の収入の低さはコントロールされたもので不当だと主張してもスルー。

「ダンナさんは借金してまで、今、あなたが住んでいる物件の家賃……というかローン代を、住んでもいないのに払っているんですよ。気の毒だと思わないんですか?」の一点張り。

SE(システムエンジニア)である夫は、自分の年収が120万円であると確定申告し、月10万円の給与の中からローン代と水光熱費を払っていて、お金が足りなくて借金までし、生活に困窮していると泣きついたからだ。

夫が立ち上げた会社は、夫の他に社員がおらず、会社の儲けを好きに使うことができ、生活費のほとんども経費として落としていた。それで「お金がない」とは納得がいかない。

しかし、調停員は「源泉徴収票と確定申告という、法的根拠のある書類でね、ダンナさんの収入は120万円って証明されているんですよ。奥さんはもっと稼いでますよね?」とニベもない。

調停員って、どちらか一方の肩入れすることなく話を聞いて、平等に公平に折衷案を提案してくれる存在ではないのか?

2回目の調停以降も、離婚理由についてはほとんど触れさせてもらえず、調停員は「婚姻費用を払いたくないのはなぜですか」と繰り返した。

そして、3回目の調停の時、事件は起きた。

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