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【前編】病歴あり、職歴の空白ありから再就職するまで

割引あり

内定を頂きました

 今年4月から再就職を目指して就活を行った結果、9月末に内定を頂きました。詳しいことは言えませんが、想定していた内容を遥かに上回る条件で11月から働くことになりました。正社員にこだわらない、年収や賞与もこだわらないなどの条件を広げた妥協もしていましたが、結果的には正社員総合職・賞与昇給あり・大企業となりました。さすがにこれは幸運過ぎますが、内定に至るまでの経緯や私の考えなどについて書くことにします。

障害者雇用か?一般雇用か?

 話は2021年8月に戻ります。この時、私は前職を退職しました。うつ病で休職→復職→休職を繰り返す中で復職したものの、私は会社に行くことが怖くなり退職しました。その後、私は病気療養と主に精神障害を患う人の社会復帰を支援する就労移行支援に通って再就職を目指していました。そしていざ就活を始めた時、障害を開示して働く「障害者雇用」と通常の転職プロセスを経て働く「一般雇用」のどちらで就活をすべきか悩んだ結果、当初の私は後者を選びました。そこには2つの理由がありました。



 一つは精神障害に対する否定感でした。この世に生まれて新卒入社するまで病気も怪我もほぼなく、順調な人生を歩んだ私が「障害者」であることを開示して働くことは人生の敗北だと思っていました。負けず嫌いで、人は強くあるべしという性格が災いしたのです。そしてもう一つは障害者雇用の待遇への拒絶感でした。各種統計を見れば一目瞭然ですが、働く精神障害者の身分、年収、職務内容は健常者のそれと比べて劣っており、それゆえに嫌悪していました。もちろん理由があってこの統計が示されるのですが、平均以上の学歴を有し、軽度の精神障害である私がこの条件で働いては両親に申し訳なく、友人が手にしそうな経済的成功や結婚、仕事の達成感などが一切ない、今後の人生が「消化試合」になる絶望感がありました。



 今思えば、障害者雇用で働く人々への失礼な発想であり、見栄や体裁を意識した再就職というのは身の丈に合わない行動でした。結果的には、満足する条件で再就職したのですが、全ての希望条件を最初から叶えようとするのは高リスクだとお伝えしたいです。もちろん障害者は統計が示した条件で高確率で働くのも事実なので、これらを踏まえて自分の状況や能力を現実的に算出して選択できる最善の行動をとることが納得のいく障害者雇用で働くことにつながると思います。

職歴のブランクと病歴の過去

 しかしながら就活初期の私は障害者雇用を勧める就労移行支援やハローワークの意向を断り、ひたすら一般的な転職サイトを利用した就活を行っていました。しかし履歴書を見れば約2年の職歴の空白があり、恐らくそれが原因で書類選考は大量落選。そしていざ面接に進めたとしても面接官よりブランクを問われ、傷病による退職と療養を告げ、それは精神疾患であることが会話の中で察しが付き不採用ということを何度も繰り返していました。



 それは、人を雇えば当然コストが発生し、正社員は簡単に辞めさせられず、精神障害者の離職率が高いことなどが原因であり、事実上の「雇うに値しない命」なのです。しかしながらそれでも雇う会社はさすがにあるだろうと「楽観的な期待と好意的な解釈」をし続け、ひたすら不採用の山を築いていました。私はそれを夏まで続けていましたが、ついにエントリーできる持ち玉が尽きました。この段階になって初めて一般雇用を目指す就活戦線から「転進」したのです。


最初から満額回答を狙わない

 職歴や病歴のハンデには勝てない、これをまず最初に認めました。今のまま一般雇用での再就職を狙っていてはいたずらに時間を費やすだけだと理解しました。そして何よりまず働いたという「実績」を得るべきだと友人から助言されたことで現実を直視しました。つまりそれは社会的体裁や経済的成功を求める「人権がない」ということです。そして障害者雇用専門の転職サイトを利用することにしました。基本的な仕組みは通常の転職サイトと同じで、学歴、職歴、自己PRなどを記入し、個人の希望条件を入力して示された検索結果から志望します。しかし大きく異なるのはその検索結果であり、この結果を否定するようでは恐らく障害者は永遠に働けないでしょう。
 


 非正規ばかり、賞与や昇給がない、低年収、ルーチン作業ばかりなどは当然です。そうした企業の一般雇用での新卒・中途採用での募集要項と比較すればその差異が明確になります。もちろん中には好条件求人もありますが、高競争率で、エントリーの必須要件で資格保持や特定の職務経験が要求され「きれいな障害者」しか求めてないことが示唆されます。しかし露骨に労働条件が悪くなるのは、安定した勤怠が予期できない、職歴もない、最低学歴が高卒以上で、その他配慮事項もあると障害者雇用で生じるコストを一般雇用並みの条件では吸収できないからです。



 したがって、一般雇用でもそうかもしれませんが「訳あり人材」は希望条件を一つか二つに絞り、検索結果が少なくなる身分不相応な選択をしないことが重要になります。年収にこだわるなら年収だけを選択し、賞与や昇給には目をつぶり、志望業界や年間休日などは考えないようにするしかなく、私は希望条件を二つにしました。
①月給が額面で20万円以上
②管理部門で業務の幅を広げられること
 ①は言わずもがな最低限度の生活ができない給料で働くようでは自立した生活が困難だからです。その代わり賞与、退職金の有無、正規非正規、志望業界などの優先順位は後回しにしました。
 ②は将来の転職を前提として、実績や経験を職務経歴書や面接で表現したかったからです。その代わり年間休日、福利厚生、転勤の有無なども後回しにしました。
 ここまでしないと再就職できない人間であるのが現実であり「普通」と思える条件を掛け合わせまくって「稀有」な職場を希望しないようにしました。

障害者雇用のネガティブな話

 ネットで障害者雇用を検索すると障害者雇用で働く人々の怨嗟や怒りを目にします。まだ最初の出勤日を迎えておらず、いざ勤務してみないと分からないことの方が多いでしょうし、働けば不満や悩みも生まれてくるでしょう。しかし提示条件を見る限り、お金、身分、業務内容は問題ないと上記の呟きをする人のそれと比較して思っています。むしろここまで会社から与えられたのだから、私自身が業務を理解して組織に貢献し「給料泥棒」と揶揄されないようにしたいです。



 とはいえ障害者雇用全体として当事者を取り巻く環境が改善したとは残念ながら思えません。障害者を社会の厄介者として排除する代わりに高額な障害年金を与えて金で納得させるわけでも、多様性のある社会という高邁な理想を掲げて障害者を包摂するわけでもなく、中途半端な状態で障害者を社会に位置付けるままだからです。そしてどんなに法律が改正され、社会の人権意識が向上しても、利潤を目的とする企業が二つ返事で障害者を大量採用することはないでしょう。仮にあるとしてもコストのかからない、使いようによっては健常者と遜色のない働きを示しそうな「健常者に近い障害者」の争奪戦になると予想します。



 恐らく入社先も私が「健常者に近い障害者」だったから採用したと思います。これを残酷な現実と思うか自然な理屈と思うかは皆さん次第です。そしてさらに予言するのは、この先の日本では障害者をこれ以上、社会保障の枠組みで最終的に解決しないということです。何らかの形で経済の中に組み込んで自助努力をベースに、給付を受ける側ではなく、労働者・納税者・消費者としてなるべく生活してもらうということです。そこで生じる様々な衝突は良くも悪くも社会秩序を維持するコストとして肯定されるでしょう。

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