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転職エージェントのビジネスモデルをわかりやすく図解します。

転職を考えた時に思い浮かぶのが「転職エージェント」の存在です。

自分の履歴書と希望する職種などの情報を登録すれば、無料で相談に乗ってくれて、転職先を紹介してくれるキャリアアドバイザー。この記事を読んでいる方の中にも、お世話になった方も多いかもしれませんね。

表面的なビジネスモデル(収益モデル)としては、求人企業と転職希望者を広告などで集めて、マッチングさせることで求人企業から手数料を徴収します。

…と、これだけの内容なら図解するまでもないですが、内部のインセンティブ構造なども含めて図解すると一味違ったものになります。

ということで、まずはビジネスモデル図解の全体像から。

ちなみに、上記のようなビジネスモデル図解は「ループ図」という手法を使っています。ご存知ない方も、このまま読み進めていただいて問題ありません。ループ図自体の詳細については、以下のブログ記事の解説もご覧ください。

転職エージェントのビジネスモデル図解のポイントは、

  1. 採用時の手数料で稼ぐ収益モデル

  2. エージェンシー問題に対応する複雑な仕組み

  3. 採用難易度で調整される手数料

の3つ。

それでは順番に解説していきます。

① 採用時の手数料で稼ぐ収益モデル

まずは冒頭でご説明した、転職エージェントの収益モデルについて。

ビジネスモデルとしては、求人企業と転職希望者の両方を顧客とする両面市場のプラットフォーマーです。

しかし、採用後にお金を支払うのは求人企業のみ。転職希望者は無料で利用することができます。

この採用にかかる手数料は、雇用契約が結ばれたときに発生し、転職エージェントの売上となります。そして、そこで得られた資金は広告宣伝費などに再投入され、さらに求人企業と転職希望者を集めるというサイクルを回します。

ただし、転職エージェントは転職希望者よりも求人企業のニーズを優先する構造になっています。

なぜなら、求人企業から報酬を受け取るだけでなく、その求人企業に繰り返し依頼してもらう方が売上が伸びるから。逆に、転職希望者との付き合いはそれっきりになる可能性が高い。そのため、求人企業の要望を優先しようとする行動は自然です。

② エージェンシー問題に対応する複雑な仕組み

ここからは、他のビジネスモデル図解ではあまり焦点が当てられなさそうな、キャリアアドバイザーのインセンティブ(誘因)構造について。

実は、転職を斡旋してくれるキャリアアドバイザーは、行動にトレードオフが生じやすいという問題を抱えてます。

以下の図をご覧ください。

キャリアアドバイザーの報酬は固定給と歩合給の組み合わせになることが多いですが、歩合給については、採用が成立した成果に応じて支払われます。

つまりキャリアアドバイザーが給与を増やすには、採用件数を増やす必要があるのですが、採用件数を増やすということは、それぞれの案件にかける時間が少なくなるということ。勤務時間は上限があるからです。

その一方で、良い転職・良い採用を実現するには、求人企業や転職希望者にしっかりヒアリングやカウセリングの時間を取る必要があります。

ここで、

  • 手間暇をかけると時間効率が悪くなり歩合給が減る

  • 歩合給を増やそうとすると手間暇をかけずに時間効率を高る必要がある

というトレードオフが発生します。

もちろん会社(転職エージェント)としては、手間暇をかけて顧客に満足して欲しいですが、従業員(キャリアアドバイザー)は手間暇をかけすぎて歩合給を減らしたくはありません。

このような会社側(転職エージェント)と従業員(キャリアアドバイザー)の双方の利益が一致しないことを、経営学ではエージェンシー問題と呼びます。

このエージェンシー問題を抑制するために、会社(転職エージェント)は、

  • 営業ノルマ

  • 返金規定

という対策を用意しています。

営業ノルマは売り上げの低下を防ぎ、求人企業の利用体験を向上させます。また転職エージェントが成果を出さずに時間を費やしてしまうことの抑制になります。

返金規定とは、採用された人材が一定期間で退職した場合に返金する仕組みのこと。求人企業にとってはリスク低下要因ですが、キャリアアドバイザーにとっては、不適切なマッチングを回避しようとする要因になります。

この2つの仕組みをビジネスモデルに組み入れることで、キャリアアドバイザーに対するエージェンシー問題を抑制しようとしています。

③ 採用難易度で調整される手数料

3つ目のポイントは、採用難易度に応じた価格調整の仕組みです。

求人企業のニーズとして、募集だけでは集まらないような人材を採用したい、というものがあります。しかし、採用しにくい人材は採用件数が少なくなるため、転職エージェントとしては売上が小さくなります。

そこで、採用が難しい場合には、採用あたりの手数料を上げて調整する、という対応を行います。そうすれば、トータルの売り上げは落ちませんよね。

しかし手数料が上がれば、求人企業にとっては不満です。しかし、採用が難しい人材を確保できたとなれば嬉しいですよね。

このように手数料上昇による不満と、レア人材の採用という嬉しさは相殺され、求人企業の利用体験はそれほど悪くはなりません。

転職エージェントのビジネスモデル図解まとめ

あらためて、転職エージェントのビジネスモデルを俯瞰してみましょう。

表面的な収益モデルよりも、キャリアアドバイザーのエージェンシー問題を抑制する仕組みや、採用難易度に応じて手数料が調整される仕組みなどはとても興味深いですね。

なお、以下のブログでは、さらに詳しい解説を公開しています。ぜひ下記リンクよりご覧になってください。

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