見出し画像

夏目漱石「坑夫」を読んで

漱石「坑夫」を読了しました。

本書は、漱石を訪ねてきた人から実際の体験談を聞いて、それをまとめたとのことです。
たしかに他の作品とは趣をだいぶ異にしているようです。

内容は、以下のとおりです。

家にいられなくなったか、いたくなくなった青年が出奔し、途中で坑夫の斡旋人に会って銅山へ連れていかれます。
そこでの坑夫の劣悪、かつ、危険な労働環境を実体験します。
初めて坑道に連れて行かれた際に、道を間違えて他の坑夫とは違う人格者の「安さん」に会い、家に帰るように強く勧められます。
それでも坑夫になることを決断しますが、結局は坑夫に採用される前の健康診断で「気管支炎」と診断されて、事務的な仕事につきます。

複雑なストーリー展開はなく、家を出てからと銅山に入ってからの情景描写や主人公の心理描写が主となります。
漱石が体験者からどの程度聞いていたのかは分からないのですが、その描写は真に迫っています。
まさに漱石が実際に体験したのではないかと思われるほどです。

昨年6月から「夢十夜」、「彼岸過迄」、「行人」、「こころ」(再々読)、「道草」、「永日小品」、「硝子戸の中」、「明暗」(再読)、「二百十日」、「野分」、「虞美人草」と読みつないできました。
note記事としても、各々の感想文を書きました。
他の作品は、すでに何回か読んでいますので、漱石の主要な小説につきましては読み終わりました。
 
今までは鷗外を好んで読んできましたが、今回漱石を読んで小説家としての力量に感銘しました。
今後は、未読の漱石の作品をすべて読了するつもりでいます。

ただ、次に読む本は何にしようか、漱石かほかの人か、思案中です。

わたしの興を呼ぶのは、どの書物か、こんな幕間ともいうべきひと時もけっこう楽しいものです。


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?