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英国のナチュラルライフ:ガーデニング編

初めての外仕事

北風と太陽?

晴れの日も、雨の日も、風の日も…
外で働くってどんな感じなんだろう?
と、日本を離れる前、ワクワク、ドキドキしながら想像をめぐらしていました。
でも実際は、晴れの時も、雨の時も、風の時も…でした。

”1日のうちに四季がある”と言われるイギリスですが、
なんと、1日の中にすべての天気も存在していたのです!
そういえば、”英国の空模様と女心は変わりやすい”というのも聞いたことがあります。

太陽が照り付けると途端に暑くなり上着を脱ぎ、
雲が広がると上着を着たり、
雨が降ってくると慌てて防水コートを着て濡れながら仕事を続けたり、
また太陽が出てくるとからっと濡れたコートが乾いたり、
風が吹くと髪の毛や着ているものがボサボサになったり、
そんなことは日常茶飯事。

変化があるのは嫌いじゃない私。
天候に合わせてその時々で臨機応変に変化する庭仕事は、バラエティーに富んでいて楽しい時間でした。

私がガーデンボランティアとして、カフェのスタッフとして1年間を過ごしたウエスト・ディーン・ガーデンズの自慢のパーゴラ

感覚を研ぎ澄ます!

オフィスにいたころは、雨が降ろうが槍が降ろうが、晴れてようが雲があろうが、いつも同じ明るさの同じ室温の部屋で淡々と仕事をすることが当たり前でした。
外での時間が増えるにしたがって、守られていたというか、何も感じない時間だったのだと思えてきました。
日々外で過ごしていると、いろいろな感覚が活き始めてきました。
それは五感が活性されたということでもあるけれど、全てと繋がったという感覚でもあった気がします。
五感だけではない何かも働き始めたような。

庭仕事を始めた時から、今までには体験したことのない、自然のありがたさを感じずにはいられない出来事がたくさんありました。
それは植物を通して得られたものや、街灯の無いカントリーサイドで暮らしたからこそ分かったことだったと思います。

太陽の明るさや温かさに感謝をし、
雨が大地を濡らしてくれることに感謝をし、
雲が影を作ってくれることに感謝をし、
月の明るさに感謝をし、
植物の癒しに感謝をし、
実りに感謝をし、
ここに描ききれないほどに、自然のをありがたさを感じることばかりでした。

植物たちを子供の様に愛でているガーデナーたちの会話から感じることでもありました。
She is thirsty!:喉が渇いた子たちに、お水をあげなきゃ!
They are not happy.:しょんぼりした子たちに、明るい光を注がなきゃ!
と、いったぐあいに。

今までに感じたことも考えたこともない、感じたこともないことがたくさんで、自然が私たちに語り掛けてくることに驚かされてばかりの毎日でした。
ガーデナーをしていると、植物を通しても太陽や月の動き、天気、空との関わりを感じずにはいられません。
バイオダイナミックでは月の満ち欠けに合わせて種蒔きや収穫をするガーデニングや農法があるのもうなずけます。

そして、どれかが欠けては命が成り立たないという事実も学びました。
それは、植物たちだけでなく、私たちも一緒でした。

ウエスト・ディーン・ガーデンズのキッチンガーデンの私が大好きなルバーブとベリーのベッド(畑)。花壇をbedと呼ぶのも好き。わたしにとって植物が安心してネンネしてるイメージです。

悲しいだけじゃない!?

SADってどんな意味か分かりますか?
「悲しい」という英単語でもありますが、Seasonal Affected Disorderの略でもあります。季節性の鬱のことをさします。
太陽が姿を現す時間が極端に短くなるイギリスを含むヨーロッパの北側では、この時期に鬱になる人が多くいます。
私も寒くて暗いこの時期が苦手でした。
でも、これがあるから、春の芽吹きが待ち遠しく、とても愛おしく、美しいと感じる気持ちが何倍にもなるのだということも何度となく経験しました。

英国の春の訪れを予告するのがスノードロップ。

ガーデナーの働き方

ナマケモノ?

初めて英国で働いたウォデスドン・マナーでの集合は7:30。
パラパラと集まって、ダラダラと話をして、ボチボチ準備をして持ち場へ向かい仕事が始まります。
いつを始業と呼ぶのかはよくわからないまま英国の8年半は終わりましたが、日本人的に仕事が始まるのはいつも8時近くでした。

10時になると「Break time!」の声が聞こえてピタッとお仕事をやめてお茶の時間になり、12時になると「Lunch time!」と誰からともなく声がかかり、これまたビシっとお昼の時間になりました。
3時にもキッカリと手が止まり、お茶の時間。
4時45分には「Time to go!」と声がかかり、5時に帰れるように片付けが始まり、時間と共に全員帰路につきます。

よっぽどのことがない限り、残業をしている人を見ることはありませんでした。
残業をしたのは2回くらい。ジュビリー(女王陛下の戴冠記念)の前の準備の時くらい。
とはいえ、必死に作業をするというよりは、各自が話したり、口笛吹いたり、歌ったりしながら花を植えたり、耕したりという感じで、焦ってるようには全く見えませんでした。
ロンドンの金融街などは違うのでしょうか、ここカントリーサイドでは「焦る」とか「急ぐ」とかいうことは全く感じたことがありませんでした。
いつも自然の流れと共にあったように思います。

ありがたいことに英国の冬は日が暮れるのが早いので、3時半にはお仕事終了となります。
暗くなっては作業ができないのがガーデニングの良いところです。
電気を引っ張ってきて夜暗くなっても明りをともして作業をするというのは一度も見たことがありませんでした。
もちろん、家に帰った後に植物の本を見ながら明日の準備をするというようなことは度々ありましたが、残業というよりも、あくまでも私の知識と経験の無さからの自主勉強でした。

因みに、みんなのお茶の時間は水筒に居れたミルクティーとクリスプス(ポテトチップスのこと)とリンゴやバナナといった果物の3点が定番でした。
クレモンタインやマンダリンと呼ばれる手で向ける小さなみかんも良くみかた果物のひとつ。クッキーやケーキを持ってくる人もいました。

ケーキと言えば、お誕生日の日は、主役のお誕生日の人がケーキを職場に持っていき、みんなに配るという習慣がありました。

強制的にみんなに祝わせるの?
と驚きましたが、そもそもの”みんなでお祝いするのがお誕生日”という概念が日本とは大きく違うようでした。
祝福をみんなで共有する素敵な文化です。
そして、お誕生日の日は女子はお姫様になれるのです!

話は元に戻りますが、休憩は素晴らしいリフレッシュになります。
仕事の手を止め、仲間と笑いあい、悩みを相談し、昨日あったどうでもいいことを報告しあう。
ガーデンで仕事をしているので、休憩と言っても建物の中に入ることはほとんどなく、毎日2-3回ピクニックをしているようなものでした。
仕事をしているときとは違った視点でのお庭を鑑賞する機会にもなるし、何より、集中力や仕事のスピードが回復します!
自然の中で会話をし、飲み食いするのは、心も体も喜び癒される時間でした。

”ナマケモノ!”と言われそうな日本の社会ですが、みんなでせめて2時間ごとに15くらいお休みしてみませんか?


私を耕しながらココロとカラダを健康に導き、美しい花を咲かせましょう!
ナチュラルライフガーデナー Madoka