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【7日間ブックカバーチャレンジ(4/7)】 マリオ プラーツ 『ムネモシュネ―文学と視覚芸術との間の平行現象 』(1999年11月1日), ありな書房

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ある期間に人々の意識や人々が世界をどのように捉えているのか、そして美しさとは何だろうかと集中的に調べていたことがありました。「美とは何か」と考察する過程で、佐々木健一さん『美学への招待』、今道友信さん『美について』のほか、脳科学、宇宙物理学、心理学、哲学など様々な本を数珠つなぎに読みすすめていました。そのきっかけとなったあるプロジェクトで「ミュージアム」の語源を調べる機会があり、その語源であるいわゆる"美の女神”と言われる「ミューズ」を調べていて行き着いたのが、本書のタイトルにもなっているミューズの親である「ムネモシュネ」。記憶の神です。


Museum、その語源はギリシア神話に登場する文芸に通ずる美の女神「ミューズ(Muse / Musai)」にあります。ミューズは、天空神ゼウスと、記憶の神ムネモシュネのあいだに生まれた9人の女神の総称と言われています。その9人の女神はそれぞれ異なる学問・芸術を司っていました。カリオペ(叙事詩)、クリオ(歴史)、エウテルペ(器楽)、タリア(喜劇)、メルポメネ(悲劇)、テルプシコレ(舞踏)、エラト(恋愛詩)、ポリュヒュムニア(賛歌)、ウラニア(天文)。また9人説より以前には3人の女神の総称とも考えられていました。その説においては、ムネーメー(記憶)、アオイデー(歌唱)、メレテー(実践)の総称がミューズであると言われています。

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「天空」(=「自然」と置き換えても良いでしょう。芸術は自然のミメーシス=模倣から始まったという見方もあるようです)と「記憶」から「美」が生まれるということに、インスピレーションと豊かに広がる想像を抱いた当時をよく覚えています。ここで学んだことは、現在でもブランドを考える上でも普遍的で本質的に重要な要素として大事にしています。

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本書では、姉妹芸術論(シスターアーツ論)について言及されています。読んだ当時は必要な部分のみを撫でた程度で理解が浅い部分がありますので誤った理解をしている可能性もありますが、端的に言うと文学と視覚芸術(絵画に代表される視覚的な諸芸術)は相互に影響し合い、詩は絵画的にイメージを描くことを求め、絵画は詩的にテクスト(あるいはストーリー)を語ることを求めていたということだと理解をしています。ブランドにおいても、テキストでイメージを現出させ、イメージでストーリーを物語ることを意識しますので、本書を読み直して思索の旅にまた出ようかと思いました。部分的に見聞きしている芸術論、美学などを最初から一通り巡りたい気持ちが高まります。


▼ありな書房

*Facebookに投稿したものを転載しています。

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