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働き方改革再考③ ~人事異動(管理職)から眺める~

暦も師走を迎え、今年度も余すところ4ヶ月余りとなってきました。
おそらくたいていの自治体でも、勧奨退職の締め切りが近づきいよいよ退職者の数を確定したところから、来年の人事異動についての話が加速していきます。

今回は、学校改革、あるいは働き方改革の推進について管理職の人事異動との絡みで考えてみたいと思います。

私が長きに渡ってお世話になった自治体では、現在、教諭職が7年を目処に異動対象となっています。管理職については特段の定めはありませんが、通常2年から3年での異動が一般的になっています。(時に、イレギュラー人事として教頭、校長(特に教頭)を務めても1年で移動してしまうようなケースも見受けられます。)

公立学校における校長の人事状況について、2010 年に公立学校を退職した校長 を対象とした文部科学省の調査により、校長の同一校在職年数は、全国平均で 2.9 年となっている。以上の 調査により、日本の校長の同一校での勤務年数が平均 3 年以内で、また、今年の A 県公立小・中学校にお ける校長の異動パターンから見ると、自校昇任の人数が極めて少ないということが見えてくる。
公教育システム研究第 20 号  論文「自校昇任」が校長の経営行動に与える影響
―A 県公立小・中学校の実例を中心に 張 頔

そうした人事異動の仕組みの中で、学校は運営されています。仮に校長先生の在籍期間が2年であったと仮定してみましょう。

校長先生ご自身も何年預かる学校に在籍していくのかは全く判りません。2年で異動になるのか、それとも3年で異動になるのかは、春の異動内示で知らされるからです。そうした状況にあって、校長先生が、新しく赴任校に着任し、学校の状況、教職員の雰囲気を観察し、分析して学校運営を切り盛りしていくわけです。もちろん、前任者からの引き継ぎは行っています。しかしこの引継ぎも特段のフォーマットがあるわけではなく、前任者の感覚に委ねられています。大変丁寧な時系列に従った記録を残しているケースもあるでしょうし、全く資料も用意がされず口頭でごく簡単な引き継ぎしかなされなかったと言うことも耳にしています。学校の運営に関しては、学校運営計画的なグランドデザインがきちんと動いていればそのことを引き継いで、動き始めることができるかもしれません。しかし、そうした資料は、お飾りのように掲げられていることも多く、何が課題でどのような打ち手を講じ、どこまで進捗しているのか、引き継いだ後にどこから手がけていけば良いかを共有して進めて行かれることはかなりレアなのではないかと感じます。そうしたな様相でスタートする訳です。

まず、学校の状況を掴む1年目。自校での昇任でない限り、教職員1人ひとりの人となりを感じて、人間関係も構築していかなくてはなりません。良好な人間関係を築いていくだけでも数ヶ月は要するでしょう。多分、夏休みを迎えるこ頃に馴染んだ感覚を得られるのではないでしょうか。付け加えて言えば、数十人規模の組織で2人しかいない教頭さんとの関わりもその人間関係の中にあり、最も影響に大きなものとして数えられます。学校運営に関して学校長と同じ目線で取り組めるのが校長を補佐する教頭との関係性ですが、現実は人の織りなすことですから、色々なことがあります。

少々、脱線をしましたが、新しく着任した学校に慣れるまでに数ヶ月。仮に想定する2年の在任だとすると、持てる時間は、1年半余りしかありません。その中で、学校の現状を分析し、構成する職員の気持ちを考え、学校を改革するような働き方改革の打ち手を考え、提案し、実行するのは至難の業です。もし3年の在任だとすれば、2年半の時間を持てるわけですから、多少やり易くなります。しかし、先にも触れたように当の管理職は、そういった見通しも持てず、最短では2年を意識して仕事をしている校長先生も多いはずです。ここに見えにくい学校改革、業務改善、働き方改革を進め難くしている課題があると思うのです。

学校経営関連の先行研究では、校長の職務権限が生かされず指導力が十分に発揮されないまま転任する 状況や、一校における在職期間の短さが課題として指摘されている。新任校長にとって、短い期間の中で新 たな学校や教職員集団という背景のもとに学校経営方針を示し、学校を経営していくことは簡単ではない。
公教育システム研究第 20 号  論文「自校昇任」が校長の経営行動に与える影響
―A 県公立小・中学校の実例を中心に 張 頔

学校の改革、その改革には色々な要素も含まれている中、教育の本質に関わる授業づくりや学校研究は、研究体制が整備されている分野であり、携わってきた職員も全てが異動で切り替わるわけではありませんから継続性を維持して取り組んでいくことが可能です。しかし、業務改善、働き方改革になると管理職が預かることも多く、(全ての運営もそうですが、)管理職の考え方によってその方向性も相当異なっていきます。

こうしたシステム、環境の中に、H29に緊急提言がなされながら、コロナ対応に翻弄されたとはいえ、学校現場が主体となっての働き方改革が進み難い実情があるのではないかと考えています。

このことを改善するためには、まず、
💫①授業研究を行うように、働き方方改革を推進する「働き方方改革委員会」的な校務分掌を位置付け、校長、教頭、教務、総括(主幹)教諭、学年主任などから選出した複数人で構成する校務分掌をつくるべきです。そうしなければ、管理職が短期間で異動するシステムに翻弄され継続的に積み上げていくことができないと思うからです。

そして、つぎに、
💫②管理職が練り上げ全教職員と共有する学校グランドデザインの中に、働き方改革から眺めた理想を掲げ、さらにそこに向けてこれまで取り組んできた成果、現在取り組んでいること、さらに、その経過を踏まえてこれからどう進んでいくのかが指し示され共有されたGDを持っている必要があると思います。
こうした💫③GDは、教委ともしっかりと共有してその進捗を把握しながら、教委として後押しできることをしっかりサポートし続けることが必要なのだと考えています。

今年度、学校を周囲からサポートできないかと考え、いくつかの小中学校を訪ね、業務改善や働き方改革をテーマにディスカションをしてきましたが、日頃の校長先生は、降りかかる人員不足、コロナ対応、保護者対応、教職員の服務問題などで忙殺され遅くまで対応を余儀なくされているケースが殆どです。腰を据えて、そのために与えられた執務室で思いを巡らせて、より良き学校運営を考える余裕はありません。国、県、市町村教委が示すものが絵に描いた餅のようになってしまうのは、こうした管理職を取り巻く実態と無関係ではありません。

💫現場も教委も慌ただしく対応を迫られ、状況によっては継続的に関わり続けることが困難な現況を考えると、並走して共に考える外部人材も、福祉や心理、法律に専門家と同じように必要なのではないかと思っています。

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