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完全アウェイから生まれる(1)

昨日お世話になった友人宅からpatagonia渋谷店に向けて自転車を走らせる。少し慣れてきたものの、後ろが長く、カフェのための荷物を満載した自転車はふらつく。それも縦や横ではなく、グネグネねじれるように。

今日は念願だったpatagoniaでのOPEN。一昨年だったろうか、この会社が取り組む長崎県川棚町に建設されようとしているダム運動の話を日本支社長の辻井さんからうかがった。40年以上の前に計画され、もうその必要性が無いにも関わらず建設が進められようとしている工事のために、失われていく人の営み、そして自然環境。彼はこの問題はたったひとつのことではなく、きっとこれまでも、これからも日本全体で起こりうるものだと捉え、会社をあげてこの石木ダム運動に取り組むことにした。

辻井さんが話したなかでとても印象に残った言葉がある。
それは「反対!と声を荒げてばかりでは、解決に向かわない。僕たちは人々が自分ごととして、この問題を考える環境を作りたい。」という言葉だった。それは僕が旅をしながら、教育に取り組んでいる理由と同じだった。

きっと誰も、子どもたちを悪い環境で育てたいなんて思っていない。けれどそれぞれが自分のやり方で進めてしまうと、ひずみのようなもの、影のような部分はどうしても生まれてしまう。だから何かを悪者にしてしまうことからは、解決は生まれない。誰かを悪者にして、そこで歩みをやめてしまうことではなくて、いまある環境のなかで何ができるか。どうやったら歩み寄ることができるのか、そんな自分の考えにこのpatagoniaの取り組みが重なった。

今日はこの旅でいちばん暑くなりそうだ。ご挨拶をしてすぐ、渋谷店の城代さんは「すぐ準備するんで、テントを張りましょう」と提案してくださった。そのサッと判断し、動いてくださったことで気持ちが引き締まった。今日僕はここで、できることを精一杯やろう。

お店のOPEN時間とともにdailylife bicycle cafeもはじまった。いつもはじまりはソワソワする。今回の企画は、どこだってアウェイだ。その町の、その場所を行き交う人がどう自分を見ているか、そんなことを考えながら時間を過ごす。

僕がOPENしたのはpatagonia渋谷店前のウッドデッキ。目の前の道路にはガードレールがあり、そのどちらかの歩道を人は歩いていく。人通りは多い。けれど人々はあんまり僕に目を止めない。ここを行き交う人は「自分の目的の店」があるのだろうか、それ以外の店ではキョロキョロもしない。それにガードレールのこちら側を歩く人にとっては、僕がたぶん近すぎてじっくり様子をうかがう前に通り過ぎてしまう。歩く人の目線も、カフェの看板には届かず、どちらかというと僕の上半身あたりをかすめていく感じだ。

これまで感じたのとは、また別の不安が湧きあがるのを感じながら、僕はこれも勉強!今日ここで学べるものを!と自分に言い聞かせる。

(続く)

石木ダム建設問題へのpatagoniaの取り組み

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