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完全アウェイから生まれる(2)

最初にコーヒーを飲みに来てくれたのは、数年ぶりの再会となる友人だった。彼とは中国・四川省での災害ボランティア活動をともにした。今はもう立派な会社に勤めて、奥さんも子どももいるお父さんだ。

たぶんお互いに少し照れながら友人と、当時のこと、今のことを話しているあいだにまた次のお客さんがやってきた。テントの下のベンチが埋まってくるにつれて、通りを歩くお客さんの目にも止まるようになってきた。ここからはひと息つく間もなく夜までコーヒーを淹れ続けることになる。

講師を勤める小学校の教え子がお母さんと一緒に来てくれた。自分でコーヒーを淹れるという彼を見守りながらお母さんと子育ての話をした。

中学生男子ふたりが「なんかやってる!」と目の前で自転車をとめた。おもしろいことあるよ!コーヒーも飲める!お金はいらないよ!と声をかけると「マジで!?」とふたりしてやってきた。自転車と旅の話をしながらスゲー!を連発していた彼らは、僕の友達のニュージーランド人冒険家のJUPと今度は話し始めた。

「きみたちはね、さっき自分で選択してここに来た。だから君たちがほんとによかった、と言っているいまこの瞬間は君たちが自分でつかみとった人生なんだよ。人生っておもしろいだろ?」と言ってもらった中学生たちは、ほんとにいい表情をして、僕にお返しのカントリーマアムをふたつ置いていった。

JUPは原宿を歩く外国人にどんどん話しかけてくれる。「やぁ、ここで彼がやっているカフェはほんとにクールだ。コーヒーを売ってるんではなく、出会いを、人生をシェアするためにここにいるんだ。どうだい飲んでく?」そうしてまたたくさんの人がやってきてくれた。

僕の大好きな作家吉本ばななさんも来てくださった。すごく自然に振る舞われていたけれど、きっとスケジュールをたくさんやりくりして来てくださったのだと思う。その押し付けではない、心からの優しさにジーンときた。

閉店時間を過ぎても、ベンチには人がいっぱいだった。たまたま集まった仲間でそろって夜ごはんに行くことになった。また別の友人の家に泊めていただけることにもなった。

完全アウェイだと思っていた場所が、自分の新たな居場所になった。
今日はどんなものを持ち帰ってもらえただろうか?僕はコーヒー淹れるので忙しかったけれど、ベンチで居合わせた人たちが仲良くなっていく様子を見ているのは、とっても心地よく心に染み込んでいく光景だった。

今日もありがとう。足を運んでくださったみなさんのおかげで素晴らしい1日と思い出が生まれました。場所の提供をくださったpatagoniaのみなさま、ありがとうございました。


patagonia渋谷店

吉本ばななさん

自分の人生を実験台にして生きているので、いただいたお金はさらなる人生の実験に使わせていただきます!