ゲーミング人魚らに

人魚姫は、新たなるコトを覚えた。人類がまた新しいコトをしている。人魚たちは寿命がなくて星と同じ時間をともにする、生贄のなれのはてであるから、暇つぶしを常に求めてウロウロしている。

「げーみんぐぴーしー」

「こんこん。魔女さん、魔女さん、我をげーみんぐぴーしーにしてみてくれ。あの七色に光るやつ、ウロコにつけてほしい。代償? わかった、では片目をあげる」

ゲーミング人魚姫、爆誕。

下半身のウロコが七色どころかオーロラに発光してキラキラきんらきんら、カラフルと言うには概念が古すぎる。

ピカッピカッピカー!!
しかも、グルグルグル、色は変わり続けるし強弱もある。月光でもこうはならない。悪夢のようだ、と、ある比較的におとなしい人魚が感想を漏らした。

ほかの人魚たちには、オオウケである。

ゲーミング人魚姫はぽこぽこ増えた。ゲームみたいにぽこぽこ増えて、片目はぽろぽろ落ちていく。海のなかはにわかに、いや確実に、騒々しくなった。
うるさい。色彩の暴力。目がうるせー!!

魔女は、ただ、山に積めるほど集まった人魚姫の目玉たちをビンに入れはしたが、戦々恐々としていた。

何年後か。もしかすると明日か。

人魚姫たちは、飽きっぽく、また皆とまったく同じになってしまうとその呆れ方は風よりも速い。つまらない、と、言い出すのだ。

こんなに目玉が集まってしまうともうダメだった。人魚姫たちはゲーミングに飽きたと代償を返し元に戻せと押しかけてくる。
あれらに良識や商売や平等などの言葉は存在しないのだ。永遠に生きるとは、そういうことだ。どうでもよいのである。すべてが。

だから、人魚姫たちは、目玉を返せ、もう、げーみんぐぴーしーは飽きた、そう言って魔女のもとに戻ってくる。
あとは、魔女が下手したら血祭りにあげられて、人魚姫たちはケラケラしながら魔女の死体を転がして遊んで魔女の舘を遠慮なく強盗してゆく。

人魚姫は至上の良客でありつつも、その無垢と無知と好奇心で最良の客でありつつ、強盗殺人犯盗み残酷無限に何度でも過ちを繰り返す、そうした客たちであった。

魔女は、眼球の瓶をにらみ、うめく。

「なんじゃ。そも、なんじゃよ。ゲーミングピーシーって……」

さるまねは得意だが、それに魅力を感じはしない、魔女さまである。
人魚姫とは、ちがう生き物だった。

ちなみに、もうすぐ死ぬ。殺される。ゲーミング人魚姫たちに。


END.

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