ロボットのはずがサイボーグに見えるターミネーターの謎

個人的・最近のSF三大イメージは、エイリアン、仮想現実、人工知能+ロボットである。SFを読み始めたのは高校生のころで、いわゆる御三家(クラーク、アシモフ、ハインライン)から入り、ディックへと進んだので、そのころは「宇宙」も入っていた。が、最近はあんまり宇宙ではないかも。どんなに突拍子もない世界を描くSFでも、そのSFがこの世に存在している以上、現実とは地続きで、現実には宇宙開発はかつてほど光り輝いていない。

で、ロボットである。たいていロボットは人工知能とセットだ。シンギュラリティという言葉が人口に膾炙する以前から、ロボットが人間より「頭が良くなり」人類に反旗を翻すかも、という恐怖はSFでずっと描かれてきた。それこそ『フランケンシュタイン』からずっと。造物主が被造物に凌駕される恐怖におびえることはフランケンシュタイン・コンプレックスと呼ばれている。文科省検定教科書で、人工知能やロボットの発展についての記述に、『ターミネーター』の映画の1コマが加えられているのを見たことがある。世間では「ロボットの反乱」の代名詞として『ターミネーター』が教科書レベルで流通している。

でも、『ターミネーター』を見ていると、ふとアーノルド・シュワルツェネッガー演じるT-800ターミネーターが、ロボットではなくサイボーグに見えてしまうことがある。もとは人間で、人間の精神・身体の一部を機械に置き換えられた改造人間、サイボーグとしてとらえてしまう。たびたび「いやいや人間じゃないし、暗殺ロボットじゃん」と言い聞かせないといけないほどだ。

ロボットとサイボーグの違いを確認しておくと。ロボットはゼロから作り上げた機械。ソフトウェアとハードウェアからなる。ソフトウェアは人工知能だ。ハードウェアは人型もあれば、産業用機械のものもある(楳図かずお『わたしは真悟』のモンロー!!)サイボーグは、人間の身体の一部を機械によって置き換えたもの。人間と機械のハイブリッドだ。だが、どの身体パーツを、どの程度、機械に置き換えたかは、千差万別。最近では、センサーがついて外部刺激を電気に変換し、接続した神経にフィードバックする義手義足なんてものも登場しているようだ。手術や埋め込みなど装着すると身体を傷つけるものを「侵襲的」、そうでないものを「非侵襲的」と区別すれば、眼鏡や差し歯は後者だが、脳にチップを埋め込むなんてものは侵襲的だ。ひろくサイボーグ技術をとらえると次の4つの象限にわけられる。

サイボーグ四象限

なんでターミネーターはサイボーグなのだろう? 彼ら暗殺マシーンは、近未来、人工知能の地球防衛システム・スカイネットが、人類こそが脅威であると断定し、人類殲滅を始めた。スカイネットは、自動化されたロボット工場で人間に似せた暗殺マシーンを製造しはじめる。人間に似せたのは、人間が潜む地下シェルターに潜入しやすいからだ。だからターミネーターたちは、machinesでありrobotsであるがcyborgとは言われない。でもやっぱり、私の目にはサイボーグに映っている。なぜだろう?

この謎をずっと考えていた。その他のサイボーグ小説を参考にしながら、実は《ターミネーター》シリーズは人間vsロボットという世間一般に流通する構図ではない構図がシリーズを面白くしているのではないか、と気が付いた。教科書にも出るぐらい象徴的な人間vsロボットの映画なのだが、この図式は表層的なものではないか? 

興味を持たれた方は、ぜひこの本をどうぞ。





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