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いつの間にか人生を破壊してしまっているキャリア選択

突き抜けられないまま若いうちに転職を繰り返す

人々の転職に対する抵抗感はここ10年ほどでかなり減った。私のように一企業で10年以上勤めている人間は珍しいぐらいだ。一方で、私より若いのに今が4社目です、という人もいる。

いくら転職が盛り上がっているとはいえ、30前後で4社目となると、業界に名が轟くぐらいの実績が出せていたり、相当に希少性の高いスキルを有していない限り今後の転職は厳しい。いわば「手持ちのカードを使い切った」状態だ。

転職を繰り返すと、若いうちに年収1000万の大台を突破する人もいる。ところが、その後ふと立ち止まって「自分が本当にやりたい仕事はこれじゃない」と思った時に、もう切れるカードがないのだ。

サラリーマンとして年収を急激に上げたいという動機で多くを占めるのは承認欲求&パートナー探しである。

ところが、年収を上げれば結婚も順風満帆などと言われたのは昭和の価値観であって、いくら仕事ができて収入があっても、異性からの関心を集める能力を持った人間でない限り、婚活では苦戦する世の中になってきている。(女性の中で男にビジュアルを求める傾向が強まっているのもこの風潮を裏付けている)

以前から女性は「仕事とモテが相関しない」と言われているが、男側もこの傾向がどんどん強まっているのだ。

転職は人脈などが全くない状態でのリスタートを意味するので、キャリアアップのためにはハードに働かないといけない。気がつくと仕事にステータスを全振りしすぎて他がお留守なんて状況になりかねない。最悪なのが健康を損ねて多くのリソースの注ぎ込んだ仕事すらもポシャってしまうケースだ。

残念ながら私の身の周りでもこのような「仕事・恋愛・健康が全方位的に詰んでいる」事例はチラホラと聞く。「社会的な転職煽り」の犠牲者といってよいのではないだろうか。

拘束時間の不規則さにより婚活がままならない人たち

最近、仕事の勤務時間帯が異なる人間と関係を深めることが極めて難しいことを実感した。結局のところ人間は会う頻度が保てないと関係性がどんどん希薄になってゆくのだ。

特に休日出勤や突発的な呼び出しが多い仕事は、定期的に会うという行為に相当な負荷がかかる。(必死に業務調整をしないと休日を死守できない)

そのため、「これだけ大変な思いをしながら仕事を調整して会うんだから、レベルの高い人じゃないと嫌」という心理が働く。マッチングアプリが男性にとって過酷なのは、休みが安定しないシステム、介護、保育、医療、美容師、飲食系など勤務の不規則な人が出会いを求めて利用するからではないかと私は睨んでいる。

私も仕事上関わりのあるIT分野の仕事について触れておこう。近年、IT関係のサービスは24時間稼働が当たり前のサービスが増えてきている。昔は深夜帯にシステムが止まっても、「最低限の対処をして、翌朝本格的に復旧」なんて手も打てたが、24時間稼働が前提となると「深夜であっても今すぐに直せ」と緊急度合いが一段階上がる。

トラブルが起きた時の対処はもちろんのこと、大規模サービスをリリースする際には、何か起きるかもしれないと緊張感を持って待機している状態(=精神的な拘束)が発生する。

海外人材を調達しているのであれば時差を踏まえて人をアサインする選択肢があるが、人材を国内だけで調達している会社は、必然的に生活リズムを犠牲にして張り付く人間が出てくる。

ここに二次請、三次請のITゼネコン構造が合わさるとさらに悲惨で、立場が弱いので精神的な拘束の多い低賃金な仕事を拒むことができない。自身が主導権を握って決められない状態は、人と定期的に会う困難さをさらに引き上げるのだ。

最近は少子化(=少母化)が叫ばれていて、主な原因は若年層の低賃金と見られているが、低賃金はこのように「精神的・時間的拘束の多さ」とセットになっているケースがよくある。

お金の面だけならパートナーと協力しあうこともできるが、「精神的・時間的拘束の多さ」はそのような相手と出会うためのコミュニケーションスキルを鍛える機会さえも奪ってしまうのだ。

こんな時の頼みの綱は職場恋愛だが、近年は職場結婚も減少傾向だ。これは私の推測だが、人手不足が深刻化する昨今、「新人配属は自分だけで、職場内には年の離れた先輩ばかり(少し上の先輩はみんな転職した)」のような状況が増えていることが原因の一つではないだろうか。

男女共に、年収とモテが相関しなくなってきた

今の中学生男子は脱毛しようかなぁなんて会話を同級生としてるんだって、と職場で話題になった。いやいや、君たちまだそれほど毛生えてないでしょと思わず突っ込みたくなったが、近年の男性の美意識向上は目覚ましいものがある。

近年は女性の「結婚に重視する要素」で「顔の良さ」が上位にランクインしているようだ。男性の美意識が上がっているのも、このような女性側の選別を意識してのものだろう。出会いは簡単に調達できるため、「年収はあくまで足切り基準であり、異性の関心を集める能力がない人間はやっぱりモテない」という傾向は強まる一方だ。

その影響もあってか、私の周りでは推定年収1000万超の40代独身男性をよく見るようになった。

いや、別に独身が人生の敗者というつもりはない。本人が満足しているのであれば何も問題ない。しかし、私の周りの高年収独身男性を見る限り、「こんなはずじゃなかった」感が滲み出している。

低年収で結婚できず、高収入でも結婚できないとなれば、少子化が進むのは当然だ。ワークとライフのバランスは残念ながら学校では教えてくれない。(そもそも先生自身が過酷な労働環境でバランスを崩している)

「納得のいく人生」は自分で守らないと誰も責任をとってはくれないのだ。

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