遺産分割における先人たちの知恵
身内の財産争いほど醜いものはない。なまじ血の繋がりがあるが故に対立が深刻化しやすく、家族の縁を切ることになるケースも珍しくない。
今回は私の見聞きした中で、財産争いの火種について考えてみたい。
対立を激しくする要素:共同名義の土地・建物
たとえ家族であっても、土地や建物の共同所有は避けた方が良い。処分をしようにも共同所有者からの了承が必要となると、一気に難易度が上がる。
不動産はタダでさえ売却が難しいのだから、権利関係者である家族内の調整で揉めたら売り時を逃してしまう。タイミングを逃すということは、売れる金額が下がるということだ。
身内で足を引っ張り合うことで取り分が減るのだから、それは揉めるはずである。
生前のうちに不動産を自分名義にしようと画策する人間もいるかもしれない。しかし、そのような動きがバレると、身内の対立構造はますます激しくなる。
対立を激しくする要素:親の世話への貢献度差
ここまで実入りの話をしたが、逆に不動産売却のための諸々の事務手続を誰が負担するのか、というコスト面の話もある。
親の介護と一緒で、物理的な空間に縛られるコストというのは、近くに住んでいる人間、移動時間を捻出できる人間が負担することが多いが、そこで蓄積された不満も相続の際には噴出する。
すなわち、「自分はこれだけ色々と負担したのだからもっと相続できていいはずだ」という意見である。
住む場所や仕事のスタイルは人それぞれ違うので、親の世話を全く同じレベルでやることはまず無理だ。
対立を激しくする要素:貧富の差
対立構造を激しくするもう一つの要素についても触れておこう。貧富の差である。
10代のうちの貧富の差と、60代の貧富の差でいうと、60代のほうがずっと大きくなる。なぜなら、50年近くの年月の積み重ねが顕在化してくるからだ。
資産が築けておらず、現役引退間近で新たな収入源もない人間にとって、相続というのは滅多にない逆転のチャンスである。その熱量のあまりの大きさに、他の人間たちは眉をひそめるのだ。
じゃあ、予防策は?
前述の通り、全員が同じ貢献度というのはまず無理だ。亡くなる瞬間にちょうど財産を使い切れていれば良いが、そんなに狙ったタイミングで亡くなる人はいないだろう。
となると、遺産分割割合を遺言で指定しておくしかない。
しかし、現実問題としてきちんと効力のある遺言を残そうと思ったら、それなりに手続きを踏まなければいけない。面倒に感じてここまでのことを生前にやる人間は多くない。
私有財産の処分に関する話なので、国が原則(法定割合)を定めることはできるが、他の選択肢を許容しないところまでは縛ることはできない。
結局のところ、個々人でできるのは権利関係を共同にしないことと、身内であっても経済面で依存しないようにすることだ。
ま、要するに頑張って稼げってことですね。
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