見出し画像

活気を保つために環境をほどよくかき混ぜる

同世代の人なら当てはまる人が結構いると思うが、私はカードゲームが好きだ。

遊戯王なんて私の青春ど真ん中のコンテンツだし、社会人になって少し財力が付いてからはマジック・ザ・ギャザリングにハマっていた時期もあった。

最近ではポケモンカードが大人気で、転売目的の人間が退去した押し寄せ、入手困難になったのはネットニュースにもなっていた。

しかし、私がこの記事で書きたいのは少年時代のノスタルジーではない。カードゲームの提供元が心血を注ぐ、「流行のサイクル」についてである。

流行のサイクルはどれぐらいが適正?

多くの人に遊ばれ続けるため、開発者が命懸けで考えた「人々を飽きさせないノウハウ」がそこには詰まっている。これはそのまま仕事のマンネリを防ぐ方法にも繋がるものだ。

マジック・ザ・ギャザリングは3ヶ月に一度のペースで新しいカードが発売する。一方、ポケモンカードは1ヶ月に1度のペースとなっている。

いずれも、新カードの発売とともに大会の優勝候補となるデッキ(トップメタと言われる)の顔ぶれが変わり、新しい環境となる。

最近のポケモンカードの隆盛を見ると、どうやら人々の飽きるサイクルが早まっているように感じる。

1月ごとに変更し、なじませる期間が3週間ほど。その後は次回の変更点の告知が行われ、新環境を意識しながら残りの1週間を過ごす。

このサイクルはそのまま組織運営にも適用できそうだ。

逆に変化の間隔が1ヶ月を切ると、身軽な個人であれば対応可能かもしれないが、人数の大きい組織だと消化不良のまま次に行く可能性が高い。

組織運営上、あえて流行から半歩遅れる決断が必要な場面もある。(裏を返すと個人事業主やベンチャーの活路はこのタイムラグになる)

事後的な訂正可能性について

新カードの発売により定期的に発生するのが、禁止カードである。強すぎるカードが発売されてしまい、大会の上位が特定のデッキで埋め尽くされる。

同じデッキ同士のいわゆるミラー対決は、「運ゲー」「先行ゲー」など、実力以外の要素が強まってゲームの魅力が失われる。

そこでやむを得ず運営は禁止カードの指定によりこれを是正するのだが、購入したカードが即座に使用禁止になると、当然お金を出して買ったプレイヤーからは文句が出る。

最近は禁止カードが以前よりも頻繁に出るようなっている。オンライン完結型のカードゲームであれば、ナーフといって性能を弱くした文書に書き換えられるのだが、一度発行されたカードにはこの手法がとれない。

必然的に禁止や枚数制限などで対処するしかなくなる。なお、オンラインカードゲームだと、禁止になったカードを同レアリティの別カードと交換可能とするような補填もできる。デジタル空間は急な変更と相性が良いのだ。

歴史あるゲームはカードの種類が増え続けているし、必然的に強さもインフレしてゆく(弱い新規カードは誰も買わないため)。

そのような状況の中で「デッキの強さ」という目に見えないものを適正な水準に収めることは、人間の認知能力では限界に達しており、事後的な訂正に頼らざるを得なくなっているんだろうなと思った。

ビジネスの現場でも事後的な訂正可能性にどんどん比重が移ってきていると感じる。開発現場でアジャイルの手法がもてはやされるのもその表れだ。

デジタルサービスに慣れ親しんだZ世代が消費の主流を担ってゆく時代、紙のカードは過去の遺物になってゆくかもしれない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?