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摂食障害を克服しても、家族に対する複雑な気持ちは残ることもある

私は、摂食障害は家族の問題だと思っています。

家族の中で一番優しく、弱い立場の人が摂食障害になることで、初めて「家族の居心地の悪さに向きあう」という場面に何度も立ち会ってきました。

そして、それはかつて摂食障害を10年経験した私にも言えることです。

私は16歳で摂食障害になって、自分の家族が「居心地の悪いものであった」という自覚をしました。
それまでは、自分は何不自由なく育ててもらい、親に感謝すらしなければならないと思って生きてきました。

でも、蓋を開けてみると、感情表現が苦手な父親、癇癪持ちの母親、妹をコントロールしたがる姉など、私にとってストレスになる要因がありました。
私は友達を制限され、自由がないように感じていました。
でも、これは私以外の家族が意図的にやったのではなく、私が勝手にそうした方がいいと思っていろんなことを我慢してきました。

私自身が器用に生きたり、他の世界を知る努力をしたり、自己表現の方法を工夫する努力をしたら、きっと摂食障害になる必要はありませんでした。しかし、私は痩せることでしか、自分のSOSを表現することができませんでした。

だから、摂食障害回復の過程で、嫌でも家族に対して我慢していた気持ちに向き合う必要がありました。
親に今まで言えなかったことを、ものすごい口調で伝えることがなん度もありました。本当に苦しかったし、家族も苦しかったと思います。

その過程で、母と姉は変わりました。しかし、父親は何を考えているかわからないので、変わったとも思いませんでした。そして、私は父親が変わることを期待するのをやめました。

そして、私は26歳の頃、症状がゼロになりました。
家族関係も自分の中で消化でき、適切な距離感をつかむことができるようになり、乗り越えられたと思っていました。

今は離れて暮らすようになって8年ほど経ち、表面上は、今でもいい関係を保てていると思っています。
しかし、自分が親になり、孫の写真を見せたり、色々と連絡をとるうちに「家族に対する嫌な感覚」がここ1年ほどの間にぶり返し始めました。

過去に嫌だったことを思い出して涙が出たり
父親から連絡が入ると嫌な気持ちになったり
かといって、親にそっけない対応をしてしまうと罪悪感を感じました。

ただ、摂食障害の頃と違うのはそのような感情になっても、食事が大きく乱れることはないことです。

そう思うと、私は摂食障害の症状に頼らずに生きられるようになっているので、完全に克服したのだと思います。

ただ、家族関係は完全には乗り越えられていないようにも感じています。


私の経験から言えるのは、家族関係は完璧に乗り越えたり、気持ちの折り合いをつけなくても、「ある地点で妥協し、ストレスに感じない距離感をつかむことができれば、摂食障害は克服できる」ということ。

しかし、摂食障害が治っても、家族の関係を完全に乗り越えることもまた難しいということ。

私自身、まだまだ悩みます。
ただ、これって普通の人も同じだと思うんですよね。

私はカウンセリングをする上で、いろんなご家族とお話しさせていただきます。そして、プライベートでもいろんな家族と接する機会があります。

そこで思うのは、何もない家族はいません。皆さん何かしら抱えながら、日々向き合ったり、やり過ごしながら生きています。

だから、クリーンな状態の家族を目指すことの方が無理があると感じています。

今回、ここで何が言いたいかというと「家族関係に高い理想を求めなくていいこと。そして、家族の問題を完全に乗り越える必要もない。しかし、適切な距離感で、お互いがお互いの生き方を邪魔せず応援できる関係を目指すこと」が健全なのではないかと感じています。


私自身も今でも自分の家族と向き合っているし、カウンセリングでもいろんな家族に関わらせていただいています。

私は職業柄、家族関係を見直す方法はたくさん知っています。そして、家族関係をいい形に持っていくこともスキルとしてはできます。

ただ、その法則だけではうまくいかないことも多いから、みなさんも、私自身も悩みが尽きないのだと思っています。

だから、私はこの着地しない気持ちたちを言語化し、少しでも皆さんのヒントになればいいな〜と思いながら、これからも日々感じたことを言葉にしていきたいです。

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