闘魂集団

『その出版社、凶暴につき』書籍化前の「本の雑誌」緊急新連載のお知らせ

2019年、「令和」という時代がはじまった、初めての暑い夏の盛りだった。外では日差しがまだジリジリと肌を刺す午後四時過ぎ。場所は神保町の本の雑誌社オフィス。会議用のテーブルにいたのは「本の雑誌」熱い編集発行人の浜本茂さん、炎の営業部長・杉江由次さん。そして不肖私、という三人のおっさんだ。
浜本さんとはお互い若かった80年代後半以来の久しぶりすぎる再会、杉江さんはネットでやりとりはしていたものの、これが初対面だった。昔話と業界周辺話、「本の雑誌」話、共通して知る元情報センター社員の話でひとしきり盛り上がったあと、杉江さんが切り出した。

杉江「これ(「その出版社、凶暴につき」)、『本の雑誌』で連載しちゃいましょうよ」「ね、いいですよね」と浜本さんに振る。
浜本「おぅ。いいよいいよ。それがいいんじゃない」
「えっ。マジですか? それはもう、ぜひぜひお願いします!!」

その時点で、お二人は、私が書籍化用に大幅に書き直した新しいバージョンの長編仕様「その出版社、凶暴につき」の原稿は読んでいなかった(この顔合わせのあとにpdfファイルをまとめてお送りしたのだ)。にもかからず、noteの連載に目を通していてくれた二人は、迷うことなく書籍化の出版に加え、「本の雑誌」での連載まで決めてくれた。即断即決。熱い。熱すぎる。なんという気持ちのいい展開。なんだか狐につままれたようだった。しかも、WEB本の雑誌での連載だとばかり思っていたら、紙の〝本誌〟での連載だという。一月遅れくらいで、それをWEBでも公開していけばいいのではないかと。グレート! 素晴らしい! カンペキすぎる! 思わず、出されたままになっていたアイスコーヒーに手をのばし、ゴクリと一口飲んで自分を落ち着かせた。

杉江「やっぱりこの本は本誌の読者にまず知ってもらいたいんですよ」

確かに、それがいちばんコアな読者なるのだろう。なにしろ、椎名誠さんの名作『哀愁の町に霧が降るのだ』でそのキャラクターが業界に嵐を巻き起こした、豪腕・豪快ワニ眼の編集長=「A出版社の男」こと星山佳須也氏をめぐる〝出版魂〟の物語なのだ。椎名さんのデビュー作にしてベストセラー『さらば国分寺書店のオババ』(センチュリー・プレス)を手がけた伝説的人物であることは言うまでもない(ちなみに星山さんが情報センター出版局とのちに興した三五館において、現場で手がけた書籍はナント1000冊を超える! 1000冊っていったら、編集者からするとちょっと想像できない点数なのですよ、いやマジで)。椎名誠さん目黒考二さん沢野ひとしさん木村晋介さんの四人によってつくられた、本読みの「砦」のような雑誌で、時代を超えて、比類なき出版人=星山さんをめぐる話を書けるというのは、運命的というか僥倖というかなんというか、とにかく激しく興奮してしまうことなのであります。

というわけで、来年初頭、2020年1月8日搬入の「本の雑誌」2月号から、まるっきりガラリと改稿した長編物語としての「その出版社、凶暴につき」の新連載がはじまります。連載は書籍刊行直前の時期まで続く予定です。書籍化版の原稿をほぼそのまま掲載していくものとお考えください。
なんで大分時間のたったこの時期の報告になったかと言うと、正直自分でも半信半疑だったのです。いやホント。で、連載第一回のゲラが出て、著者訂正を入れてゲラを戻したというタイミング、それがまさに〝いま〟なのでした。このぶんだと、どうやら本当に連載がはじまります! はじまります!(二回言いました) 自分で言うのもアレなのですが、noteで公開しているものとはそのストーリー性に雲泥の差(当社比)があります。乞うご期待!

古き良き時代のノンフィクション書籍編集者、こと
田代 靖久

※写真は1985年当時書店向けノベルティグッズとしてつくられたエプロン。



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