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ロマンスはカイロにて

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大学3回生の冬休み。寒さの厳しいアレクサンドリアを脱して、暖かなダハブへの逃避行をした。そこでの出会いと束の間の日常を描く。
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連載『ロマンスはカイロにて』 #5 全長たった4キロの街

連載『ロマンスはカイロにて』 #5 全長たった4キロの街

大学3回生の冬休み。寒さの厳しいアレクサンドリアを脱して、「恋するダハブ」という異名があるリゾート地に逃避行した。そこでの出会いと束の間の日常を描く。 #1はこちら

私たちは宿に戻った。ムハンマドさんは屋上で本を読むらしい。私は街を歩くことにした。ダハブという街は狭い。レストランと宿しかないと言っても過言ではない。街の全長は四キロ程度なので、2時間もあれば徒歩でも大抵の場所は見て回ることができる

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連載『ロマンスはカイロにて』 #4 「写真家」ムハンマドさん

連載『ロマンスはカイロにて』 #4 「写真家」ムハンマドさん

大学3回生の冬休み。寒さの厳しいアレクサンドリアを脱して、「恋するダハブ」という異名があるリゾート地に逃避行した。そこでの出会いと束の間の日常を描く。 #1はこちら

店は歩いてすぐの通りにあった。店の入り口には壁やドアはなく開放的な作りとなっており、奥にキッチンと料理がビュフェのように並んでいる。注文をするとそこから手早くサンドイッチを作ってくれる。路上にテーブルや椅子がいくつか置いてあり、そこ

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連載『ロマンスはカイロにて』 #3 どうせなら、可愛い女の子と出会いたかった。

連載『ロマンスはカイロにて』 #3 どうせなら、可愛い女の子と出会いたかった。

大学3回生の冬休み。寒さの厳しいアレクサンドリアを脱して、「恋するダハブ」という異名があるリゾート地に逃避行した。そこでの出会いと束の間の日常を描く。 #1はこちら

十数時間にも及ぶバス移動の末、ついにダハブに到着した。バスから降り、思いっきり体を伸ばしていると、いつものようにタクシー運転手による攻撃が始まる。餌に群がる池の鯉のようにタクシーの運転手は観光客に営業をかける。

「ユー・ニード・タ

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連載『ロマンスはカイロにて』 #2 夜行バスに揺られて

連載『ロマンスはカイロにて』 #2 夜行バスに揺られて

大学3回生の冬休み。寒さの厳しいアレクサンドリアを脱して、暖かなダハブへの逃避行をした。そこでの出会いと束の間の日常を描く。 #1はこちら

ダハブへの道のりは長かった。夜行列車でアレクサンドリアからカイロを経由し、シナイ半島に入る頃には5時間が経過していた。バスの中は冬だというのに冷房が効いており、眠ることが困難だった。それでもラジオを聴きながらうとうとしていると叩き起こされた。午前3時ごろの話

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連載『ロマンスはカイロにて』 #1 ダハブへの逃避行

連載『ロマンスはカイロにて』 #1 ダハブへの逃避行

大学3回生の冬休み。寒さの厳しいアレクサンドリアを脱して、「恋するダハブ」という異名があるリゾート地に逃避行した。そこでの出会いと束の間の日常を描く。

アレクサンドリアを出発した私は、バスに揺られていた。窓にはひたすら夜の荒野が写っている。オフシーズンだからかガラガラなバスの車内は、冬だというのにガンガン冷房がかかっており、とても眠れるような状況ではなかった。私はリュックからコートを引っ張り出し

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