見知らぬ知り合いの彼女のこと
仕事帰りの少し混み合った電車の中で、すぐ私の隣に、ストレートヘアーのきれいな女性が立っていた。そばに連れの男性もいるみたいで、今時の若いカップルだった。
その女性から、とても素敵な香りがしていた。
まるで真新しい石鹸の包み紙を、そっと開いた時のように。私のそばに咲いた花は、彼とのお喋りに夢中だった。香りは時として記憶のカギを、そっと開けてしまうことがある。すべて忘れたはずなのに、私の心はふいに立ち止まり、あの想い出へと振り返ってゆく。
遠いあの頃、あの彼女も確かこんな香