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栗おはぎと十三夜

ここ数日で朝晩がすっかり涼しくなり、装いも秋のものを選ぶようになった。おとついは秋になったら履こうと出待ちしていたブーツをおろした。

良い感じの弾力あるしなやかな皮が歩く足に遅れて付いてきていて、まだ馴染んでいないところが正直すこし疲れるけれど新鮮で心地がいい。きっとこの先この靴とは長い付き合いになりそうだ。未来を予感させる靴と出会えたことで自然と心がはずむ。

秋。秋のファッションもときめくがなんといっても秋は食。秋は美味しいものが多い。
先日食べたぎんなん餅ですっかり秋のスイッチがはいったわたしは、もっと季節を感じるお菓子を求めて新しい靴を履いて日比谷へ出かける。

目当ては日比谷ミッドタウンがオープンしてから通る度にチェックするようにしている「鈴懸」。

可愛らしい鈴の最中やどら焼きなどの定番品から月替わりの美しい生菓子がディスプレイされているショーケースはいつ見ても胸が高鳴る。

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お店にはいってファーストルックで射抜かれたのが、見た目も商品名も美しい「紫水」。

あんこと福岡産のイチジクにつやつやな白玉の白がまぶしい。なかはやさしい甘さの豆乳寒天。こちらは9/13~10月中旬まで日比谷限定で購入できるもの。限定感とキレイなイチジクに完全にやられてお持ち帰り。


鈴懸のWebサイトには各月の商品の説明のほかに、和菓子と歳時記をテーマにしたコラムのページがある。季節の移ろいを食材や技法で表現する和菓子と四季の事物は切っても切り離せない関係だ。

好きだけど、知らないことの多い和菓子ビギナーのわたしとしては好きなブランドから世界観と共に四季と和菓子のことを教えてくれるコンテンツはとても嬉しい。

そのなかで、十五夜に並ぶほど美しいとされる十三夜とお月見の作法ついて書かれている記事がある。

一方、十五夜のひと月後に訪れる十三夜の月を「栗名月」と呼び、実はこの十三夜こそが古き日本の観月の祭だったことをご存知でしょうか?この十五夜と十三夜は一対をなし、二つの月は同じ場所で観るものとされ、どちらか片方しか観なかったり別の場所で観ることは「片見月」と呼ばれ嫌われてきました。

(出典:鈴懸HP)    


十五夜は知っていても十三夜や片見月のことは知らない人が多い。十五夜は中国から渡ってきた風習だけれど十三夜は日本独自で生まれた習わしだそうだ。諸説はいろいろあるが花街から生まれた説が有力らしい。

お月見をした一ヵ月後に同じ場所で(同じひとと)お月見をする、という無言の約束ができるというのは花街らしい、といえばらしい。慌ただしく時間が流れ、空を見上げる機会も少ない現代でも、この十五夜と十三夜には月を眺めながら移りゆく季節とゆっくりと流れる時間を楽しみたいと思う。


鈴懸ではうさぎの形の「お月見うさぎ」や「お月見だんご」というお月見にうってつけな生菓子もあるが、先日の十五夜でわたしがチョイスしたのは絶対的なフォルムの栗おはぎ。

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なめらかな食感のもち米にごろりとした栗とほどよい甘さのあんこが絶妙。甘いのに甘すぎない、ぱくぱくと手が進み、あっという間にお皿から姿が消えてしまう魔法のようなおはぎ。意外とお酒ともいけそう。

今年の十三夜は10月11日。

これからのお月見は「片見月」を言い訳に9月と10月、二回することに決めた。
鈴懸のおはぎを買う口実ができた。


【このお菓子をもっとおいしく食べるなら】
鈴懸のおはぎは本当に美味しいので台所でこっそりとひとりで食べるのが背徳感もあり、美味しさ増し増しなのでおすすめ。



*twitterでもお菓子についてつぶやいています



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