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短編小説『その日は、今日だった』

「先生、息子は無事なんでしょうか?」
「……」
 その医師は眉間にしわを寄せ、口を一文字に結んだ。その口に小さな穴が空いて、ふーっと息が漏れた。
「命に別状はないでしょう。ただ……」
 再び口を閉じ、俯いて目を閉じた。顔の上半分が影になって表情はよく見えない。
「ご子息は、ゴリラです」

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