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「21世紀のシンガー・ソングライター・アルバム・ベスト 100」のための柳樂光隆の30選

『ミュージックマガジン』誌の特集

<2020年代への視点 21世紀のシンガー・ソングライター・アルバム・ベスト 100>

に掲載したベスト30をここにも転載しておきます。

企画の趣旨はこんな感じだそうです。

ギターやピアノを弾き語り、自身の内面や社会を歌ってきたシンガー・ソングライター。名作が多く生まれた70年代から現在までそのスタイルは不変ですが、一方で、機材やテクノロジーの発達に伴う制作環境の変化、ラップやオートチューンといった現代的な表現方法により、新たなシンガー・ソングライター像が誕生してもいます。今回はそうした動きが顕著になった21世紀以降の、海外の作品に限定。37人の選者が1位から30位まで順位づけしたものを編集部で集計しました。(ミュージック・マガジン 2019年6月号)

2020年代への視点ということだったので個人的には

①リリース時にインパクトがあったもの
②2010年代にジャンルを超えて影響を与えているもの
③これから更に評価が進みそうなもの
④今の耳で聴いてもダサくないもの

といったあたりを意識して考えてみました。

基本的には影響力が大きいシンガー・ソング・ライターの代表作的なアルバムを並べたつもりで、僕のはあまり面白みはないです。

本誌を見て、そうか、ボン・イヴェールとか、エイミー・ワインハウス、キング・クルール、ソランジュもその枠なのかとも思ったり。企画の線引きがあいまいなので、ライター個人個人の解釈の違いが面白いですね。

ソランジュ『When I get Home』とサン・キル・ムーン『Bneji』とホセ・ゴンザレス『Veneer』とか音楽的にも共通点ありそうで、並べて語ったら面白そうかも、とか。

僕はジャズ評論家なので、ジャズを中心に聴いていて、ジャズミュージシャンによく取材していますが、その中で影響源として語られたアーティストが上位に並びました。

ジェイムス・ブレイクフランク・オーシャンスフィアン・スティーブンスホセ・ゴンザレスに関しては、ジャズ云々の次元ではないのは言うまでもないですが、影響力は絶大です。ジェイムス・ブレイクに関してはミュージックマガジンに長めのレビューが載っているので、そちらもぜひ。

その中で意外に出てくるのが、イモジェン・ヒープ。現代ジャズを追っている方だと、テイラー・アイグスティの傑作『Daylight Midnight』ベッカ・スティーブンスがフィーチャーされた「Little bird」のカヴァーが収録されていたのが記憶にある方もいるかもしれません。

イモジェン・ヒープと言えば、多重録音やハーモナイザーなど、ヴォーカル・エフェクトを使った楽曲も素晴らしいし、単純に楽曲も素晴らしくて、ジャズ・ミュージシャンもそうだし、ベッカ・スティーブンスのようなタイプのシンガー・ソング・ライター的なジャズ・ボーカリストから見ても魅力的な楽曲が多いように思います。ジェイムス・ブレイク~ボン・イヴェール~モーゼス・サムニーやジェイコブ・コリアーあたりとも接点があるかと。

アリアナ・グランデがイモジェン・ヒープに言及していて、というか、アリアナのアイドルらしくて、イモジェン・ヒープでググるとアリアナの動画やエピソードがたくさん出てくるんですけど、これからもそういうのは増えて、更に評価が進む人なんじゃないかなと。


ホセ・ゴンザレスに関しては、プログラミングで作られた楽曲をギターのひいき語りのフォーマットに置き替えて歌うという特異なスタイルの影響は大きいかなと。特にホセ・ジェイムスは彼の影響をかなり受けたのではないだろうか、と。デビュー作にあったあのヒリヒリした情感はジェイムス・ブレイクあたりと地続きなのかも、とも思います。

ジェイコブ・コリアーネイ・パームモーゼス・サムニーベッカ・スティーブンスクリス・シールはこれからを担う枠であり、これからを予見しているかも枠ですね。そこにローラ・マヴーラベニー・シングスデヴィッド・クロスビーあたりはライブ・ミュージシャン的なパフォーマンス力が高い人たちを入れると、見えてくるものがある気がします。中でも最近、スナーキー・パピー周辺でも再評価されていて、アラン・ハンプトンとのコラボもしているアンドリュー・バードはライブ型の筆頭かなと。今年、ライブを観たけど、レベル高すぎでした。

これからを予見する枠で今、素晴らしいクオリティの作品をリリースしているのが、ガブリエル・カハネ。クラシック的な素養がある彼はインディークラシックとインディーロックを繋ぐ作編曲ができるという意味でスフィアン・スティーブンスの延長とも言えますが、クラシックやジャズへの精通具合を考えると完全な新世代と言ったほうがいいかと。

ノンサッチからアルバムをリリースしていて、ブラッド・メルドー『Finding Gabriel』にベッカ・スティーブンスらとともにヴォーカリストとして起用されたり、すでにブレイク間近といった感じ。これまでにクリス・シールイーファ・オドノバンブルックリン・ライダーナディア・シロタあたりとのコラボもあり、まさにインディーロックやクラシックを双方にかかわる才能として必聴かと思います。次点に入れたフィネガン・シャナハンも同じ枠で要注目ですかね。

あと、個人的にはサヴァス&サヴァラスはけっこう重要な気もしていて、プレフューズ73でエレクトロニカやヒップホップを横断していた奇才だったスコット・ヘレンが、エレクトロニカ的な要素満載のシンガー・ソング・ライター的な歌ものをやったというのはインパクトがあったかと。その後、サヴァス&サヴァラスは自分の父方のルーツでもあるスペインに移住して、スペイン語で歌うようになるんだけど、そしたらスピネッタみたいなサイケデリックなロックになってしまったりで、その辺の経緯も含めて面白かったです。『Golden Pollen』はトロピカリアにハマったデヴェンドラ・バンハートと並べて聴きたい。

完全な個人的趣味で言うと、リッキー・リー・ジョーンズのこれが最高なので、こちらもぜひ。サウンドも意外と古びない上に当時ブッシュを皮肉ったオープニングの「Ugly Man」が今のアメリカにもぴったりです。

以下、柳樂の30枚+次点です。

1 James Blake / James Blake
2 Frank Ocean / Channel Orange
3 Imogen Heap / Speak for Yourself
4 Jacob Collier / Djesse Vol.1
5 Sufjan Stevens / Carrie & Lowell
6 Norah Jones / Come Away With Me
7 Jose Gonzalez / Veneer
8 Nai Palm / Needle Paw
9 Beck / Sea Change
10 Mac DeMarco / Salad Days

11 Laura Mvula / Sing To the Moon
12 Sun Kill Moon / Benji
13 Benny Sings / I Love You
14 Gabriel Kahane / The Ambassador
15 Moses Sumney / Aromanticism
16 Vashti Bunyan / Lookatftering
17 David Crosby / Here If You Listen
18 Chris Thile / Thanks for Listening
19 Sam Smith / In The Lonely Hour
20 Andrew Bird / Mysterious Production of Eggs

21 Becca Stevens / Regina
22 Owen Pallett / Heartland
23 Rufus Wainwright / Poses
24 Mitski / Be the Cowboy
25 Feist / The Reminder
26 Sam Amidon / Bright Sunny South
27 Savath & Savalas / Apropa't
28 Devendra Banhart / Cripple Crow
29 Kacey Musgraves / Golden Hour
30 Jack Johnson / Brushfire Fairytales

■次点(個人的な好みなものも含めて)

・Alan Hampton / Origami For The Fire
・Antony and The Johnson / I am a Bird Now
・Aoife O'donovan / Fossile
・Finnegan Shanahan / The Two Halves 
・Laura Marling / Once I was an Eagle
・Lianne La Havas / Blood
・Meshell Ndegeochello / Davil's Halo
・Michael Kiwanuka / Home Again
・Michelle Willis / See Us Through
・Panda Bear / Young Prayer
・Rickie Lee Jones / The Evening Of My Best Day
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柳樂光隆

79年、島根・出雲生まれ。音楽評論家。『MILES:Reimagined』、21世紀以降のジャズをまとめた世界初のジャズ本「Jazz The New Chapter」シリーズ監修者。共著に後藤雅洋、村井康司との鼎談集『100年のジャズを聴く』など

柳樂光隆の音楽評論

柳樂光隆が書いた音楽に関する論考的なものを中心に。ここだけに公開するインタビューもあります。
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