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帰りの会

帰りの会。古い世代にはもうこの言葉だけで怖い思い出がよみがえる人は多いんじゃないでしょうか。わたしもです。

2年生で初めて「転校生」になった。初日、母がなぜか張り切ってワンピースとストラップシューズを履かせたのはよくなかったと思う。珍しい転校生にちゃきちゃき親切にしてくれる子もいたが、気に入らないぜって目で見てくる子もいた。でも、わたしは本があればハッピーだったので、ひとりは気にならなかった。休み時間に絵を描いていると、話しかけてくる子が何人かいて、友だちは少しずつ増えた。

「1年早生まれ組」にはなかった帰りの会がこのクラスにはあった。日直が前に出て「何かありますか」と言うと、いいことが取り上げられることもあったが、たいてい何か悪いことをした子が糾弾されて「反省してください」と言われる。この土地の「はんせーしてください」のイントネーションがきつくて、嫌だなと思った。

転校してきて1週間ぐらいたった帰りの会で「毛糸ちゃんが大人みたいに脚を組んで座っていました。悪いと思います。はんせーしてください」とゆかちゃんが言った。当然わたしは脚を組むことの何が悪いのかわからないと反論をしたが、ゆかちゃんはわっと泣くことで反撃してきた。(転校生が泣かせた...)という目がわたしに集まった。

この後、酷いいじめが始まった…ということには幸いにもならずに、なぜかゆかちゃんとはクラスでいちばん仲良くなった。いったん殴り合った方が仲良くなれる、という少年漫画的な世界が昔は本当にあったのかもしれない。

自分の子どもが日本の小学校に通った時に、帰りの会を廊下から見る機会があったが、それは「お互いのいいところを言いあおう」的な活動で、わたしの知っている帰りの会とは全然違っていた。いい時代になったなあ。

転校のいちにちめに履くエナメルの黒靴 かあさん 武装はいやだ


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