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【日本美術でChillする】♯1 国宝 「那智瀧図」

「那智瀧図」

山を分け入った先に現れたのは、見上げるような巨大な瀧。
 ここは熊野の聖地、那智の御瀧。
 信仰を持たざる者でも、その神々しさには心を打たれる。
聞こえるだろうか?岩をうつ水の音が。
感じるだろうか?肌をしめらす水のしぶきが。
それは不思議と、心を静かに落ち着かせる。


画面の下には、那智大社の社殿や、卒塔婆が描かれる。この那智御瀧は、那智大社の御神体。カミそのものとして崇められてきた。

縦長の画面を活かした大胆な構図が目を引くが、細部に注目すると、緻密な描写も見応えがある。水流が手前に流れ込む表現も、実に巧みだ。

画面の上部に見えるのは、月輪(がちりん)。ここに描かれているのは夜の情景だと推測される。霊場をあらわす絵画には、しばしば天体が描かれる。宇宙の中心として演出するためだ。

那智御瀧(なちのおんたき)
熊野那智大社の御神体。和歌山県東牟婁郡那智勝浦町に位置し、ユネスコの世界遺産『紀伊山地の霊場と参詣道』を構成する。133mもの落差を誇利、日本三名瀑にも数えられる。古より信仰を集めた。

垂迹美術(すいじゃくびじゅつ)
「神々は仏教尊格の仮のすがたである」とする、本地垂迹説に基づいた美術作品の総称。「那智瀧図」も垂迹美術であり、神道の御神体である滝を、仏教的な「参詣曼荼羅」として描いたもの。なお垂迹説や垂迹美術は、インドから我が国に至るまでの各地方に見られる。

国宝「那智瀧図」なちのたきず
筆者不詳 1幅
絹本著色 160.7×58.8㎝
 鎌倉時代 13~14世紀 東京・根津美術館所蔵


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