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UKドリームと愛のリレー

多くの外国人が、イギリスでの発展して豊かな生活を求めていわゆる「移民」としてイギリスで暮らしている。イギリスには、2億8千万人の移民が暮らしていると言われている。

ここカンタベリーで暮らしていても、国際色の豊かさは自分の存在すら違和感なく感じられる。

いま、まさに私はFriends Internationalで「外国人」と接する第一線で働いているので、それはそれは多くの移民と交流してきた。

イランからボートで(違法で)イギリスにたどり着い40代男性(友達だが、名前は伏せておく)。
その人はボートから下されるとどこかわからないところで、山の中を彷徨い歩き、自分から警察に届け出を出したそうだ。すると警察は紅茶を出してとてもよくしてくれたそうだ。地方政府は対応に追われ、なぜかロンドンの5つ星のホテルで1ヶ月待機。2年経ったいまでは私たちの団体のためにボランティアとして働いている。彼曰く、同じボートで来た人はみんな警察に行かず逃げて、でもいまステータスがないから、隠れて働くことしかできないんだ、という。彼は警察に届け出を出して、法的手続きを得て難民申請をして、2年足らずでイギリスの永住権を手にしている。

ロシア人の留学生で修士課程のためにイギリスに来ていた時に戦争が勃発。帰国すると兵隊になるので、拒否するためにイギリスに滞在している。彼もまた、難民申請しているが、手続きはまだ途中。彼自身は弁護士。しかし、イギリスで最初の仕事を得るのは本当に難しい。彼も弁護士だが、どれだけ申請しても雇われるのは介護ケアの仕事のみだった。そう、イギリスでは介護ケアの仕事が不足しており、多くの外国人労働者がビザも支給されるということで、働いている。彼は1年以上ケアの仕事とレストランでのアルバイトを掛け持ちして生計を立てている。

そう、イギリスは「綺麗」で「美しい」イメージが強いが、暮らしていくのと、観光もしくはテレビで見るのは大きく異なり、ディズニーランドの中にいるような物価は現地の人たちも私たち外国人も驚かされる。家賃は安くて一部屋月500ポンド(9万5千円ほど、2024年2月現在)。かといってこれは最低限の部屋であり、狭い上に、電気、ガス、水道も別で50−100ポンドほど月に払わなければならない。

UKドリームを持って来た移民たち。しかし現実は、トイレットペーパー6個入り1600円、卵12個入り600円の物価高であり、月10万の家賃高であり、牛乳などの乳製品やパン(主食)は比較的安いものの、その他は日本の約2倍、常にディズニーランドの中にいるような国なのであった。

私は、在住して2年目となり、ありがたくオンラインのお仕事をさせていただいている上、住む場所をボランティア団体から無償で提供頂いているので生活は苦しくなく、もう円換算せずにポンドを意識して生活するようになったが(いちいち計算していると、何も買えなくなる)、ロンドンにいた頃はボランティアだけで生活しており、交通費も高いため、お金のことは気にしなければならなかった。

さて、今日は私の親友Jemiインド人家族の家に会いに行った。私がカンタベリーに最初に来た時、二軒の家でホームステイをしたのだが、Jemiはその二軒目で、10日ほど滞在させていただいた。インド人クリスチャン家族。祈りに溢れていた。

Jemiの旦那さんはカンタベリーの大学でビジネスの修士を取って、現在は卒業ビザでイギリスに滞在している。そう、イギリスで終始以上の学位をとると、2年間イギリスで働くことのできるGraduate Visaというのを取得することができる。夫婦は二人の元気なお子さんがいて、現地の幼稚園と小学校に通っている。4歳の弟君は私が夏にホームステイしたときはまだ英語が話せなかったのに、今回遊びに行くと英語で少し話して来た。7歳の長男はイギリスのアクセントまで付けて(本人は無意識だが)話して来る。子どもの言語を学ぶスピードとスポンジみたいな吸収力に驚いた。この4歳の弟君もあと数年でぺらぺらと話すようになるのだろう。

さて、こちらのインドから来たご家族も、夢を抱いてこられた。

そう、イギリスは人権意識が高く、礼儀正しい、ときどき「っへ」と思う場面でスーツとか着てきたりして「誇り高き?」魅力的な国である。

一方で、上記に述べた通り、現実的にお金もかかる国。GPというホームドクターに登録して、医療費はタダだが、並ぶ人が多く、治療の番が来る前にもう風邪が治っているという話をよく聞く。(本当のろころどうかわからないが。)大人の歯医者はプライベートなので高い。子供は無料。

しかし稼げる国でもある。最低賃金が1時間
£10.42なので、1,992円である。
物価も日本の2倍だが、2倍の給料ということか。

カンタベリーからロンドンまでの列車は片道15ポンド。直前に買うと2倍以上。オンラインで買うと安いが、窓口で買うと2倍以上という謎のトリック。

他にも、住んでみなければ分からないことがいっぱいある。

私は今でこそ、神様の導きと哀れみを頂いたが、最初は何も知らずに、計画なしにこちらにきた。そんな人がどれほどいらっしゃるのか分からない。

一方で、このインド人家族のように、インドでの生活に訣別し、新天地での新しい家族で一からの生活を始めた家族もいる。もちろんだれも知っている人がいない中で生活を立ち上げていくのは、本当に本当に大変なこと。

私も、苦労した。しかしこちらのインド人のお父さんは家族を支えなければならないという思いがあるから、プレッシャーはさぞ大きいだろうと思う。そしてその顔はやつれて、暗くなっていたのに今夜気づいた。

私は、ご家族と一緒に夕食を頂いた。チーズご飯。といっても、ご飯にチーズが混ざっているだけの、チャーハンである。ご飯が主食とはいえ、これではご飯だけではないか。台所にあった昼の残りを見ても、炒めたご飯のみ。インドのスパイスでご飯自体は美味しいが、これでは栄養が足りないだろう。生活の苦しさを改めて見つめた。

Jemi家族は月に2000ポンドの家を2家族で借りていたが、家を共有していた家族が家賃を払わずに夜逃げ。2家族分の家賃を払わなければいけないと嘆いていた。そのことがストレスでJemiはお腹に石のようなものができ、救急車で搬送されたそうだ。

「インドに帰ろうと考えた。」と涙ながらにJemiは私に話してくれた。私も聞きながら悲しくなった。そしてそのあと、Jemiと旦那さんと3人でみんな泣きながら神様に祈った。

「神様、あなたはこの家族が必要なものをすべて知っています。この家族が乗り越えてきたことをすべて知っています。どうか、この家族に必要なものを与えてください。暗闇の中でも、信頼する信仰をください。私たちは、あなたをどんな時も、信頼します。イエス様ただあなただけを信頼します。」

私たちは祈り、食事を共にし、最後にハグをした。

帰宅してから、Jemiからメッセージが入っていた。「えみ、なんでこんなことをしたの?でも、ありがとう。あなたは私たちの天使だよ。」

私は、Jemiに渡した手紙に20ポンド10枚を挟んだ。(イギリスでは20ポンドが一番大きい。これまた使いにくい。)私からできる、ささやかな支援だった。

愛のリレー

実は、昨年11月、「寒くてヒーターつけたいんだけど、電気代高いからね。」という話を、English Clubのときにリチャードという英語の先生に話していたら、次の週にリチャードとデビー(奥さん)から連名の手紙をいただいた。そこにはなんと、400ポンド挟まっていた。手紙には、「これは今年の冬のヒーター代だよ。僕たちはえみに、暖かく過ごしてほしいから」と書いてあった。

リチャードは、ガーデナーで、暑い夏も寒い冬も、Tシャツ1枚で木を切ったり、庭を手入れしている。私だって働いているのに、こんなに一生懸命働いているリチャードから、、、涙が溢れた。リチャードは7人の子供がいて、孫もいる。子供や孫にお小遣いだってあげられたはずなのに、こんな私に、こんな私のことを気遣って、冬を越すためのヒーター代をくださったのだ。

別なある日、私の教会で、Saraという女性の話になった。Saraはがんで入院していて、10代の子供が3人いる。私は母を亡くした経験があるので、教会でサラのために祈ろうとなったとき、涙が止まらなくなった。母と重ねてしまったからである。また、お母さんを支える家族の痛みが痛いほどに分かったから。

翌週、私は匿名で牧師を通してSaraに手紙を渡した。手紙には、20ポンドを10枚挟んだ。

私の教会は、カンタベリーとファーバーシムという二つの場所で午前と午後に分けて礼拝をしていて、Saraが通うのはファーバーシムの方。そのためSaraとは話したこともないし、実際に会ったこともなかった。私はただ、自分の気持ちを伝えたかった。愛していることを、伝えたかった。

私がリチャードからいただいた「今年の冬のヒーター代」はがんを患ったSaraと、数々の経済的試練を抱えるインド人家族へ渡った。愛に留まることはなく、愛は愛を呼ぶ。

リチャードから頂いたお金を神様は良いタイミングで、良い人たちに捧げるように私に教えてくれたのだ。

私はただ、頂いた愛を、自分の小さな愛で返しただけなんだ。でも、小さな愛は、確かに誰かの心に響いた。神様の愛は、終わることはない。リレーのように繋がれ、伝わっていく。国籍も、場所も、時も超えて。

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