「2017年はお金の年! 2018年は……?」瞬間現金化アプリ「CASH」を作ったBANK光本勇介さんの壮大な実験

「お金をばら撒きたかった」そう聞くと、金持ちの道楽か、権力の誇示だと思うかもしれない。ところが、ネット界が騒然となったアプリ「CASH」を作ったBANKの光本勇介さんの文脈は全く違っていた。それは、世界で誰一人として実行したことのない壮大な実験。その実験結果を見たいという衝動が、光本さんを突き動かした——。

とにかく何にでも興味がある

5月のコルクラボのゲスト会は、CASHの光本さんが登壇。「コルクラボ」とは、作家エージェント会社のコルクが運営しているコミュニティで、毎月ゲストを読んでサディ(コルクの代表、佐渡島庸平)との対談を定例のひとつとしている。まずは、光本さんの生い立ちからサディがひもといていく。

光本さんは、10歳から18歳まで、デンマークとイギリスで過ごしている。高校に上がる際、親が日本に帰国するも、自分はヨーロッパに残る道を選んだのだという。

帰国してから、インターネット黎明期にすでにビジネス的活動をしていた。原宿限定のTシャツを購入してネットの掲示板で転売しており、通常の高校生では考えられないような収入を得ていた。

大学を卒業後、すぐに起業しようとも思ったが、まずは就職することに。いずれ起業するにしても、取引先となる会社のことを知らなくてはならないとの助言を受けたため。さまざまなビジネスが見られる外資系の広告代理店に入り、たくさんの企業にコンサルティング的に関わった。毎日代わる代わる違うビジネスに携われる。そんな仕事が「面白くて仕方がなかった」のだとか。

「とにかくなんにでも興味がある」と光本さんは何度も、何度も言う。光本さんの思考を知るうえで、これはすごく重要なのだと後でわかることになる。

ゼロから作ったビジネスをスタートトゥデイに売り、その後買い戻す

その後独立し、起業。最初のビジネスはなかなかうまくいかないものの、同じ会社でいくつかのビジネスを手掛け、それなりに回してく。2012年に、個人が簡単にECサイトを作れるSTORES.jpをスタート。それが軌道に乗り、翌年にはZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイに会社ごと譲渡。ところが、その3年後に買い戻す。さらには数年後には人に譲り、1年ほど「無職」の状態になる。

「スタートトゥデイのように大きくなる『マス向け』のインターネットビジネスをゼロから立ち上げたかった。それは、一生に一度あるかないかのチャンスだと思う。事業は考えようと思って出てくるものじゃないから、1年くらいいろいろな業界を調べまくった。どの業界を見ても、『僕ならこんなビジネスをするのに』というアイデアがどんどんわいてくる」

とにかく、好奇心が恐ろしく強いのだ。

ビジネスは「市場選択とタイミング」

これまでたくさんのビジネスをしてきて、「ビジネスの成功要因は市場選択とタイミングに尽きる」と言う。あらゆる業界をリサーチしながら、次の事業の決め手となったのは「金融業界に対する違和感」と「2017年はお金の年になるという直感」。

「お金はだれしも必要なのに、金融業界は硬くて近寄りがたい。FinTech系のベンチャーが生まれても、ほとんど金融業界出身の人ばかり。だから僕は、どんな人でも使える、マス向けの金融サービスを作ろうと思った。いつもビジネスは逆算で考えていて、『こういう世界が作りたい』が先にある。今、僕の思う世界が実現していないということは、障壁がたくさんあるということ。当然だけど、攻めてナンボ。攻めないと突破できない」

「少額の現金が欲しい」人はたくさんいるんじゃないか

光本さんが感じていたのは、「少額の資金ニーズ」。STORES.jpを運営しながら、手数料を多く払っても早く現金化したい人が多いと気が付いた。さらに、メルカリの大ヒットもそれを証明していると考えた。「1~2万円なんて現金化してもしょうがないじゃん」と周囲の人は言ったらしいが、そうでない世界が光本さんには見えていた。

CASHはご存知の通り、売りたいモノをアプリで写真に撮ると、すぐに査定して現金が振り込まれるというサービス。モノはその後に送付すればいい。「少額の資金ニーズに瞬間的に応えるサービス」を考え、いきついたビジネスだが、多くの人は「先にお金を払ってしまうなんて無謀」「世の中そんなに信用できるはずはない」と言ったという。

「世の中の大半はいい人だと思っている。一部の悪い人のために、企業は『疑うコスト』をたくさん支払っているんじゃないか。いい人が多いってことに、掛けたいと思った」

「性善説」を証明したい。どれだけの人が返してくれるか

おそらく光本さんがもっとも見たかったのは、世界のだれも見たことのない景色。

「ビルの屋上からお金をばら撒いたら、きっとみんなが拾うと思う。それを後から『それ、僕のお金だから返してくださいー!』って叫んだら、ビルの階段を上って返してくれるのは何人いるか。もしかしたら、誰も返してくれないかもしれない。だけどこんな実験、誰もしたことない。この実験をしたのは世界でただひとり、僕だけ。もし誰も返してくれなくても、その実験結果だけで何年もやっていけると思った」

一部に悪い人がいるということは想定内。そのため、70パーセントの人が返してくれれば成り立つ設計にしていたという。結果、ほとんどの人が階段を上って返しに来てくれた。それは、光本さんの期待に沿うものだった。1億円を1か月くらいかけてばら撒く予定だったのに、一晩で3.6億円ばら撒いてしまったという誤算を除いては……。

まだまだあった誤算の数々

CASHのサービスが発表されてからの数々のバッシング。それらは「想定内だった」と光本さんは言う。「数人でやっているし、僕らには失うものなんてないから」。

ただし、想定外だったことはたくさんある。ローンチ翌日、トラック何台分もの荷物が届く。それはそれは大変だったというが、そのことがWebで公開されるや否や、あらゆる二次流通業者から「まとめて買い取らせてほしい」という連絡がひっきりなしに届いた。「買取業者は、買いたくて仕方がない」と、その時に初めて知ったという。

さらには、DMMの亀山さんから突然届いた「CASH売って~」のメッセージ。それは別のWebサイトにも書かれていた。

http://thebridge.jp/2017/11/cash-running-company-bank-joined-dmm-group

ところが、光本さんから発せられるのは初めて聞く話ばかり。つまんでピックアップすると……。

「DMMにパクられたら終わりじゃないですか。めちゃくちゃ資本あるし」

「全然売る気なかったけど、既読にしちゃったから返事しないと怖いんで」

「亀山社長に会うなり、『パクる気満々だから大事なことはしゃべるな』って言われて」

「売らないって言ったのに、『値段言うだけならタダなんだから言ってみろ』って言われて、まずないだろうなっていう『70億』って言ったんですよ。そしたら『なくはない……』って空気になっちゃって(笑)」

「2回目に会ったとき、『内容がわからないと判断できないと思うから、中身も全部喋ります。その代わり、半年は真似しないでください。紳士協定でいいんで』ってお願いして、全部喋った」

そしてご存知の通り、CASHはDMM傘下になった。

2018年は何の年になる?

光本さんは事業を考えるうえでおそらく、「性善説に基づいたビジネスはまだ誰もやっていない」と気が付いた。厳密には、田舎の無人駅や無人の野菜販売所など、小さな単位では存在する。でも確かに、顔の見えない、近所の監視も効かないインターネットビジネスでマスに広まるものとしては皆無だろう。

「人を全力で信じたときにどうなるかを実験したい。今までのサービスは、一部の悪い人に悪いことをさせないためにまず疑ってかかっている。人を疑うことをずっとしなくてよくなったら、コストはすごく下がる。それを僕が実験してうまくいったら、他の人も同じ方法で、性善説をもとにしたビジネスが作れるようになる」

その話を聞いて、「誰しもを信じられる世界に行けるのかもしれない」と気持ちが浮つくのを感じた。その世界を、光本さんは日々見つめて、実験を繰り返しながら、実現しようとしている。

光本さんは、今年の流れをこう予測する

2018年は与信の年になるだろう。人の信じ方や評価の仕方が変わる」

さらには、新しいビジネスも仕込んでいる。それは「2018年が、与信に加えて仕事と旅行の年になる」と踏んでいるから。「ビジネスの成功要因は市場選択とタイミングに尽きる」という光本さんが打ち出す、次のビジネスに注目したい。それも、性善説をもとにしたサービスだという。

人を疑わなくていい世界。そんな世界があるのだろうか? 光本さんの壮大な実験で、あり得ることを証明してほしい。

(記事ここまででおわり)

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