見出し画像

北方謙三先生とわたし

先生との出会い


わたしは北方謙三先生の歴史小説がたまらなく好きです。

1981年「弔鐘はるかなり」でハードボイルド作家としてデビューされた北方先生。
作風は硬派で、まさに漢!という感じです。

そんな北方先生との出会いは、ハードボイルド小説ではありません。
先生が初めて中国史を題材にした「三国志」でした。

もうかなり昔のはなしになりますが
当時のわたしはなぜか「とにかく三国志が読みたい!」と思っていました。
三国志はさまざまな作家さんが小説化しているので、王道の吉川英治さんにするか宮城谷昌光さんにするか、本屋でパラパラとめくりながら悩んでいたのです。

そして北方先生の三国志のページをめくると、巻頭に中国の地図や登場人物一覧が記載してありました。
それを見た瞬間「あ、これにしよう」と決めたのです。
三国志は登場人物がとにかく多いです。
これは分かりやすくていいわい!という、とっても単純な理由でした。

そこからわたしは、北方ワールドにどっぷりハマってしまうのです。

北方先生の小説は、登場人物ひとりひとりが生きていて
情景や心理描写がとにかくエモーショナルです。
書き出しから一気に、読者を物語へと引き込みます。
説明しすぎないのに、まるで映画を観ているかのように映像が目の前に広がってくるのです。

「男の死に様、すなわち如何に生きるか」
これが、北方作品の普遍的なテーマです。
わたしの拙い言葉で説明するととても陳腐に聞こえてしまう気がするので
こういうところがいい!!と語ることは割愛いたします。
本当はとても書き連ねたいんですけど。

ド緊張のサイン会

数年前、地元の書店で先生のサイン会がありました。
普段は行かない書店に、休みだからとたまたま行った日が
なんと、先生の長編小説「チンギス紀」1,2巻の発売日でした。
そして購入者は刊行記念のサイン会に参加できる、と……!!!
文庫本派のわたしでしたが、迷わず「チンギス紀」の単行本を購入し、サイン会に参加申し込みました。
もうこれは、運命でしょう?そうでしょう?

そしてサイン会当日。
仕切られたスペースで、北方先生はひとりひとりと短い会話をしてくださっていました。
おおおおお話できるのか……!!!!と緊張がMAXに。
ずっと心臓がドコドコドコドコいっていました。

そしてついに、わたしの順番。
サインを書いていただくために購入していた本をスタッフの方にお渡しした時、間に手紙を挟んでいることをお伝えしました。
自分の想いを対面でまともに言葉にできるとは思えなかったし、でも北方先生の小説が大好きだということはお伝えしたかったので、事前に書いていたのです。
気が付いたら、便箋7枚にもなっていたんですけど。

「後でゆっくり読ませてもらいます」と笑顔の北方先生。
それだけでもう、泣きそうですよ。
そしてサラサラとサインをお書きになった後
「何か質問ある?」とたずねてくださいました。
あまりの緊張で、わたしは思わず

「あ、あの、わたしは望郷の道がとても好きなんです」

と言ってしまいました。
その日は「チンギス紀」刊行記念のサイン会なのに……
「望郷の道」は幻冬舎、「チンギス紀」は集英社です。
その場にいらっしゃった集英社のみなさま、本当にすみませんでした。
でも北方先生は嬉しそうに「おおっ」と声を上げ

「あれはねぇ、うちの家族の話だからね。ヤクザだったんだよ」
※「望郷の道」は先生の曾祖父母がモデルの小説

と激渋ボイスで言いながらニヤリと笑いました。
(ちなみに、横にいたスタッフ?の方もなぜか嬉しそうでした)
そのあとは握手をしながら写真まで撮っていただき
嬉しすぎて泣きそうというか夢見心地というか……
とにかく、ふわふわしたまま帰宅しました。

画像1

それだけでは終わらなかった

サイン会だけでも胸いっぱいだったのですが
2週間ほど経ったある日。
夏フェスで暴れまくっていたわたしに、母からLINEがきました。

「北方謙三事務所から何か来てるよ」

!!!???

画像2

なんと、北方先生は
「破軍の星」のサイン本をわたしの家に送ってくださったのです。

手紙に住所氏名は書いていたけれど
それは礼儀として書かなければと思っていただけで
まさかこんなお返しをいただくなんて……
驚きと感動で興奮冷めやらず、その日はなかなか寝つけませんでした。

別に何か言葉を書いてくださったというわけでもなく
黙って(という表現は適切ではないかもしれないけれど)サイン本のみを送ってくださるところが
とても北方先生らしいな、と思ったのです。

わたしは別に、北方先生からお返事の手紙が欲しかったわけではありません。
ただただ、北方先生の小説が大好きなんです!!
ということをお伝えしたかった。
きっとその気持ちを受け取ってくださったんだなと思いました。

そんなわけで。
北方ワールドの魅力は、読まなきゃ分かりません。
歴史小説が好きな方であれば必読だと思います!
おすすめは?と聞かれても「全部」としか答えられないのですが
とりあえず、いくつかリンクを貼って終わりにしたいと思います。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?