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今日の映画 カサブランカ 感想



言わずと知れた名作。近年の作品の中でも度々タイトル名やオマージュが登場する今作を、ようやく鑑賞した。



 第二次世界大戦下のフランス領モロッコ、カサブランカが舞台。
 ドイツ、ナチスの圧政から逃れ、リスボン、果てはアメリカへの亡命を夢見る難民たちが行き着くカオスの地。
 主人公リックもアメリカから追放され、パリで過ごしているうちにドイツから逃れるべくカサブランカの地へ踏み入れたアメリカ人。
 カサブランカではある程度の地位を築き、バーを経営。
 アメリカへ戻ることを心のどこかで夢見ながら、カサブランカを取り仕切るフランス人警官、そしてドイツ兵から目をつけられないようにしつつ、ほとんど手に入れることが叶わない出国許可証を入手する、という無謀すぎる現実にリッツはある種の諦念を抱いていた。
 ある日、ドイツ兵殺害の容疑でリックの友人が逮捕される。
 その友人はドイツ兵から出国許可証を奪い、亡命を望む反ナチス活動家のラズロに売り捌く手筈だった。
 リックのバーに現れるラズロを待ち伏せるドイツ警官。やがて現れたラズロ。そのラズロが連れた妻は以前リックがパリにいた頃恋に落ち、カサブランカに亡命する際に突如消えたかつての恋仲、イルザだった…


 という話。


 今作での私の推しポイントとして、戦時下での儚い恋愛模様ではなく、リックという男の達観した生き様に注目したい。

 まずこのイルザに対しての率直な印象を言葉を選ばすに形容するならば、クソッタレ身勝手女、である。


 パリでもリックに既婚者であるという後ろめたく自分に不利な情報を告げられず、挙句亡命の選択を迫られると勇気が出ず説明もなしに姿を消した。

 再び再開し、イルザがリックに取った振る舞いもまた利己的だった。

 対してリックは逃亡先でバーを築けるほどの切れ者であり、情には深い男。
 素面ではクールに振る舞いつつも、友や愛情にはとことん誠実。


 だからこそ、イルザのことは諦めつつも忘れられずにいた。

 リックはラストシーンでフランス警官であるルノー署長に銃を突きつけ、ドイツ兵が迫る中イルザとラズロを国外逃亡させる。
 その前の晩、イルザに愛していると迫られたにも関わらず。リックは分かっていた。イルザの本心がラズロにあること。イルザを選んだ先の未来を。

 カサブランカを飛び立つ2人を乗せた飛行機。

 駆けつけたドイツ兵。

 ルノー署長は本来リックを糾弾すべきだがそうはしない。カサブランカでの生活の中でリックを理解するルノーはうまくドイツ兵を言いくるめリックを窮地から救った。


 「ルイ、(ルノーのこと)これが俺たちの友情の始まりだ」

 アメリカに行く夢、忘れられない恋仲の女。

 全てを捨てて自らの信念と理性を守り、その代償として変え難き友情と手に入れたリックの、彼自身にとっての希望ある輝かしい未来が微かに感じられる素晴らしいセリフ。



 彼はアメリカへは帰れないかもしれない。恐らくイルザのことも忘れられないかもしれない。
 それでも、自らの信念と友情を守り抜いたという大いなる経験がきっとリックをまた窮地から救い出してくれるのではないだろうか、と私は思う。

 それは何物にも変え難い、重く重要なもの。誰かにとっての死ぬまでに追い求めているなにかなのだろう。

 私もリックにとってのそれのように、変え難い何かを手に入れる日を夢見ている。
 それはきっとリスボン行きの切符でも、イルザでもないはずだ。

 いやあ、名作と言われる理由がよくわかった。素晴らしい作品でした。

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