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鈴木るりか『太陽はひとりぼっち』(毎日読書メモ(303))

鈴木るりか、という小説家を知っていますか?
小学校4年生から6年生までの3年間、小学館主催「12歳の文学賞」で連続して大賞を受賞し、受賞作に更に他のエピソードも追加した『さよなら、田中さん』(小学館)で小説家デビューしたのが中学2年生の時。それ以来毎年1冊のペースで新作を出し、この春大学に入学。

Facebookの中で入っている読書のグループで、『さよなら、田中さん』が話題になっていたので、読んでぶっ飛んだ。小学生がこんなに人の心の機微に触れる人間模様を書けるのか! 西原理恵子の絵の装丁も、イメージぴったり。次の年に刊行した『十四歳、明日の時間割』(小学館)(これは矢部太郎の表紙)もまた違った機軸で中学生の心模様を描いていた。

その後しばらくご無沙汰だったのだが、今年大学に入学したと、またグループ内で話題になっていたので、読んでなかった旧作を読もうと思って『太陽はひとりぼっち』(小学館)を読んでみた。
『さよなら、田中さん』の主人公田中花実の中学生になってからの日々を描いた「太陽はひとりぼっち」と、スピンオフの「神様ヘルプ」「オーマイブラザー」の3編。相変わらず、別に作者自身と境遇が近い訳でもなさそうな登場人物たちの気持ちを、読んだ人に考えさせる、懐の深い小説。主人公がぱっと思いつくこととかたとえとか、子どもらしい感じなのに、出会った大人たちとの対話の中で見えてくるものが重たく、深い。単純な結論は求めず、物事は、人によってとらえ方が違い、絶対的な正解も、絶対的な不正解もない、ということを感じさせてくれる。

鈴木るりかの小説を読んでいると、身の回りにはもっと語られたがっている物語があるのではないか、という気持ちになる。
もっと静かに耳をすませて暮らさなくては。

#読書 #読書感想文 #太陽はひとりぼっち #鈴木るりか #小学館 #十二歳の文学賞 #さよなら田中さん #14歳明日の時間割

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