シンボルカラーの深い紅と革と職人
世界のビッグメゾンが生み出すモノのカタチ、デザイン、材料や機能性には興味があるが、お洒落に敏感なファッショニスタとかではない、わたし。
カメラを通して写真撮ったり、ヨーロッパの様々なものに興味をそそられる人。
革を使用して"総手縫い"でモノを作るクラフツマン… 革小物職人のおじさん。
最高峰メゾンの色や革のこと、職人のこと、そんなお話。
褐色を帯びた深い紅 -Rouge H-
Rouge Hという色、Hを"アッシュ"とフランス語の発音で呼ぶ。フランス語の発音はむずかしいね… ルフゥ~ジュ…?
ファッション、ビッグメゾンに詳しい方は "あ~、あの色ね " とわかる方もおられるだろう。近年登場したコスメのリップスティックにも使われている色。
1925年以来、アイデンティティを象徴するカラーと語られ、Hermès(エルメス)の頭文字 Hが付いた"Rouge H"(ルージュ アッシュ)。ボルドーに近いが、それよりも少し深い色褐色を帯びた深みを感じる紅、様々なオブジェで魅せるその色。
フランスの山羊革 -Alran Chèvre Sully-
色も重要だが、欲しかったのはこのタンナーが作る革。
フランスのタンナー、アルラン社が製造しているアルラン シェーブル シュリー(Alran Chèvre Sully)、"アルラン シュリー"という名で呼ばれる山羊革。
アルラン社(Tannerie Alran S.A.S)は、創業100年以上、良質な山羊革を生み出し続けるタンナー、熟練職人の手作業により形成される美しいシボ、繊細でハリのある吟面の革、世界中のブランド、革職人に愛され使用されている。
当初、アルランシュリー ボルドー(bordeaux)とトゥルティエール (tourterelle)を仕入れるつもりだったが、ボルドーが在庫切れだった。入荷予定は約1ヶ月後。
リミテッドカラーで数枚 "ルージュ Hならあります"と言われ…
え~~~!!!っと思って… 考え… 迷い…考えて… 結局、買った。記念に… 嘘。
流れからだが、買ってしまった… ので、この革を使う、そりゃ使う。
エルメスのものづくりの中心は人、共通の価値観、専門知識の持続的継承、職人の育成への継続的な投資で従業員の約4割が職人と聞く。(わたし調べ)
シンボルカラーに敬意を表し、真摯に仕事に向き合うクラフツマンとして、しっかりと襟を正し使ってみたいと思う。
象徴するカラーのみ1色は流石に気が引ける… いつものバイカラーにする。(爆笑)
この色の革を使い切ったら、次回以降、購入する場合、ボルドー…やろな。
いろいろな種類の鞣し革
"私たちの食肉文化の副産物"の皮から革へ鞣され材料革になる。元々生きていた動物、爬虫類、魚類などのさまざまな種類の鞣し革がある。
上記は私が知る牛革の材料革のサイズで、小さい豚、羊、山羊は丸革が一般的。
現在の使用革はヨーロッパのイタリア、フランスのタンナーなどで製造されている革、ほぼフランス産の原皮。"酪農大国フランス" 乳製品の数も半端ないと聞く。
どんな革も部位によって繊維の密度に差があり、背中やお尻部分は密度が高く締まっていて、お腹や脇部分は密度が粗く伸びやすい。人間のお腹もぷよぷよでしょ。
今までの経験で扱ったことのある革は、牛、馬、山羊、羊、豚、エキゾチックレザーのワニ、パイソン、トカゲ 、ダチョウ、その他、象、アザラシも少しだけ。
魚では鮭、ブラックバスの存在は知っている。ラグジュアリー系のエキゾチックレザーは、いくつかの前処理も必要となる。今は個人的に興味も薄く扱う気がない。
革を漉く理由
革は種類により原厚が違う。厚いものは4mmとか、わたしの使うタイプは原厚2mmや1.2mmぐらい。2mmといっても均一ではないので、例えば1.5mmに漉き加工依頼をして全体を均一の厚みに揃えてもらう"全漉き"(スプリット)してもらう。
その革から、どの部位をどう使うか? 考え、パーツを切り出し、所有する革漉き機で部分的な漉き加工をする。
革が無駄に分厚いと重くなる、また形成しにくい、モノが入りづらいため、必要な厚み、部分は強度を残す程度の厚みに調整する。
あるパーツは1.2mm、1.0mm、違うパーツは0.5mmだったり、部分的に0.2mm、ゼロ漉きなど、革の質により変更する。革包丁を使って細かく"手漉き"もする。
財布などはカードやお札が入ると厚みが増すので、パーツの革は薄いことが多い。
わたしは布を使わないので、伸びない程度の薄い革を表裏貼り合わせたりする。
あまり薄く漉くと革が破れる。お高い革がゴミになる。涙が頬を伝う…
モノ作りをする職人
誰もが知るヨーロッパなどのハイブランドのほとんどはファッション業界企業体の巨大コングロマリットに属し、各ブランドの独立性を残し、高いクオリティーを維持し続けている。スペインにいた頃、アンダルシアのウブリケという職人の村でもいくつかのハイブランドのモノを生産している話を知り合いから聞いた。
エスメスは、どこにも属さず君臨している。革製品の生産はフランス国内でのみ、生産体制と職人の育成もすべて追求し、継承し続けていると聞く。(わたし調べ)
わたしに最低限必要なことは、材料選び、革の加工、道具の仕立て、技術磨き、
知識と経験の積み重ね… 人として足りないモノは除外させてもらう…
パターンを知る鞄などを作るのも考えるが、手縫いでは時間と値段との戦いになるのはわかっている。
ミシン縫いの知人たち、革鞄、革小物、リペア職人なら話す機会はあるが、いつかヨーロッパの人伝を辿って、辿って、エルメスの職人さんと話せたらいいな…
別に技術的な話をしたいわけではない、フランスではモノ作りをする職人として、どんな想いで作り、どんな人生を送っているのか… 聞いてみたいだけだ。
フランス語で挫折するな… いやもう、今挫折した。。。
ワインと牛、山羊、羊のチーズ各種… ガレットも食べたくなってきた。
ではまた、¡Hasta luego!
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