マガジンのカバー画像

シリーズ:なぜ小学校の体育の指導は難しいのか?

7
運営しているクリエイター

記事一覧

先生、いま何に困っていますか?コロナ禍における体育の課題。

長期の休校と外出自粛、また学校再開後も体育が十分にできていないことの影響が少しずつ表面化してきています。 いま学校の先生は、体育の授業において何に困っているのでしょうか? 5月末よりENGINEの「体つくりカード」の提供と同時に、先生方に現在の課題をヒアリングしてきましたので、その結果をお伝えしたいと思います。 ​ 全国200校以上の小学校の先生方から具体的なご回答いただきました。 (カードの申し込みは1,000件を超えました!) ■先生の声回答は、主に「①コロナ対策、

学校再開後、「体育」はどうなるか。

6月から首都圏でも本格的に学校が再開されました。 ​ しかしながら、長期休校での学習の遅れを取り戻すことや、引き続き三密を避けて行動をしなければならないことから、「体育」や「音楽」などの教科には、今後も様々な影響があります。 ​ 具体的には以下の点が考えられます。 ■体育への具体的な影響①授業時間の削減(他教科への振り替え)夏休みを短縮しただけでは、学習は追い付かない為、いわゆる「勉強」ではない体育や音楽などの教科は、他教科に振り替えられ、元々週2~3回はある体育が、週1回

運動をする「空間」の減少。【なぜ小学校の体育の指導は難しいのか?vol.4】

前回の投稿では、スポーツや外遊びの3つの間(=時間・空間・仲間)が減少しており、それが子どもの体力低下や二極化の大きな要因になっていることをお伝えしました。 学校内だけでなく、学校外で子どもたちへの運動機会が多く提供され、運動を大好きになってくれれば、体育の授業も進めやすくなるはずです。 「時間」と「仲間」に関しては、少子化や家庭環境の影響があり、複雑な問題が絡み合っている為、すぐに解決することは難しいかもしれませんが、 「空間」に関しては地域社会の協力や大人の寛容さに

運動をする子・しない子の二極化【なぜ小学校の体育の指導は難しいのか?#3】

3つ目の課題は、「運動をする子・しない子の二極化」です。 近年、運動する子としない子の二極化の傾向が指摘されています。 ■調査データ小学校5年生と中学校2年生に対して、体育の授業以外での1週間の運動時間を調査した結果がこちら。 【出典】 平成30年度全国体力・運動能力、運動習慣等調査結果 スポーツ庁 小学校でも、中学校でも、「運動をする人」=「運動時間週420分以上(1日1時間以上運動する)」と「あまり運動をしない人」=「運動時間が週60分未満(1週間で1時間も運動し

体育には「教科書」が無い。【なぜ小学校の体育の指導は難しいのか?#2】

前回は「小学校は学級担任制」であり、担任の先生が体育を教える大変さをお伝えしました。 今回は「体育には教科書がない」ことに関してお伝えします。 ■体育には「教科書」がない。 小学校の教科の中で「体育」の運動領域だけ、検定教科書がありません(※保健領域には、検定教科書がある)。 小学校用教科書目録(平成32年度使用)/文部科学省 そもそも学校教育において「教科書」とはどういう存在なのか?  文部科学省による説明はこちら↓↓ Q1 教科書は,学校教育の中でどのような

担任の先生が、全て教えなければならない。【なぜ小学校の体育の指導は難しいのか?#1】

いままで我々が行った学校現場でのヒアリングやアンケートの中で、「他の教科は自信を持って授業ができるのに、体育の授業には自信が無い」といった声を多く聞きました。 なぜ小学校の体育の指導は難しいのか。 その理由をこれから何度かに分けて分析していきたいと思います。  小学校は「担任の先生」が体育を指導する。 日本ではほとんどの公立小学校は「学級担任制」であり、1人の学級担任教師が、その学級の学習指導(教科指導)や生徒指導の全部か大部分を担任しています。 よって体育も担任の先

学校という船を、「体育」から動かしていく。

ENGINEは「学校という船で、未来への航海に出よう」というビジョンを掲げています。 学校という場所は昔から変わらずに「ずっと動かないもの(=ずっと変わらないもの)」ではなく、子どもと先生のわくわくしたエンジンが稼働すると、船のように動き出し、「次の港(=未来)」へと進んでいく。 では、学校が未来へと進んでいくためには、どうすれば良いのか? なぜENGINEはいまこのような取り組みを始めたのか?  ■背景ENGINEの取り組みの背景には、主に以下2つの課題があります。