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【MV意味考察】タイムマシン/SEKAI NO OWARI-人により変化する"正義"とは何か?


セカオワ、待望の最新曲「タイムマシン」

2024年3月にSEKAI NO OWARIの最新曲、「タイムマシン」がリリースされた。
この曲は2024年3月13日発売の7th オリジナルアルバム「Nautilus」に収録予定であり、橋本環奈さん主演のNetflix映画『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』の主題歌だ。

Fukaseの優しい歌声と美しいメロディーが織りなすこの曲、聞けば聞くほど"セカオワ"の世界観に飲み込まれていく。

2024年3月5日に配信開始されたばかりの本曲について、MV考察をする。

↑まだMV見ていない方はこちらから!
是非見てから読んでいただきたい。

美しい出だしと、動画撮影

このMVはボーカルのFukaseが録画ボタンを押すシーンから始まる。
(以降Fukaseをクロ、男の子をサクとする。)

タイムマシンに乗ってチクタクチクタク
君といた記憶を消し去るために
こんなに苦しいなら
君に出逢う前に全てなかった事に

タイムマシン/SEKAI NO OWARI

一見すると「出会わなければ良かった」と後ろ向きに聞こえるが、そこは後ほど。

その後川沿いの土手をサクと歩くシーンに切り替わり、一緒に風景が暮らしていると思われる日常が映る。

一体2人はどんな関係なのか?
この時点ではまだ分からない。

しかし一緒にスマホの前で踊ったり、ご飯を食べたりと良好な関係であると伺える。

左:サク 右:クロ

食べているのは2人ともカップラーメン。住まいや傷ついた押し入れの扉を見る限り、決してお金にゆとりのある暮らしはしていないことが分かる。

お金は無いながらも、クロはサクにベッドや飲み物を譲っていることから大切に思っている様子が描かれている。

じゃんけんに勝ったクロは、お金を稼ぐために働きに出る。
大きな四角いリュックを背負い、自転車に乗り、出来立てのご飯を届ける配達員として。
(Uber Eatsや出前館の配達員が連想される。)

2番では時間の経過が感じられる。
夏にアイスを食べたり、秋に変わらず一緒に動画を撮影したり。
冬にはサクのお誕生日を祝うため、小さな丸いケーキにロウソクを立てている。

そしてまた、じゃんけんに勝ったクロは配達員として働く。
大きな変化は無いが、穏やかな日々を営んでいる。


2番終わりから急転直下・警察からの逃走

ここまでサクと仲睦まじく生活している様子が描かれるが、Cメロから一転する。
煌びやかなタワーマンション街を背景に、暗闇の中じゃんけんしている最中、突如として警察に追われるのだ。

2人して逃げるものの、警察に捕まってしまう。
家宅捜索を受け、諦めつつも悲しげなクロの表情が見事だ。
サクが必死の抵抗で枕を警察にぶつけるが、無念にも羽毛が散っていく。

美しくも悲しいコントラスト

真っ暗な部屋・黒づくめの警察と宙に舞う真っ白な羽毛の対比が美しくあり、かつ無念さ・現実の非情さとして伝わってくる。


2人の出会いは「誘拐」

画が切り替わり、怪しい男が金品を物色し盗んでいる画となる。
この怪しい男=クロは窃盗犯であった

物色する最中別の扉を開けると、そこには男の子が育児放棄・虐待を受けたような状態で、虚ろな表情で座り込んでいた。
実際一瞬だけ映る家族写真に、サクの姿は無い。

3分13秒頃の家族写真にサクの姿は無い

その衝撃からはっとした表情を浮かべ、マスクをゆっくりと下げる…。

きっと彼は男の子のことをいたたまれなく思い、「誘拐」したのだろう。
「金」を探していたクロは、突如「愛」を見つけたのだ。

「誘拐」後クロは窃盗から足を洗い、配達員として全うな生き方を細々と、しかし幸福に送っていたのだろう。


なぜ動画撮影をしていたのか?

このMVは録画ボタンを押すところから始まり、随所で一緒に撮影をしている様子が描かれている。
その真相は、一緒にいれる時間が限られていることをクロは知っていたからだ。

自分はいつか窃盗・誘拐犯として逮捕されてしまう。
逮捕されたら一緒にはいられなくなるため、貴重な日々を記録としてSNSの鍵アカウントに動画に残していたのだ。
(鍵アカウント:自分が許可した人にのみ、投稿を見せることができるもの。)

きっとスマホは押収され、データが消されてしまうことを見越しておりインターネット上に残していたのだろう。
2人で暮らした、短くもかけがえのない日々を。


無情にも訪れる別れの時

クロが警察に連行される前、2人はいつもしていたじゃんけんをする。
MVでは何度もじゃんけんをするシーンがあったが、最後のじゃんけんだけクロは負けるのだ。

サクはじゃんけんに勝ったものの、クロとの別れを号泣して迎える。
そんなクロも、連行される車内で静かに涙を堪え頷くのだ。
(この結末で良かったのだと、思っているのかもしれない。)

曲はちょうど、2人の別れで終わっている。
そしてサクは2人で歩いていた土手を1人で、クロの上着を羽織って、歩きだすのだ。

"裏切り"じゃんけん

エンドロールが流れるとともに、クロとサクの会話が聞こえる。
そう、ずっと2人は"裏切り"じゃんけんをしていたのだ。

このMV中、クロはずっとチョキしか出していない。
つまりクロはサクをずっと裏切っていなかった、ということを表しているのだと思う。

正義とは何か?

このMVは正義とは何か、改めて考えさせられる。
確かに世間一般、何も知らない私たちから見ると誘拐したクロが悪いと決めつけてしまうだろう。

結局「人はそれぞれ正義がある」。
(Dragon NightでもDeath Discoでも同様の言及がある。)

クロは自分が悪者になってでも、サクという存在を守りたかったのだ。そこには純粋な愛しかないと思う。

改めて考えさせられる、美しくも切ないMVだった。


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