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近づく気候逸脱点

お盆が過ぎたにもかかわらず続く、強烈な酷暑の日々。
近年、こうした異常気象は日本に限らず、世界中で多発しています。
異常気象とは「数十年間に1回、あるいは人が一生の間に稀にしか経験しない現象」と気象庁は定義していますが、こうした現象が頻発する様になれば、それはもはや異常ではなく日常です。

Hawaii大学のCamilon Mora教授のチームでは、地球温暖化により今後世界の気候について研究し(*)、異常気象が日常化する境界を「気候逸脱点(climate departure)」と名付けています。

(*) 科学雑誌nature上で2013年に発表された論文で、世界12カ国21機関で運用されている39の気候モデルの予測結果を集め、将来の気候変動を分析しています
https://www.nature.com/articles/nature12540

この分析では、今後地球の半数を超える地域において、2047年以降は毎年継続的に、過去1860年〜2005年の間で最も暑かった年よりも暑くなり続けることが予想されています。

端的には、気候逸脱点を超えてしまうと、過去150年の最高気温を以後毎年、ずっと超え続けるようになるという予測です。
正直、冗談じゃないよ…という予測ではありますが。

ちなみにこの研究では、ニューヨークは2047年、東京は2041年に気候逸脱点を迎えると予測されています。でも、今年2023年の世界の状況を見ていると、さらに早まっているのではないかと感じます。

気候逸脱点を超えた世界の気象がどうなるかは未知の領域ですが、著しい気温上昇は海水温の上昇ももたらし、さらに強烈な豪雨と極端な旱魃の発生(どちらも今年は世界中で多発しています)、台風やハリケーンのさらなる強大化は確実視されています。

国連気候変動枠組み条約が採択されたのは、ブラジルのリオ・サミットが開催され1992年でした。地球温暖化対策の取り組みが開始されてから既に30年以上が経過したものの、毎年開催されるCOPでは各国の思惑が衝突し、全世界で足並みを揃えた強力な対策の実施に至っていません。残念ながら、もはや激化する気候変動は不可避であると言わざるを得ません。

中長期的観点でCO2削減策は今後も進めるべきですが、同時に気候逸脱点を超えた過激な気象変化への対策(大規模水害・渇水対策、海水面上昇による浸水・高潮被害が恒常化するであろう沿岸部からの疎開、公共施設・交通機関の高温・豪雨・台風対策、夏季の強制的な活動制限等)を直ちに本格化させる必要があります。

残された時間は、予想以上に少ないと考えるべきです。


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