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朗読と労毒──「聞く読書」ってやつに手を出した話

 こんばんは、玉手箱つづらです。趣味で小説を書いているものです。後書きと称して関係ない話を垂れ流すのも趣味としております。
 最近特に公開した小説とかはないんですけど、ネットに出してないけど書いたものはあったりするので、気分は後書きです。書いたものとまるで関係ないからこそこういうこともできる、後書きの無限の可能性を感じるね(?)。

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※(2022/1/15 追記)
 以下の文章は、オーディブルが聴き放題になると知る前に書かれています。なので、月額聴き放題になるらしい今後のオーディブルの実態とはまったくかけ離れたレビューであり、制度変更後は、参考としての機能を完全に失うと思います。消したほうがいいかなあとも考えたんですが、「こんな時代もあったのね」的資料にはなるかなあってことで思いとどまりました(もともとちゃんとしたレビューというより日記的側面が強い、というのもある)。お読みになる際は、その点ご了承いただければ幸いです。
 聴き放題になるらしい!って話はこちらのツイートの画像をご参照ください。(私のツイートです。たぶん消すことはないので、何か変更があっても資料になり得るかなと思って)→ツイート
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 さて皆さん。本、読んでますか?
 私? 私はもちろん読んでますん。ません。すみません。私が活字離れです。その権化です。
 チマチマとつまんでる本はあるんですけど、読み切るまで行ったのは最近ないです。大体「おもしれ〜」って思いながら読んでるんですけどね、なかなか進まず、最後まで行かなくて……。
 
 まったく、最近の若者は。本も読まないで何してるんだか。おぉ?なにしとるんだ、言うてみぃ。

 …………

 …………

 労働だよ……。

 あと最近はシャドウバースを少々……(ん?)。

 ということでね。「仕事」なんて言葉を使いたくもないようなね、つまんねぇ労働をしておるわけなんでございますけども。
 毎日毎日、力いっぱい絞られた雑巾みたいになって帰ってきてね、パクパクちゃぷちゃぷゲラゲラごろごろ、ねじり尽くされた体と心をどうにかほどいて、失った潤いを明日また出勤できるぶんくらいまで掬い集めてきて、ごわごわなのにうっすら湿ったしぼり雑巾円柱のまま布団に潜って……本なんていつ読めって言うんだぁ!(ゲラゲラごろごろユーチューブ見たりシャドバしてる時間にだろうよ)

 疲れてるんだ、後にしてくれよ。なんて台詞で溝ができる創作物内夫婦テンプレがございますけども、私と本くんの関係もそういう感じでございます。まあ僕は元々読書家でもないから、こういうときに本を心の支えにできないのでしょうけども。
 全部僕の弱さが招いたことだ……。なんて台詞もよくありますね。しかし僕は、そんなセリフを吐く奴らとは違って反省はしません。
 悪いのは俺じゃねえ! ぜんぶ……そうだ!全部あいつが悪いんだ!

 労働が悪いんだ!!

 というわけでね、労働とかいう人間性からもっとも遠いにしてにしてなるものがガッツリ人間社会を支配してしまっているがゆえに、毎日毎日僕らは鉄板の上で焼かれてヤになっちゃうわけですけど。
 ここまでを一文でまとめると「労働がダルすぎて本読めてねーわ」なんですけど。けど。私は思ったわけです。

 本、読みてえな。

 堂々巡りかよ。何この前に進まない文。と思われるでしょうがまあ待ってくれ。俺ァ無駄な文書いてる時間がいちばん幸せなんだ。

 本は読みたい。俺、読書が足りてねえよな、ってのは思うわけです。
 この前書いてたときも思いました。なんかこう、書いてるうちに小説ってものが分からなくなるんですよね。そういうものなのかも知れないですけど、肉体でも急に腕とか指とかの運びかたがわかんないような気がして「あれ……?」ってなることあるじゃないですか。あれみたいなかんじです。
 土台がしっかりしてないのかも知れない。僕結構偏った読書をしてきた自覚があるので、そんな気もするわけです。まあ、結局は己との戦いでしょ、と思わなくもないけれど、なんにせよ広く読んで悪いことなんてないわけで。
 だから読みたい。だけど、疲れた。
 どーする?

 …………

 …………

 朗読なら疲れてても聞けるんじゃね?

 はい。というわけで、本題です。
 オーディブル「アマゾンの『聞く読書』」ってやつに手を出してみた。って話。はじまるよ。


――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――


 どう思ってますか?
 何がって、そりゃあれですよ。「聞く読書」。どういうイメージですか。
 ちょっと前、ユーチューブとか見てると結構広告でてきましたよね。テレビとかでもCMありましたっけ?

 あなたがたに警告する。応答するな。応答するな。

 とか、

 ばけもんや。そやけど、美しいばけもんやで。

 とか、耳を引く文が流れてきて心地いい広告でしたね(広告を聞いた記憶だけで書いてるので間違いがあったらすみません)。

 わたし、本がほしい……。本が読みたい……。

 みたいな、かわいい声で嘆いてるやつもありました。今の僕みたいで、他人事とは思えないですよね(あの子はたぶんこんなぬるい理由で本に飢えてるんじゃないぞ)(たぶん本が無い異世界とかに転生してるんだぞ)。
 小説以外は聞き流しがちなので覚えてないですけど、なんか他にも、啓発本みたいなのとかもあった、たしか。
 それ見てのイメージ、どうでしたか?

 ……まあなんていうか、たぶん。たぶんね。そんなにポイント高くないと思うんですよ。思ってるでしょ、みなさん。

 朗読て。文字で読めばええがな。

 って。
 僕もね、正直これは否定しません。紙の本でも電子書籍でもいいですけど、生活の中で無理なくそれが読めてて、その読書量に満足できてて、かつ朗読なんて興味ないよってかんじなら…………手、出さなくていいと思う。
 一応これ、オーディブルまあまあ楽しめてるよっていう趣旨の文ではあるんですけども、だからこそ楽しんでる話する前に言っておきたいんですよ。

 別に、マストなもんじゃないよ。

 あと基本、オーディブル周りは何もかもが高ぇ。

 いやマジでね、このあと話すと思うんですけど、ほんと、流行らす気あるんかっていう価格設定してるんでね。これからオーディオブック系統?って言い方でいいのかな?この界隈、発展してほしいんですけど、その過程でもう何段階か手頃になってほしいですね。
 いくらなんでも活字に対して高すぎる……。
 なので、この先僕が楽しそうにオーディブル体験について記すのを、みなさんは「(でも月額会員費だけで1500円なんだよなあ……)」って思いながら読んでください。それが死んでいった僕のお金への、一番の
供養になるので……(?)。

 
 というわけでね、なんでこんな下げから始めてんだって話なんですけども。オーディブル、始めました。
 アプリを入れて月額(1500円)制の会員になったのが11月の頭の方なので、今ひと月と半分ちょいくらいですね。ちなみに最初のひと月は無料体験期間です。
 会員になると何があるの?ってのがですね、調べてもらっても微妙に分かりづらいと思うんですよ。僕もよく分からないで入ったので。
 ので最初に、間違ってても責任は持てないんですけど、一応たぶんこれが会員特典、ってことを書いておきます。
 

・月1で1枚、好きな朗読が買えるコインが貰える。

 これがメインの特典だと思います。要するに1500円で月1冊の朗読が聞けますよ、っていう定期購読的なものなんですよね。月1冊1500円をどう考えるか。普段の本へのお金の使い方によってまあまあ割れるラインかなって気もしますが、アリなら月額会員検討してもいいかもです。毎月1500ってのをどう考えるか、ってもありますけども。
 ちなみに無料体験期間でも1枚もらえます。つまりそこでやめれば実質タダで1冊なんだぜ。
 これ、再生時間(≒文量)とか、値段とか、そういうのに関わらずなんでも1冊1枚のコインなので、プロはたぶん高いやつとか長いやつとかに使うんだと思います。僕は読みたいやつに使おうってことで、そこの損得はあんまり勘定してないんですけども(その辺の個人的な使い方は後述しますね)。
 ちなみにちなみに、元の本が分冊だと朗読も分冊になります。なると思います。いや、全部がそうって確認したわけじゃないけど、そうなってる作品があるのは確か。


・オーディブルの朗読を割引で買える。
 
 副特典ですね。月1冊じゃ足りないぞうって人は買わなきゃいけないわけなんですけど、オーディブル版ってマジでたっけえんですよ。参考に1冊、画像を貼っておきましょうか。

画像1

 な?
 いや、高え高えうるせーな……と思ってたと思うんですけど、さすがに高えでしょ? ちなみにハードカバー電子書籍文庫オーディブル版があるやつ、って理由でのチョイスです。ハードカバーの値段はものによるので、たとえばこれくらいの差で済んでるのもありますけども。

画像2

 うん、まあ高いのはわかった。そんでもこっから引かれるんやろ?そんで結局なんぼになるん?って思いました?
 すまねえ。これ、引いたあとの値段なんだ。

画像3

画像4

 30パー引き。一律なのかな、これ。僕が見た範囲では全部そうでしたけど、どっかに書いてあるんかねこれね。30パーって結構ですからね。それ引いてこの値段って、やっぱ価格設定飛んでるってこの界隈……。
 もちろん朗読者を始め朗読本の制作に携わった方々にはちゃんとした報酬を得てほしいと思ってます。思ってるけどそれはそれとして、消費者としてはまあ高いでしょこれは、ってことです。
 そしてだから、月イチ1冊コインはデカいんですよ。1500円で1冊をどう思うかは割れる、と言いましたけど、それはそれとして、この値段の世界で1冊と思うと間違いなくお得っていう、脳を上に下に揺するバグが起きてるわけです。おもしろいね。


・無料のポッドキャストがある。

 あるらしい。僕は聞いてないのでどんなもんか知らんのですけど、なんかその辺のコーナーで東野幸治の顔を見かけたな。笑ってた。
 なんかバラエティーっぽいのから英語だの癒やしだの、色々あるみたいです。詳しくは詳しく書いてる人を探してほしい(最悪のレビューやめろ)。
 あ、なんか巨匠の文学詰め合わせ、みたいなやつもあったな。それは何個か入れました。聞いてないけども(今思い出した)。
 こういうの。

画像5

 これは会員ならタダです。お得っちゃお得?


・月1で、オーディブル側が指定した1冊が無料で聞ける。

 僕にはマジで要らん特典。これ抜きで1000円にしてくんねえか。
 なんかビジネス書とか啓発本みたいなのが選ばれるみたいですね。先月は筋トレは全てを解決するみたいなあのちょっと流行ってる人の本でした。今月は仕事2.0、みたいなやつです。
 こういうのが好きな人ならいいかもですね。僕は……まあ、うん。ていうか小説でも、今月中に読め、って自分で選んだわけじゃないの渡されても読まないかもしれないくらいだし……。要らん……。


・バッジ集めコーナーがある。

 特典とかじゃないんですけど、なんか条件クリアすると「おめでとう!」って言ってバッジをくれます。

画像6

 こういうのでいいんだよ。なんやかんや一番嬉しいからな、こういうのが。こういうことされるといざ退会しようってときに後ろ髪引かれちゃうのよ。

 なんか全然ポジティブにならない紹介をしてきましたけど、まあそれでも来月も1500円払おうと思ってる奴が書いてる文ですからねこれ。どう受け取ってもらうつもりで書いてるんだって話ですよね。どう受け取ってるんですかみなさん(聞くな)。

 紹介で怒って、財布で泣いて。ということでね。
 続いて僕がオーディブルをどう使ってどんなのを聞いてるかとか、その使用感とか、そういう話をしようと思います。
 いちばん大事な話なのにここまででずいぶん篩にかけちまった……。ちょっと一旦区切りの線入れておきますね。


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 はい。私は寝ながら聞いてます。

 唐突すぎるな。えっとですね、休憩時間があるんですよ、労働に。毎日大体1時間半くらいのが、分割で。世の休憩時間とだいたい概念を同じくしているので、食事の時間とかも含むんですけども。
 でね、ある日思ったんです。

 ねみぃ。

 食うより寝ててぇ。

 何を健康に悪そうなことを、って感じなんですけど、実際このタイミングで食わなくてもお腹のすき具合によっては死にゃあせんな、ってかんじの時間なんですよね。そんなんより寝てたい。ぐーすかとまでは行かなくても、目をつむって横になって音楽とか聞いてればそれだけで結構体力って回復するんですよね。
 それで、ここ最近は休憩時間にゴロゴロすることが多くなって(そういうスペースがあるんですよ)(流石にところ構わず椅子とか並べて寝てるわけではないです)、「メリュー」は聴きながら寝れる、とか訳わからんことを言ってたりしてたんですけど(寝れます)、ここにさらに思いついたわけです。

 この時間に朗読とか聞けたら強くね?

 なんか順番がゴチャゴチャしちゃいましたが、一番最初の思いつきがこれだったんですよね。
 つまり、最近本読めてねえなあ最近休憩時間寝てばっかだなあ→「聞く読書」ってやつなら寝ながら聞けるんじゃね!? ってことです。
 それで早速始めてみて、なんやかんや1ヶ月半なわけです。
 
 というわけで、実際寝れるの?ってとこなんですけど、まあなんというか、音楽聴きながら半分寝てるみたいになるのとは違って、やっぱり話があるんで聞いてはしまいますね。逆に寝ちゃったこともあるんですけど、話わかんなくなって20分ぶんくらい遡りました。
 でも目は閉じてゴロンとしてられるので、体力的にはちょっと休まります。
 これがたとえばスマホで電子書籍読む、とかだとできないところで、これはもう個人のあれなんですけど、僕のなかでは文字を読むのは体力消費行動なんですよね。少なくとも休憩時間にそれやったらダルいなあってなるし、疲れてると頭にも入ってきづらいてす。そもそも読書が得意じゃないんだろうな……。
 パワプロのサクセスで例えるなら、音楽とか聞いてガッツリ寝るのが「休む」で、朗読聞きながら寝るのが「ストレッチ」ってかんじです。読書は「ノック」。(回復、微回復、疲労、ってことです)

 休憩時間以外だと、外歩くときとか、バス(バスで文字読むと酔う人間)に乗るときとか。あとは長時間の電車で本読むのに疲れちゃった、あるいはそもそも疲れてて読む気がせん、ってときとかに使ってます。
 逆に家では使わないですね。これは意識的に縛ってます。家で朗読聞くくらいなら積んでる本を開け、という自分への縛りですね。じゃあ家では本読んでるんだな?と聞かれると、ユーチューブorシャドバなわけですけど……(マジでダメじゃん)。

「聞く読書」なんていうから、読書の代替品というか、本来読書してる時間に朗読が入ってくるのかってイメージを持たれてるかもしれないんですけど、僕の場合はそうではないっぽいです。
 僕の時間シェアを奪い合ってる競合相手が違うというか、オーディブルくんはやっぱり耳カツなので、主に音楽とかがシェアを総取りしてた部門に参入してます。
 一長一短なんですけど、朗読は聞けばお話が進むので、ちょっとずつですけど休憩時間程度でもちゃんと何かが進んでるような、軽い充足感があります。つまり回復量低いぶん精神にいい
 あと電車で聞くと長い時間でも(聞いてるものが面白い前提ですけど)退屈しないですね。

 んー。こんなかんじですかね、使用感は。なんか言い忘れてるような気もするけど、思い出せぬ……。
 まあ一旦以上ということで。


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 続いて何聞いてるの?って話もしておきます。ここからは本当の日記です。軽い読書感想文も兼ねます。

 オーディブルを始めたときに、一応聞くジャンルを軽く決めました。「最近の日本の、ちょっと文学寄りっぽい小説」です。
 理由は単純で、正直現時点であんまり読んでないし、じゃあ紙のそれを買って読むかと言われたらあんまりモチベもない気がするからですね。
 もっと読んだほうがいいと思ったんですよ。僕が書きたいのってたぶんそっち寄りなので。
 でも紙の本だと積んでる本と競合する。それを乗り越えて読む日を待ってたらいつまで経っても…………ってことなのです。

 文学寄りっていう言い方もあれですよね。
 僕は純文学とか大衆文学とかってものは、カテゴリーというよりは傾向というか、だいたいこっち寄り、みたいな言い方をするための、線分の両端みたいなものだと認識しています。100%って現実には無いよね、的な。まあ、本当に無いのかはわかんないですけど。
 なので、まあたぶんこれは純文学寄りなんだろうな、みたいなもの、ってことですね。身も蓋もないような言い方をしたら「芥川賞とか取ってるやつ」です。読んどこう、って。たぶんそんなに嫌いじゃないだろうし、みたいな。


 それで最初は宇佐見りんさんの「推し、燃ゆ」を聞きました。ぶっちゃけこれは元々気にもなってました。あるってわかった時点でこれが1冊目だ!って即決したくらいです。たぶん話題でしたよね? 推しのアイドルがファンを殴って炎上するとこから始まる小説が芥川賞に!って、河出さんが試し読みリンク貼ってたのツイッターで見たもん(物事の判断基準ツイッター人間)。
 いやおもしろかったです。まず現代社会のもの一見俗っぽいものをガンガン使って文学をしようっていうのは僕の好みのド真ん中なんですよ。アイドル、ネット、エトセトラ。
 でもそういうのって浅くならない?って思って躊躇いがちでもあるんですけど、「推し、燃ゆ」はそんなことなかったです。しっかり文学じゃん……(もうこの辺の雑な言葉使いは許して)、って思ったし、逆にアイドルものが芥川?ウケるwって手を出すとまあまあ面食らうかもしれません。
 端々の言葉文脈以上のニュアンスをキュッとぶつけてきたりして、うわ、いいなあここ、ってなっては20秒バックボタン押してましたね。主人公がブログに書き起こした、「推し」の真幸(まさき)くんのラジオでのやり取りがあるんですけどね、まだ幼い真幸くんが芸能界デビューしたときの話がそこで出て、母親が…………いや、いいのよここ。僕はここで、これはいい小説や!って確信しました。
 主人公の描写もいいけど、アイドル上野真幸の描写もむちゃくちゃにいいんだよな……。現実感がある、っていうのは小説において必ずしもいいこととは限らないですけれど、上野真幸は現実感がかなりあるし、それが小説としてのよさにもなっていて……。
 いや、いいのよ「推し、燃ゆ」。よすぎてなんならちょっと心中穏やかではなかった。書いた直後に読んだから。興味があればぜひ読んでほしいですね。


 それで、「推し、燃ゆ」を聞き終えたときに次のコインまで半月くらいあったので、次買っちゃうか、と思って、お金を払って買った(あんなに文句言ってたのに!)のが西加奈子さんの「サラバ!」でした。
 とりあえず上巻中、下もあるらしい。
 純文寄り読むんじゃなかったの!?と思われたかもしれませぬ。いや僕西加奈子さんって名前は知ってて読んだことはなかったんですけど、結構エンタメ系統の作家さんです? これ決して悪い意味で言うんではないですけど、文学文学はしてないというか、ドラマで魅せるタイプの小説な気はしてます(まだ1時間〜2時間くらい)。
 そんで面白いです。僕長編自体あんまり読まないんですけど(理由はなかなか終わらないから)、もうグッと腰を落としてがっぷりと家族の物語をやっていこうという意志を感じさせる、エピソードに次ぐエピソード。小説内の大きな時間に浸っていくような長尺モノ特有の感覚。いいドラマとか映画とか見てるみたいな気持ちになります。
 エピソード自体も、イランで生まれてなんや、日本に戻ってきてかんや、姉がとにかく変わっててわんやと、なんかこう、常に普通以上に面白いというか。興味を惹き続けるんですよね。人間味、人情味みたいのも感じるし。
 人間が描かれている……これもまた文学……なんてことを思ったり(言葉の雑さは許して)(2度目だぞ)。
 まあでも「文学」なんて言葉を褒め言葉として押し付けても別に喜ばれはしない気もするな、とも思い、僕が文学っぽいとかぽくないとか言う基準って、もしかしてそういうとこか?なんて、自分でもよく分からなくなりつつ。文学性なんてだいたい何にでもあるんだ。…………この話はやめ! どうでもいいのよ、んなこたぁ。
 序盤も序盤(いま葬式ごっこのあたり)ですけど、現時点でだいぶ面白いし、いい小説だと思ってます。長いけど聞き進めていく所存。
 あんまり詳しくないんですけど、もう売れっ子なんですかね? 売れっ子作家の佇まいを感じる。


「サラバ!」が長かったのと、僕のオーディブル利用目的である「現代日本純文」感とはちょっと遠く感じたってことで、面白いけどさすがにこれ終わりまで次を聞かないんだと趣旨が変わるな、って思いまして。今月の頭に無料コインを供給されたので、それでもう1冊仕入れました。
 それが吉田修一さんの『パーク・ライフ』です。表題作の「パーク・ライフ」と、「flowers」という短編、かな?が収録されています。中編?わからん。
 このチョイスは、オーディブルアプリ内検索で「芥川賞」って入れて出てきたなかから探してて、吉田修一さんって確か芥川賞審査員やってる人よな? なんか面白そうな映画(「怒り」とか「悪人」とか)の原作もやってた気がする。よし、じゃあ次はこれだ。ってかんじです。
「パーク・ライフ」はね、最初ちょっと……いやだいぶか……いけすかねぇ〜ってなったんですよ。2002年に芥川賞を取った作品らしいんですけども。んー、時代なのかな。ちょっとこう、生活・文化水準高めの「一般人」の小説なんですよね。出てくるペットがリスザルで、名前がラガーフェルド(シャネルのデザイナーの名前らしい)だったときはね、なんじゃこのハイソ感!って思った。思いましたとも。我ながら余裕ねぇなあ……。こういう切り抜き方はよくないんですけどね。でもまあ、いわゆる「庶民」よりは1つ2つライン高く感じるのは確かだと思います。
 ただ、心情の描きかたが繊細で、なんだろうな、長く続いた愛情がゆっくりと疲弊するさまとか、人間関係の、曖昧で、まだあまり言葉が揃ってないような部分とかを抽出しているようなかんじがあって。
 どっかで見たあらすじに「切ないほどリアルに」描いてるが云々、みたいなことが書いてあったと思うんですけど、妥当かどうかはともかく、「切ない」って言葉を入れたくなるのは分かるなあって気持ちなんですよね。切ない……切ないか。人間関係って、切ない一面を持ってるのかもしれない。そしてそれはたぶん、関係が終わってしまって、って時じゃなくて、もっとこう、夕暮れ時のような、ゆるい傾斜を生きてるとき、そのときの心で…………。
 読んでない人にわかるように書けよ! 浸るな!感想文で!
 いや浸りたくなるのよ、「パーク・ライフ」って小説はよ……。
 いい小説だと思ってます。人を選びそうだし、僕個人として鼻につくとこも結構あるんですけども、結局嫌いにはなれなかった。僕これちょっと長時間移動があった日に聞いたのもあって2日で聞き終えたんですけど、思い返したときの寂しさみたいなものは当社比で一番でかいかもしれない。またいつか聞き直そうかなあ……。

 ところでオーディブルのアプリには残り何時間、みたいな表記があるんですけど、最初後ろに入ってる「flowers」の時間も「パーク・ライフ」のものだと思っていて、あと3時間くらいあるんだ〜と思ってたら急に終わったので面食らいました。
 え、終わり?ってなった衝撃はかなりのもので、「だから何」みたいなものもそんなにハッキリとは書かれないので、ん……??って一瞬なったんてすけど、よくよく考えたら、たしかに終わってもいいのか、ってなって。それぞれ描かれてた人間関係が、それぞれの作中時間をちゃんと通り終えてて。いい、な……終わっても……って後から納得する、不思議な体験でしたね。
 そしてこうやって振り返ると、母親の話を入れてるのが秀逸で……関節で言う軟骨みたいな……あれ、軟骨って関節にあるのか? わからん。まあとにかく、上手いなあ……ってことです。
「パーク・ライフ」、もしお読みになったらまたここの文読んで、こいつマジ適当なこと書いてやがるな……って思ってください。いけすかねぇよな談義で盛り上がりましょう。

 でさあ!「flowers」もいいんだよ!(テンション)
「flowers」に関しては僕あの、鼻につくとか人を選ぶとか、そういうエクスキューズ無しに好きだ!と言います。選ばないって言ってるわけじゃないんですけど、まあ、本当に好きなんですよ。
「flowers」労働の小説でね。いや、プロレタリアなんとかみたいな、社会に労働のあれを訴える的なあれではないんですけど(よく知らんで書いてるのでプロレタリア文学はそんなんじゃない!とかあったらすみません)、労働者の小説だぁ……と思っていて。
 主人公が東京で飲料の配送の仕事に就いたところから小説は始まって。飲み物の山をトラックで運ぶような。まあ肉体労働なんですよね。そこでの人間関係と、東京に出る前の田舎での関係と。田舎では墓石を運ぶ仕事をしてて、それもまた肉体労働で。
 ぼくはそこまでガチガチに肉体労働してるわけではないのですけど、まあその空気感がちょっとくらいは分かる環境にいたりするので、ああ……そう、そうなんよな……って、あの独特な空気、人間の疲弊の味に、ただただ頷いてしまってですね……。
 東京の仕事で主人公の指導役として出てきて小説的にもメインを張る「望月元旦」ってキャラクターがいるんですけど、これがまた、また、なんですよ。
 職場の人間関係って、嫌なとこも沢山見るし、マジで嫌いになったような気持ちになることもあるんですけど、なんか顔見て話してると何に怒ってたのかってくらいその気持ちがリアルさを失うような、なんかこう、ある意味危うい線上にあったりするじゃないですか。ない? ……まあ、あるんですよね、僕の場合。
 元旦はまさにそれで、んんんん、ってかんじでした。
 小説としても、カタルシスの瞬間がすごくて。スッキリ地獄とが心を、こう……。グチャグチャに、ね……。
 アマゾンのレビューで「不愉快でした」って書いてる人がいて、まあ小説が不愉快なのをマイナスと見るかは別として、不愉快だったこと自体はそんなに不思議じゃないなって思いましたけども。それでも、というよりは、だからこそ。いい小説だったと、僕は思います。マジで好きです。
「パーク・ライフ」「flowers」を1冊にしてるってのもよくて、いやこんなに違う世界でそれぞれ書けるんかい!っていうとこを見せに来てるかんじが、なかなか……やるじゃない……ってなるんですよね。
 あ、ただ、これは僕個人の感じかたの話ではあるんですけど、朗読がちょっと、感情込めすぎてて、逆にちょっとムラができちゃってるようなかんじがしました。
 もしかしたらオーディブルで検討するって人がいるかもしれないので、ご参考までに。まあサンプルとかあるので聞いてみてください。


――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――☆――


 はい。というわけで、「聞く読書」に手を出しちゃった話、でした。なんかブーブー文句言いながらも楽しんでるさまをご確認いただければ。
 昔は読み放題だった、みたいな噂も小耳に挟んだけど脳が吹っ飛びそうなので詳しくは調べてません。これ読み放題だったら神だけどな……。
 
 思えば小学生の頃、はやみねかおる先生の夢水清志郎シリーズに始まった僕の読書ライフ、東野圭吾さん・宮部みゆきさん・伊坂幸太郎さんの鉄板コースを軽く通りつつ、西尾維新先生に触れたあたりから、コロッと舞城王太郎先生にドハマりしてですね。まあ以前にちょっと触れた高橋源一郎先生とかもですね、ちまちま読んだりしましたけども、それ以外の隙間は、ちょこちょこ古典とか読んでみたりとかしちゃってね。このあたりはもう大学以降の話で。
 気付いたら。どうもこう、芥川賞受賞作とか、あるいは本屋の本棚の入り口に置かれてるような本とか、そういうのを気付いたら避けてきてたような、そんな気がするんですよね。
 綿矢りささんと金原ひとみさんが芥川賞取ったときに、なんかすごく話題になってた記憶はたしかにあって、だからそのときに手を出してる世界線があっても良さそうに思うんですけど、とりあえずこの世界線はそうじゃなかった。
「これもまた」文学、「これもまた」小説……なんでもいいですけども、なんかそういう系統にばかり惹かれて、道の真ん中を行ってる(ように見えた)ものは、なんか退屈なんじゃないのベタなんじゃないの、あるいは逆に僕なんかじゃわかんねえような、お高いお文学をやってんじゃないの、みたいな先入観が…………あったのかい?どうなんだい?(雑なきんに君に逃げるな)
 まああったかはよく分からないですけどね。たぶんなかったんじゃないかな(えっ)。
 だけどひとつ言えるのは、まああんまり読んでこなかったなってことで、そして読んでみたらちゃんと面白かったわ、ってことです。読んだっていうか聞いたんですけど。でも面白かったから、今んとこ聞き終えた小説は全部紙の本も買ってるもんな。読んだと言っても過言じゃない(過言じゃが)。(『推し、燃ゆ』『パーク・ライフ』、ついでに宇佐見りんさんの『かか』も買った)(結局買っちゃうのよね)(あんなに金額に文句言っておいてこれ)
 
 これからも、とりあえずしばらくは「サラバ!」で間を繋ぎつつ、コインを供給されるたびに純文っぽい現代日本小説に手を出してみる生活を続けようと思います。
 いやね、ほんと文句ばっか言ってた前半からしたら信じられないかも知れないですけど、なんなら僕朗読聞くためにノイズキャンセリングイヤホン買いましたからね。ワイヤレスの。ブラックフライデーセールで。楽しんでるんですよ、たぶん結構。
 
(ノイズキャンセリングイヤホンはいいぞ。朗読は特に、音楽と違って、間の部分はすべて無音だから、バスとか電車とかだと周りの音が気になってですね。ノイズキャンセリングってこういうとき用か?と思いついて、使ったことなかったんですけど、ものは試しで買ったんです。
 まったく聞こえなくなるか?と言ったらまあそんなことはなかったんですけど、気にならないくらいにはなってくれてですね。そうすると音量もあんまり上げなくていいんだな、と気づくわけです。そのとき、これがノイズキャンセリングのよさの核なんだ……と理解しました。
 雑音に対して音量で戦わなくていいっていうのは朗読に限らない強さではないかと思います。耳にやさしい。無論朗読にも合う。最強。いいぞ)


 というわけで、もう終わりになりますが、ひとつだけガチの要望を書いておきますか。

 本、増やしてくれ。

 大変だと思うけどさ、マジ頼むよ。たぶん現代日本純文学系、なんて売れ線ではないんだろうけど……たのむ。小説家の名前入れても検索結果ゼロがまあまああるのがね、やっぱまだちょっとつらいな、って。
 流行ってほしい。そして発展していってほしい。ワシゃそれをムシャムシャ消費したいんじゃよ。

 
 あとそうだ、本文に挟む隙間がなかったから最後の最後に書くけど、めっちゃいい使いかた思いついたんですよ。使いかたというか、もしかしたら朗読のほうがいいかもしれん、と思うもの。
 谷崎潤一郎「春琴抄」。朗読なら、入りやすいんじゃねえかなあ、って。サンプルに青空文庫貼っておきます(ここ)けども、なんか段落に親殺されたんかってくらい段落ないんですよね。
 読んだのが大昔だからうろ覚えだけど、いい小説なんですよ。ただ本当に読みづらかった記憶もあるのでね。朗読、いいんじゃないかなって。

 で、そこから思ったんですけど、古典で読みづらいと思ったら、朗読はアリですよね。
 僕のなかで読みづらい印象が強いのは…………泉鏡花、かな。美文と言われてるし、実際そうだとも思うんですけども。私ゃバリバリ現代人だから、結構苦しみながら「草迷宮」を読んだ記憶があります。
 でも時々かっこいい表現が美文に乗って僕を刺してきて、ああ、これが……ってなったし、話も結構よかった、ような(うろ覚え)。あれも朗読ならわかりやすくていいんじゃないかなあ。話分かってからなら文で読んでもそんな苦しくないかもしれないし。美しい文っていうのは耳にこそ心地よいものですからね。
 って思って調べてみたら「草迷宮」なかったわオーディブル(「高野聖」はあった)。
 増やしてくれ〜たのむ〜。というのが今回のオチ。


 というわけで。なんか最後に付け足しすぎて、逆に唐突になっちゃいましたが。終わろうと思います。
 おつかれさまでした。玉手箱つづらでした。バイバイ。


 聞いた小説たち。


 ノイズキャンセリングイヤホンはいいぞ。


 
 そういや高橋源一郎先生、自分で朗読してたな……。



 メリューは寝れる。



 最後に僕の小説の倉庫も貼っておきます。読んでくれたら跳ねて喜びます。