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【793回】堀川惠子「教誨師」

再読。ページを捲る手が止まらない、という本ではない。教誨は「受刑者に対して行う育成を目的とする教育活動」である。それを行う教誨師の相手は、死刑囚だ。社会復帰を望めない、死ぬために生かされている者たちに何ができるのか。ページが重い。

死刑囚の心を救う。
ところが、そこに奢りを感じた教誨師は、死刑囚の声をただ聴く、そして死刑囚の横にただ在るようになる。
自分自身の弱みもさらして。

この世に存在している一人の人として、誰かに関わってもらえた経験。それを初めて持つ死刑囚もいる。

救うための人ではなく、死出の旅路にそばにいてくれる、自身を肯定してくれる人。
それが教誨師なのだろう。



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