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【794回】上村真也「愛をばらまけ 大阪・西成 けったいな牧師とその信徒たち」

再読なのだが…初めて読むかのようにスルスル読んでしまう。


大阪・西成。釜ヶ崎のそばにある信徒20名程度の小さな教会の誕生と日常のドキュメント。

ホームレス。酒に溺れる者。お金を持って消える者。犯罪経験者など。社会からはじかれてしまった人たちが信徒となり、牧師西田好子のもとに集まる。

まったくほのぼのとしたものとは対極にある。

ところが、真剣に人に向き合い続ける世界は、嫉妬さえ感じる。


「私かて過ち、失敗、後悔、山ほどある。でも振り返ってばっかりやったら、ペチャンコになってまう。だから毎日、ド真剣に生きてるんや」

p168


西田牧師は、まっすぐ。思いついたら言葉が出る。行動する。おかげで色々な人と対決してしまう。誤解をされてしまう。それでも、まっすぐ。くじけても、まっすぐ。


信徒の過去も責めない。自己責任なんて言わない。迷惑をかける・かけられるのが当然だから。


「確かにどうしようもなく悪い人間もいてる。でも好きでそうなったんやない。学歴も安定した職もない、夢も希望も失った人間が、目の前にいてるんや」

p40


そう。辛い過去は、苦しい現実は、好きでそうなったわけではない。

西田牧師は、「受け止めて一緒に立ち止まる」というより、「うん、ようわかった。顔を上げ、変わろうや」と、隣にいて背中を押したり腕を引っ張ったりするスタンスのように見える。


本のカバーを取って見よ。

その表紙に写る、西田牧師と信徒の表情を。


苦境になっても、堂々と胸を張って生きてやる。

ありがとう、西田牧師とメダデ教会のみなさん。


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