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「黒牢城」

米澤穂信さんの第166回直木賞受賞作品。


読み終えて、歴史小説の登場人物のように渋い声色で、「お見事」と呟きたくなってしまった。

本能寺の変より四年前、天正六年の冬。織田信長に叛旗を翻して有岡城に立て籠った荒木村重は、城内で起きる難事件に翻弄される。動揺する人心を落ち着かせるため、村重は、土牢の囚人にして織田方の智将・黒田官兵衛に謎を解くよう求めた。事件の裏には何が潜むのか。戦と推理の果てに村重は、官兵衛は何を企む。デビュー20周年の集大成。『満願』『王とサーカス』の著者が辿り着いた、ミステリの精髄と歴史小説の王道。

KADOKAWA文芸WEBマガジン 「黒牢城」特設サイトより


米澤さんの作品は、これまでもコツコツ読んできたが、デビュー作「氷菓」や、『わたし、気になります』の秀逸な台詞の「〈古典部〉シリーズ」(「氷菓」もシリーズの1作品)、「本と鍵の季節」といった、青春ミステリと呼ばれるジャンルから、本格ミステリにカテゴライズされる「満願」、「儚い羊たちの祝宴」、「王とサーカス」など、いずれも読みごたえのある作品ばかりで、新作が出るたびに楽しみにしている。

けれど、米澤さんの作品は、なぜか自分の中で機が熟してから読みたいと思ってしまうので、この
作品も直木賞受賞から2年以上経ってから読むことになった。


歴史小説なのか、ミステリなのか、はたまた社会派なのか、哲学的なのか。


作品を読み進めていくうちに、『今、なんのジャンルの作品を読んでるのだろうか?』と問いたい気持ちになったが、途中からページをめくる手が止まらなくなってしまった。

個人的には、茶道を習っていたことがあるので、茶道具や庵、所作など、茶の湯の描写が大事なシーンに盛り込まれていることが嬉しかった。

村重が、地下牢に幽閉している官兵衛を訪ねて、城内で起きた事件の謎を解くよう求める場面は、かの有名な「羊たちの沈黙」のハンニバル・レクター博士に示唆を受けるために獄中に赴く、クラリスを思い出してしまった。(アンソニー・ホプキンス氏が好きです。)


米澤穂信さんは、これからどんな作品を世に出してくれるのだろう。
想像がつかないことが、こんなにワクワクするなんて思いもしなかった。

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