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失ったものを数えてから、今あるものを数えられる

病気になると、失ったものばかりに意識が向いて、悲観的になる。
15歳の不整脈発覚、19歳のペースメーカー挿入、を経験した私もそうだった。
健康な身体、綺麗な見た目、鎖骨部分の露出、激しい運動、部活活動、鬼ごっこを、岩盤浴を失い、定期的な通院、不整脈薬の内服、電化製品や携帯の使用制限、身の回りにある磁気に気をつけた生活を心がけ、「障害者一級」の区分、となった。

ダイビングやスカイダイビングに興味をもっても、体験することは不可能だった。

失ったもの、出来なくなったもの、受け入れられず何度も泣いた。これが出来たら、人生はどれほど楽しいのだろう、と妄想し、幻滅し、失望した。

31歳になった今思うことは、失ったものや出来ないことに意識をむけて悲観したってどうしようもにない。ダイビングに憧れた私は、スキンダイビングに挑戦した。ペースメーカーは水深20mまでならOKという資料を見つけ、20mまでスキンダイビングで行ってみよう!と、出来ることを楽しもう!な気持ちで始めたスキンダイビングは物凄く楽しかった。ダイバーがいる水深10mまで行って一緒のものを見る、下で潜っているダイバーの泡で遊ぶ、なども楽しめる。

障害者1級という区分は、JALやANA・新幹線には障害者割引があり、フェリーが半額になり、高速のETCも半額になる。これを利用して、私は比較的安く旅に出ることが出来た。
水族館や美術館、ミュージアムなどの公共施設も入場料無料となることが多い。入場料の値段も考えずに気軽に行ける。
1級は付き添いも1名、障害者手帳を持つ人と同等の割引を受けることが出来るため、家族や友人とも共に楽しめる。
市町村によっては、通院費の上限があったり、ガソリン費の補助、水道料金の割引などもあったりする。

初めは障害者手帳に対して「そんなもの要らない!」と否定的だった私は、これのおかげで比較的安く、遊びに行ったり、生活できたり、人生楽しめている。「なんでそんなにいろいろなところへ旅に行けるの?」と聞かれることもあるが、旅の大きな出費である交通費を抑えられているのは、障害者手帳による大きな節約がある。
ペースメーカーを挿入して得たものとして、物質的な面は、この障害者手帳1級の区分が一番大きい。

失ったものに意識を向けたって何も変わらない。今あるもので、人生をどう楽しめるか、に意識を向ける。私には手も足もある。耳が聞こえる。自力で歩ける。海に入れる。海外に行ける。味覚や嗅覚があり、美味しいものを堪能できる。家族がいる。友人がいる。内臓は健康。
楽しむ方法は無限大にある。そして、失ったものと引き換えに、人生をより楽しめる助けとなるものを得られているかもしれない。

でも、失ったものを数えてから、今あるものを数えられるようになる、とも感じる。失ったものを十分に悲観してから、今あるものに感謝できるようになる。だから失ったものに意識を向ける時間があって良い。
予期せず失ったもの、失わざるを得なかったもの、握りしめたくても失ったもの。失ったから、今あるものが見える。手放したから得られるものがある。人生は手放しによって、変化していくもの。


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