マガジンのカバー画像

クルド文学

4
運営しているクリエイター

記事一覧

「私を離さないで」

「私を離さないで」

空が谷間に寝そべっている
どうか
秋の始まり シルクの紐を腐敗させて
庭にすずめのような鳴き声を響かせて
私はもうどこへも開かない扉
人は誰かのために死んでいる
しかし誰も誰かの代わりに死にはしない

夜明け前 虚な地平線が歩いている
私は見ている 子供たちの足を 馬たちの赤い手綱を
街に響く甲高いこだまが崖の麓で踊っている
薄暗い部屋で おさげを垂らした乙女のうめき
ひび割れた鏡から暴風が吹き込

もっとみる
「もしもあなたが知りたいなら」

「もしもあなたが知りたいなら」

もし痛みと苦しみと悲しみを知りたいならば、私の国で一夜過ごしてください。

もし死を知りたいならば、渡り鳥の翼を見てください。その翼から焼ける臭いのする鳥たちを。

もし愛を知りたいならば、心の東裏部分に触れてみてください。すべなく星は笑顔で輝いています。

もし私の国を知りたいならば、炎と太陽の扉を開けてください。虹色の鳩※があなたに向かって飛んでいくでしょう。

※平和と自由の象徴として

-

もっとみる
「風の船」

「風の船」

悲しみの祖国から10月に向かって 私の全てが羽ばたいていった
あなたは訪れていた 傷ついたヤマウズラ*の群れの中から
あなたの目の中に 悲しみの夜風の灰
私の胸に 子供の頃のにきびの匂い それは誰も癒すことのできなかったもの
ある人が突然立ち上がり 眼鏡を壊し 顔をこすった
通りの裏に隠された地平線は 無限に広がる平野から呼び 叫んだ
そして その街を異言語で紡ぎ 私の肋骨を突き刺そうとした

もっとみる
「川はそこで流れている」

「川はそこで流れている」

人生はかぎ爪のような雨で穿たれる夜
その人生のどこに手を伸ばせば
薔薇に指を触れられるのか

新しいものは何もないと告げている
あなたがどれほど好奇心をもってその本のページを繰りゆこうとも

そのドアは背後にあり 監視人が構えている
人生の支配者は 風、嵐、暴風
嘘、裏切り、妬み
あなたは一切を別の場所で求めなさい

疑問で頭を埋め尽くされることがどれほど良いことか
窯で焼かれるパンのように

もっとみる