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ああ愛おしきかな


◎夫婦二人暮らしの日常を書いています。



 昨年入籍したわたしたち。

夫の職場の上司から、お祝いとしてお食事券をいただいていた。お店は結婚式も行われるような格式高いところで、普段のわたしたちならなかなか手が出せないような場所だった。こういう機会がないと行かないかもなぁ〜と有り難く思った。

夫といつ食べに行く?と何度も話が出たもののなあなあになり、冬がきて、春になり、夏が過ぎ、なんとまた秋になってしまった。


実はわたしはかなりの緊張しいで、体や気持ちのコンディションを上手く整えないと、コース料理を食べ切れる自信がない。
食べ進めているかどうか確認されているような気配が自分の動作までも見られているようで苦手だし、静かな雰囲気もわたしの緊張を増長させてくる。
ドッドッドッドッドッ

美味しいものはそりゃあ食べたいに決まっている。コース料理なんて緊張するな、しなくていいんだと思うのに、思えば思うほど、わたしは自分の緊張を色濃くしてしまう。



そんなこんな思案している内に季節が移り変わってしまった訳だが、お食事券には使用期限があった。使わないわけにはいかない。


いざ、覚悟を決めるとき!!お店の予約をした。




 お店へ行く当日。いただいたお食事券を財布に入れようとしたが、入らない。いや、入れようと思えば入るのだろうけれど、厚紙のようなお食事券は折り目をつけて良いようなものには思えない。
わたしの財布は二つ折り財布なので、どうしたって折り目が付いてしまう。ちなみにお財布は夫がプレゼントしてくれたA.P.Cのもので、わたしのお気に入りだ。



わたしが右往左往しすぎるのか、財布を上下逆さまに動かし過ぎているのか、わたしの二つ折り財布は小銭入れの1円玉が財布とファスナーの隙間にぴったりと入りこんでしまうという特徴を持っている。
絶妙な間に挟まった1円玉を取り除くのに、ぐぬぬぬぬと力ずくで取ろうとするもうまくいかず、ファスナーを最後まで開けたら床に1円玉が落っこちてしまったこともある。一見使いづらいようなお財布に思えるが、不器用さが却って愛すべき点のひとつになっている。


わたしは小さめのバックに財布と、はだかのままのお食事券を詰め込んだ。


お店に到着し、受付スタッフの方のうしろに付いて階段を上っていくと、クラシック音楽が流れる静かな空間へ案内された。ウッ、緊張する。
わたしはコース料理の2品目くらいまでかなり緊張していて、ちょびちょびとおちょぼ口で食べ進めた。あ〜食べるのかなり遅いやつって思われてるかも!配膳のペース乱してごめんなさい!そう思うと内心さらに焦って緊張してしまったが、何度も落ち着け、大丈夫、と言い聞かせた。
頼んだスパークリングワインが美味しかったのと、お客さんが続々と来店し始めわたしの存在を目眩ましできた(?)安心感と、段々と空間の雰囲気にも馴れてきたことで、メインのお肉料理もデザートも、味がしっかりわかるほど堪能できた。


あ〜美味しかった。


途中、お肉料理で使うナイフを上下逆さまにしていたために肉が切れず、力ずくでぐににににっと切ろうとして夫に「ナイフ反対になってる」と囁かれたり、お会計をしたくて勢いよく立ち上がったら、「お会計はお席で行いますので」とスタッフの方に言われ、あ、そうですよね〜と恥ずかしくなった等のちっちゃ恥ずかしエピソードはあったものの、とても満たされた時間を過ごすことができた。



帰り際に夫との2ショット写真を撮ってくださったのも嬉しかった。





家に着き、美味しかったね〜と喋りながら写真を見返した。計算され、きれいにお皿にのせられた料理。メインのお肉料理を見る夫。スパークリングワインを飲むわたし。行けてよかった〜と思いながら、わたしの格好が気になった。



ワンピースもヘアアレンジも、数日前から考えて悩んで決めたものだったけれど、後から見るとワンピース地味だったかもしれない、ヘアアレンジ下手くそだな、後頭部もぺったんこになってる!と、あと一歩のところで残念な感じがしてしまったのだ。



わたしって、あと少しのところで惜しいんだよなぁ。様々なところで通じてくる話のようで、わたしはほっほうと生えていない顎ヒゲを触りたくなった。


残念って言うと良くない言い方に聞こえるかもしれないけれど、わたしはそんな所もわたしらしいなぁ、残念なところもあるから愛らしいんじゃん……なんて受け入れてしまっている。



完璧なものに憧れはある。
有名な方の秀でた美貌や優れた才能、高性能な家電、使い勝手の良い調理器具。
人でも物でも、褒められたり見習いたいと思われたりするような面を持っているのはとても格好良くて、魅力的で素敵だと思う。わたしも完璧に近づけたら嬉しいし、キリッとカッコつけたい願望はあるけれど、使いにくかったり、フリーズしてしまったり、ちょっとポンコツな面をもっているものもとても好ましく思っているし、このまま好きでい続けたいとも思っている。







もしサポートいただけたら、部屋の中でものすごく喜びます。やったーって声に出します。電車賃かおやつ代にさせていただきます。