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■胸のざわざわをほどくのは―『今日は誰にも愛されたかった』

気持ちがざわざわとして、妙に落ち着かない日があります。

理由はよくわからないし、その様子をうまくことばに表すこともできない。だからといって、時間とエネルギーを使って精一杯落ち込んでみる、などのアクションを必要とするほど深刻なわけではない。そんなふうに、ただひたすら、ざわざわとした手触りだけが続いている日ってありませんか。

イヤホンを耳にして、お気に入りの曲をヘビロテしてみる。コンビニに行って、ご褒美なスイーツを買ってみる。ぼんやりとInstagramのTLを眺めてみる。

いつもならこれくらいで落ち着くはず。なのに、今日に限って、このざわざわが収まらない。

友だちにLINEする? 他愛ない話をしていれば忘れちゃう? でも、そもそもそのためのパワーが湧いてこないし、このざわざわをうまく伝えることもきっとできないし、たぶんだけど、LINEが終わった瞬間、このざわざわはちょっとだけ加速してる。

そんなふうに、不意に現れた正体不明のざわざわをうまく手なずけられず、途方に暮れてしまうときってありますよね。

そんなとき、以前の私は、眠って忘れたフリをしようとしました。「明日は明日の風が吹く」。とりあえず、寝て回復しよう。そう若干の体育会系みも含みながら、寝て何とかしようとしていました。

ただ、これはあくまでも「忘れたフリ」であって。根本解決ではありません。だから、そのざわざわは体のおくに沈殿したまま。時間が経つごとに降り積もっていったのです。

そうして、長い間、解決する方法を見つけられず、ざわざわを抱えて、積もらせて、ときどき粉塵爆発させて、を繰り返していました。

でも、最近不意に。そんなざわざわを落ち着かせるのによいモノに出会ったのです。それが「詩」であり、「短歌」でした。


■『今日は誰にも愛されたかった』

■谷川俊太郎・岡野大嗣・木下龍也
■ナナロク社
■2019年12月
■1200円+tax

師弟のようなクラスメートのような3人の創作とお話の本。国民的詩人と新鋭歌人の詩と短歌による「連詩」と「感想戦」を収録。読み合いと読み違い、感情と技術、笑いとスリルが交わります。

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