3 女帝 「生命を育む愛こそ豊かさである」
前回「女教皇」から「生命の神秘」を伝授されたサトゥルヌス。
(女教皇についてはコチラ ↓)
次のカードでは、女教皇の「生命を育む知恵」を発展、実践している「女帝」ヴィーナスが治める土地にたどり着きます。
ヴィーナス「美味しい食べ物と美しいものを、愛情かけて育てているの」
その言葉通りヴィーナスに愛された生命(作物)たちは、カードの枠からもあふれんばかりに生い育っています。
愛と成長の豊かさに満ちた世界です。
前回の女教皇に続き再度女神の登場ですが、同じ女神でも、女教皇のナンバーで「2」(受動的な偶数)から、能動的な奇数「3」へと変化を遂げています。
どこか頑なな表情でまっすぐこちらを見つめていた女教皇と違い、ヴィーナスはゆったりとリラックス。
女教皇の耳にあったパールは12個(12星座の象徴)に増えたネックレスとなり、ヴィーナスの華やかさを引き立てるものになりました。
女教皇の背景にあったザクロ(出産や豊穣のシンボル)は十分に熟し、皿の上に。
ザクロの他にも、皿からあふれるように(後ろの肥沃なブドウ畑で実った)芳醇なブドウが盛られ、テーブルの上には(一面のまばゆい小麦畑から収穫された)パンも添えられています。
ザクロがあらわす「生命の誕生」とヴィーナスのお腹のふくらみもリンク。
「豊穣」をあらわすブドウを手にし、「生命を生み出す」ヴィーナスの表情は、背景の豊かな作物と同じく満ち足りているのです。
バラとマルス
ヴィーナスが身体を預けている赤いクッションとティアラには、バラの柄を描いています。
バラは金星(ヴィーナス)を表すシンボルであり、愛や生命を象徴、キリスト教の図像では聖母マリアのシンボル(花の女王バラ=天の女王マリア)でもあります。
また、G.A.ベックラー『紋章学』(1688)では、バラは「喜びと希望に満ちたすばらしい繁栄の状態をあらわす」と共に、自由や祖国のために人が流す赤い血と結びつけられている」とのこと。
ローマ人は軍神マルスを「バラ」から生まれたとし、「特別な名誉と戦いのしるし」でもあったのだとか。
ヴィーナスの象徴であるバラが、恋人マルスにも結び付けられているとはなかなか興味深いですね。
こちらは戦いのために出発しようとするマルスを必死で引き留めようとするヴィーナス、三美神とクピド。
兜を隠す間に平和の象徴である花の冠を被せようとしたり、盾を片付けよううとしたり、酒でごまかそうとしたり、サンダルの紐をほどこうとしたりとなかなか姑息 一生懸命です。
ウェイト版でも、女帝の足元に盾が描かれています。
かわいらしいハート型であるのは、先ほどのダヴィッドの絵の槍を持って戦いにいこうとしていたマルスとは違って、「愛こそが一番の守りであり武器である」と言おうとしているのでしょうか。
さて、先ほどのダヴィッドの絵画に戻ると、この後マルスはヴィーナスの魅力に屈したそうです。
(ヴィーナスや平和と結びつけられる鳩が、マルスの膝の上で仲良くつがいになっていますね。)
(マルスが象徴する)男性的な戦いや略奪よりも、(ヴィーナスが象徴する)女性的な愛情や育成、喜びや快楽、豊かさが勝利したことになります。
「女帝」のカードは、マルスと仲良く手を取り合った後のヴィーナスが住まう場所なのかもしれません。
二人の女神から、この世の神秘である「生命」を愛情をもって育むこと、豊かであることの喜びを知ったサトゥルヌス。
いつまでもこの豊かな世界にとどまってはいたいのですが(ヴィーナスは魅力的)、サトゥルヌスは農業の神として自らの新しい土地を開墾するため、先に進まなければいけません。
旅はまだまだ続きます。
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