成長スピードの差のようなもの

友人、家族関係に妊娠の報告をした。

とは言え、実際に会った人だけだったけど、10月に入って立て続けにイベント毎があり、ほぼ毎週誰かに報告をしたような感じ。家族にも伝えたので、遠方に住む夫の祖父母にも伝えるべきだよなと思い、私は義母に電話する約束をした。

が、しかし。

夫は連絡をする気配がない。私も悪いんだけれど、何度も電話してと言ってしまい、お互いヒートアップ。大ゲンカになった。もう妊娠中に喧嘩なんかするもんじゃない。頭痛くなるわ、涙止まらないわ、夫は私が妊娠しているのを忘れているのか暴言を吐くわで逆に冷静になってしまった。パートナーと一緒にいる以上、まあ、喧嘩や擦れ違いはあって当然。あるよね、あるある。

そんなこんなでこの喧嘩をきっかけに色々考えたので書き留めておきたい。

私は肉体的にも精神的にも母親になる道を着実に進んでいる。常にどこか痛いし、体調不良だし、検診に行けば元気に動く我が子をエコー越しに見ている。

しかし、夫は違う。世間一般的に父親になるのは生まれて数年たってから自覚が芽生えるとか何とか。そう言う話を読んでいたので、私は喧嘩の原因になった「休日でゆっくりしたいのに電話するとか仕事をさせるな」という夫の言い分に繋がるのだろうなと思った。

私の言い分としては、妊娠を知った義母や義父が義祖父母へ連絡をした時、その段階で知るのはどうなんだろう?という気持ちがあったからである。そりゃ、孫である夫から直接報告を貰う方が何千倍も嬉しいだろうし、逆に言えば、報告が遅れてしまったら「まだあの子たちから直接聞いてないけど忘れられているのでは?」と不安にさせるに違いない。

けれど夫は「休日」を盾に「今すぐ電話しろって言われても俺にだって準備がいる」と言い張るのである。

いや、ほんと、しらんがなの世界である。

喧嘩の最中もうぐるぐるで何度も何度も「準備って何。心の?いや、もう電話するだけでしょ、子ども出来て怒られるわけじゃないんだから。何30過ぎてうじうじしてんだよ」なんて夫の考えが理解できず、正直子ども生まれたら大丈夫なのかよ!!??っていう気持ちでいっぱいだった。

いや、休日でゲームだとか漫画読んでごろごろしたいだけでしょうが…なんて昼からビールを飲んで昼寝をしていた夫を見ていただけにイライラも最高潮。涙も止まらず、その涙を見て夫もイライラが止まらない。

いやあ、まさに、悪循環!

が、夫が少し申し訳なさそうに、少し時間を置いてから、自分自身がお子ちゃまでまだまだ父親になり今の生活から抜け出さなきゃいけない葛藤があることを客観的に考えて説明してきたのである。でも、私はそこでも彼のその言葉を受け入れられずぶっきらぼうに「わかった」とだけ言うのだった。だって、もういいや、好きにしてくれ、連絡しなくて色々言われても私は知らん!義母に怒られろ!!という気持ちになっていたから。


で、そこから数日。ようやく報告をしたらしい夫から鬼のようにLINEが入ってくる。

「電話した、すごく喜んでくれた!」「泣いてた」「心配してくれていたらしい!!」「身体に気を付けてほしいって言ってた」などなど、電話で話した内容が送られてきた。

何このテンション…。正直まだ喧嘩についてモヤモヤを引きずる私としては報告してくれたのは良かったけど、何テンションあげてんだよというような感じだった。

そして、その日の夜、夕飯を食べながら電話をした時の様子を喜々として話してくれたわけなのだけれど、そこで夫が言ったのが「やっぱりちゃんと報告して良かった」だったので、すっころびそうになった。もうなんか思わず「あの時電話してくれていたら、私も電話変わって色々話せたんだけど?」と言ったら、気まずそうな顔をして「あーうん」とだけ夫は呟いた。


その日の夜、寝る前に夫がお腹に手を当てて「喜ばれるって嬉しいもんだな」と言った。私は「そうだね」と言って目を閉じた。まだあの我儘をぶつけてきた喧嘩についてはモヤモヤは取れない。しかし、ある事実を思い出した。そう、夫と言う人間は初めて経験すること、新規開拓というものが苦手なのである。

今回の妊娠報告も人生で初めてのことだったし、なんて言えばいいのかわからなかったのだろう。彼の言う「準備」と言うのはそう言う意味で彼にとってすごく必要なことだったんだと、今は思う。(けど私はシツコイマンなので、あの喧嘩であの時電話をかけなかったのは根に持っている)

けどまあ、私は優しいので(どの口が言うか)口下手なところもあるし、あんか凄く言い出しにくかったんだろうな、と想像する。実際に家族や友達に報告する時も「え?なんでその話題から?」って言うような切り口で言うので周りも妊娠報告だと気が付かず話が流れそうになったくらいの初めてのことに弱い男、それが夫。

照れなのか、ただの表現の仕方が不器用なのかよくわからないけれど(頭は良い人なんだけど)、実際に妊娠報告をしたら思っている以上に喜んでもらえて心配をしてもらっていたことを知り「報告をすることの重要性を理解した、俺たちだけの問題ではなくて周りもちゃんと繋がっていることなんだ」と理解したらしく、私はほんの少しだけホッとした。

って言うか「今気が付いたのかよ」って少し思ったのは内緒である。

まあ、あれだ。私はもう2歩も3歩も先を歩いて母親になるべく道をずんずん進んでる。後戻りも立ち止まることもできない自動エスカレーターのような道をただひたすらにまっすぐ。

けど、夫の前にある道はきっと階段のようなものなんだろう。

なだらかで歩きやすい道だったところに急に「父親」って書かれた看板があり、その先に聳え立つ階段があった。それを登りたいけど、登ればしんどい。けど、それを登らないと父親になれない。自分で選択してその道を進まないといけないのはなかなかしんどいことだろう。

彼なりに一段一段上がってくれているのだと信じるしかない。


私のこの身体の変化、心の変化、様々な環境の変化で抱えている不安は夫は理解できないだろうし、してほしいけど無理だと思っている。その代り、夫が父親になる階段を登る苦労は私にはわからない。

そりゃあ、2段飛ばしで追いかけてほしいけど、無理だろう。だって、私と夫では親になる成長スピードが違うのだから。んー、まあ、それだけわかっていたら、何とかなる、ような気がするし、それを実感できた夫婦喧嘩だったように感じる。


私のパートナーはまだ、父親になる道に出来た階段を一段やっとの思いで登ったところなのだろうな。