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花火と家族

記憶の限り、一番昔に見た花火は地元で開催された花火大会。

我が家から見ることが出来るので、子供の頃はみんなで屋根に上って花火見物をした。

それから少し大きくなって
街にほか弁のお店が出来た時、そこでカレーを買ってほっかほかのカレーを食べながら、会場で見た。

大人になり都会へ出た私は
職場の近くで開催される花火大会の日は決まって早番にしてもらい、
仕事の後、ビールとおつまみを買ってその人の波に飲まれて、見た。

夏。仕事の後。
仲間と共にビール片手に見る尺玉。

あぁ、ニッポンの夏だなぁ
と思う。
帰りの満員電車も花火大会のひとつだった。



そして、もっと大人になり
やらなきゃないことが増えると花火からは遠ざかっていった。

ある年の8月の頭、
祖母が亡くなった。

お盆に向けての2週間。
慌ただしく過ごした。

決して若くはない両親の顔にも疲れが見えてきていた。

「疲れたでしょ?
花火でも見に行かない?」

私は両親を誘い
送り盆の花火が行われていた街へ連れ出した。

祖母が亡くなって初めてのお盆。

優しさとせつなさと寂しさと
ひと通りの儀式を終えた安堵と
家族で花火を見るという奇跡。

いろんな感情を抱きながら
空を見上げた。



魂はあんなふうに宇宙に溶けていくんだな。

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