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海外生活の心得(精神面)

 4月に入って、なかには海外で生活をはじめた人がいるかもしれません。僕は海外生活が早くも25年が経ってしまいましたが、これまでの経験から海外で生活するうえでの精神的な心得をまとめてみます。中期的にすでに住んでいらっしゃる方にもご参考になればと思います。

 海外生活をするうえで精神面で注意する必要があるのは3点。

・無意識なストレスが溜まりやすい
・無理をする
・孤独

 それぞれ説明していきましょう。


■無意識なストレスが溜まりやすい

 日本にいてもストレスを感じますが、海外ではこれが無意識のレベルでストレスが来ます。これはどういうことでしょうか。

 海外はいわずもがな文化風習が日本とはまったく異なります。例えば、マレーシアのクアラルンプールでは公共交通機関が発達していますが、これには時刻表がまったくありません。日本の感覚からすると、

え?!

って感じですが、そうなのです。

 電車はプラットフォームに何分後に到着すると表示されますが、固定の時刻表はありません。その表示でさえも、気づかないうちに到着時間が勝手に変更されているときもあります。

 バスは最近、停留所に同様の表示がされているところもありますが、これは最近の話。

 僕がマレーシアに初めて来たときは、いつバスが来るのかもわからない状態でした。30分に一度という目安はあるものの、何時何分から30分に一度なのかというのは誰も教えてくれない。

 その目安でさえも、しょっちゅう変わるしということで、イライラしっぱなしでした。これで職場に行くのはなかなかイライラもの。おまけに、満員だとせっかく来たのに乗れなかったりしました。

 日本人だと「公共交通機関には当然のことながら時刻表があってそのとおりに到着するのは当たり前」と思い込んでいますが、それが海外に来るとすべて吹っ飛びます。

 無意識の状態にまで日本人はその意識があるので、そもそも時刻表がないということにかなりのストレスを感じる人もいるでしょう。

 また、日本ではレストランに入ると自然と水がコップで運ばれてきますが、マレーシアではこれはありません。水は基本的に有料です。メニューの中にも書かれています。

 これを知らずに待っていても何も出されてくることはありませんが、これだって日本の常識が無意識化されているので、「水が出てこない」というストレスを人によってはもってしまうかもしれません。

 つまり、日本の常識がまったく通用しないということです。日本の常識と海外の常識のギャップを楽しめる人はいいのですが、そのギャップを深刻な問題と考えてしまう人も結構いる。
 
 こういった細かい常識が、当然のことながら、生活の隅々にまではびこっており、海外に来るとのそのこまごまとした常識も一気に理解していかなければなりません。最初は「まあ、いいか」とカルチャーショック的な感覚で見過ごすことができますが、ある程度の時間が経ってくると、これがいちいち鼻についてくる人もいる。

 僕は4年に一回「まあ、いいか」とはいかずにいちいち怒っていた時期がありました。これは日本の常識が骨の髄まで行き渡り、意識ではマレーシアでは異なることがわかっているものの、無意識のレベルまでにはそれが到達せずに怒りが爆発したのかと考えています。

 この無意識化された日本の常識が通用しないということをどこまで理解しようとするかが肝ですが、なかなかこれが難しかったりする。

 さらに言葉の問題とも絡んでくるので、一筋縄ではいかない。中国以外のアジアではある程度英語が通じたりしますが、それがちゃんと通じなかったりするとそこでもストレスが溜まり、鬱になってしまう人もいると聞きます。

 そうなるとそこをやはり最初の段階で少なくとも「こういうものなんだ」と理解していかないといけません。

 ただ、そこは自分自身がどう一つ一つの物事や出来事に対して寛容になって対処できるかというところにかかってきます。細かい神経質な人は特にアジアでは、鬱的状態になってしまう人も多く、気をつけたいところなのです。

■無理をしない

 日本人の駐在員をみていると、かなり無理をしている人が多いですね。日本とは気候が異なるので、無理すると肉体的な疲労も溜まります。

 日本と同じように朝から晩まで働いている日本人をこちらでも時折見かけますが、それはやめたほうが懸命です。上記の日常生活上でのストレスだって相当体にきているはずなので、職場でも日本と同じように働くと精神衛生上にもよくありません。日系企業の職場は特にストレスが多い職場であるので、海外で住むと24時間ストレスの中にいるような感じになります。

 僕は昔、日本のように働いていて虫垂炎になったことがあります。それまで健康な体だったのですが、どうも1日20時間労働というのが相当精神的にも肉体的にもきたようで、結果、病気になった。

 また、シンガポールで働いていたときも15時間労働ぐらいしていて、やはり精神的にも病んでしまい、それまで吸ったことのないタバコにまで手を出しました(今はもう吸っていません)。

 日本ではある程度慣れていて「平気だ」と思っていても、そもそも気候も異なるので精神的にも肉体的にも病気になりやすいのだと思います。

 日本の四季は服装や風景が変わることで、感情を豊かにしてくれます。春になれば、桜を見て華やかな気持ちになり、秋になれば、紅葉をみてもののあわれを感じたりする。雪をみたり寒さを感じれば、またもうすぐ春になるなあと一年の移ろいをしみじみと浸ったりできます。
 
 これって風景からいろんな移ろいを感じて、日本人はおそらくその季節季節を楽しんだりしているのでしょう。この変化ってやはり精神的にも大切な気がするんです。桜をみれば、自然とストレスも多少ながらも解消できたりする。

 ところが、マレーシアでは1年中、平均気温が27度で、2~5月ぐらいはとにかく日差しが強い。赤道下の国では服装や風景はまったく変わることはなく、クリスマスでさえも半袖短パンでいける。

 マレーシアではどこにいっても同じような緑の風景で、変化がみられない。となると、風景から感情を和らげることはできないわけです。一度溜まったストレスは、なかなか風景などからは解消できない。定期的に日本に帰って四季を感じれば別ですが、アジアでずっと暮らすとそういった四季の感情が生まれません。

 となると、極力不必要なストレスは避けていく必要があるのです。とにかくさまざまなことで無理をしないということが懸命なのです。

■孤独

 さて、3つ目ですが、これについては先にも書きました。

 家族も友人も誰もいない状態で海外に来る方も多いと思いますが、意外にここが盲点。

 まったく知り合いも誰もいないような町に一人で来たりすると、ふと週末にさみしい思いになったりします。また、家族で来たとしても結局は家族以外の人とは知り合いもいないという状態もあるでしょう。

 でも、こういう状態は少しでも早くなくしていったほうがいいのです。日本だと昔からの友人がいて、何かあれば話したりしていたものですが、海外ではそれがなかなかできなかったりする。日本とは事情がまったく異なるので、日本の友達にLINEなどで電話して話したところで、どこまで理解してくれるか。隣人とも仲良くしたいと思っても、言葉の問題で話せなかったりする。ますます孤独になっていくわけです。
 
 そうなると、地元に長くいる日本人などと親しくなっていったほうがいいのです。語学がある程度できば、地元の人とも友人を作っていくようにしましょう。これは上記のストレス解消にもつながるわけです。

 僕は今住んでいる東海岸の町には友人はまったくいない状態で数年前に来ました。会社の日本人とはある程度のつながりはもっていますが、その人たちはあまり現地には精通していない。

 となると、結局会ってもマレーシアの愚痴ばかりになったりするので、あまりお付き合いはしないようにしています。そのため、現地の人と極力仲良くしようと努めています。
 
 その方法はいたって簡単。いつもいくようなレストランやお店の店員と話したりして、交流を深めています。確かにそこには語学が必要となってきますが、語学なしで海外で生活するのは逆に至難の業ではないでしょうか。
 
 自分のストレスを和らげ、楽しく海外生活を送るのであれば、日本と同じことをやっていては駄目です。

 努力しないと結局孤独に浸っていくことになります。いったん孤独になっていくと、上記のストレスに孤独が追加され、絶望的な生活を送ることになります。それって悲しくありませんか。せっかく海外で生活しているのに。

 ということで、海外生活するうえで精神的に注意する3点をご紹介しました。一番大切なことは「郷に入っては郷に従え」。とにかく海外は日本とはまったく異なるので、そこはよくよく柔軟な考えをしたほうがいいのです。すぐに怒ったりせず、笑い飛ばすようにいましょう。そうすることで、嫌な感情も吹っ飛んでいきます。
 
 なお、他にもなにかあるような気がするので、お気づきの方はコメントいただければと思います。

 次回は海外生活するうえで物理面でに注意すべき点を考えます。

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