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絵とワードの物語 『熱闘の果てに』 


 グラスに入っているその液体が、ぱちぱちと爆ぜていた。
 縁を少し舐めると、ほのかな甘みの向こうにしつこさのない酸味がふわりと香る。
 祖母が応援の代わりに持たせてくれるのだと呟きながら机に置かれたのは、しなびた梅が浸かった琥珀色の液体。グラスの中で炭酸水と合わさったそれを差し出すその表情は、さっきまでの顔とはうってかわってやさしいもので、それを肴にぐいとグラスの中身をあおった。
 身体に染み渡る梅の味が、溜まった疲労を優しく洗い流してくれるようで、ほう、と息をつく。
 うん、たまにはこういうのも悪くない。
 全てをぶつけ合った相棒と控え室で二人、飲み干し終えたグラスをがちりと合わせて、互いの敢闘をねぎらった。


絵 はしもとあやね @enayacomic
文 ねきの@nekino_e



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