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朝井リョウ作品

はじめまして

この一文から始めさせていただきます。

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朝井リョウという名前を聞いたことがあるだろうか。『桐島、部活やめるってよ』で鮮烈なデビューをし、その後も数々の作品を世に送り出している。昨年は『正欲』が出版された。恥ずかしながら、この前初めて朝井作品を手にしたばかりである。そもそも、読書を真面目にし始めたのが最近のため、誰もが聞いたことあるような著者の作品を読んでいないことも多い。そんな私も今年になってから14冊本を読んでいる。去年は1年で35冊だったので、それに比べればハイペースで読めているので許してほしい。

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まだ朝井作品を2冊しか読めていないため、こんな傾向があるなんて語るのはおこがましいかもしれないが感じたことを綴らせていただく。私が読んだのは『もういちど生まれる』と『どうしても生きてる』という作品だ。

『もういちど生まれる』という作品は、私が初めて手にした朝井作品である。20歳前後の登場人物たちの物語。連作短編で、物語ごとに主人公は変わるが、それぞれの物語は同じ世界線に存在している。20歳ごろ特有の悩みを抱き、誰かに対して憧れや嫉妬の気持ちを持つ。その一方で憧れられているその人も悩みを抱え苦しんでいる。完璧じゃない、不完全で不器用な人で世界は溢れている。当たり前だが、憧れで盲目的になっていると忘れてしまうこと。フィクションだがリアル。構成力も言い回しも全て自分のストライクであった。この一冊を読んですぐ好きになってしまった。

期待を胸に『どうしても生きてる』を読んだ。ああ、好きだ。どうしようもなく朝井作品が好きなんだ。そう気づいてしまった本。全6編の短編集。1日で読んでしまったのだが、短編集を一気に読むと映画を1日に何本も見て感情の整理が追い付かない時と同じ感覚になるため、今度から1日1編にしよう。そんなこと考えながらノンストップで読み進めた。今作はアラフォーからアラフィフ世代の物語である。幼少期から、仕事を始めてから、子育てをしてからなど様々であるが、コツコツと小さな絶望を積み重ねている人々の話だ。そしてその人たちは共通して、問題など抱えていないかのように普通に振る舞い生活しているのである。その姿がどうしようもなく胸を痛めた。やはり注目される人は泣き叫び、嫌だと主張していることだろう。しかし、そんな悲しさを爆発させている人をなだめている、その人の方が深い傷を負っているかもしれない。世間的にメンヘラ・病んでるなんて言われている人より感情を出せない人の方が危険を内在しているのではないだろうか。

短編「そんなの痛いに決まってる」は特に衝撃だった。主人公が尊敬していた元上司のSMプレイの動画が拡散された。それを同期たちは冷ややかに笑っていた。しかし、主人公だけが共感してしまっていた。仕事で日々感情を押し殺し、ふるいにかけられた言葉しか発することができない。感情のままに声を発することが出来ない日常。それに絶望してしまった。SMプレイで痛いことが気持ちいいのではない。痛いことを痛いと言えることが気持ちいいのだ。思ったことをそのまま言っても驚かれない相手がいる空間にいたかった。ただそれだけだったのだろうと分かってしまう。なかなか辛くなる話であった。

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全てフィクションの物語である。だがそれは確かにリアルであった。どこかで今現在起こっていることだろう。この物語の登場人物は自分の母かもしれない。この物語の登場人物は自分の上司かもしれない。この物語の登場人物は行きつけのスーパーの店員かもしれない。フィクションなのに近くの話である。遠い遠い星の話ではない。半径5メートル以内の話である。

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手の届く範囲にいるあなたが

幸せでいることを願います

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